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#NoBagForMeプロジェクトに期待して

 NoBagForMeプロジェクトをご存知だろうか。
 SNSではずいぶん盛り上がっているのだけれども、まったく聞いたことがない人は「なんの袋が要らんの???」とちんぷんかんぷんかもしれない。ここでいう「Bag」は生理用品を購入するときに店員さんが入れてくれる紙袋のことで、生理用品を購入しているということが丸わかりだと恥ずかしいという女性の気持ちへの配慮でもある。しかし一方で生理は女性の身体の自然な営みなのに、購入する際に(恥ずかしいから中身が見えないよう)紙袋に入れるのはおかしいんじゃないか・・・という問題提起がなされ、生理用品ブランドのソフィが「(生理について)気兼ねなく語れる世の中であってほしい」、またそうした社会の実現を目指して、まずは紙袋で生理用品を隠す必要性を感じさせない新しいパッケージのデザインを開発することになったという。(部分引用)#NoBagForMeはその一連のプロジェクトのことで、生理用品のセレクトショップ「illuminate」を運営されているハヤカワ五味さんや、私も大好きな漫画家の瀧波ユカリさんなどがプロジェクトのメンバーをされている。

 つい先日タンポンのパッケージデザインの最終案3つが公表され、SNS等で投票が呼びかけられている。ご関心のある方は#NoBagForMeでSNSやnoteをご覧になって頂ければと思う。今回発表されたのは私が普段メインで使っているタンポンのパッケージデザインということもあり、私も3つの中から一つ選んで投票(いいね!)をしてみた。でも、あの、本当に率直なことを言ってもよければ、「わぁ~!絶対コレがいい!!」というふうに選べたかというとそうではなくて、「なんか、ちょっと思ってたんと違った」感はあった。もうすでにSNSではたくさん意見があがっているんだけれども、白や黒やグレー(銀?)などモノトーンベースの超シンプルなイメージ(MARKS&WEBみたいな・・・)を私は勝手に持っていた。なんなら無印で生理用品売ってほしいっていうような声もあがっていたけれど、私も正直なところその意見に激しく同意できた。でも、でも!だからといって今回のプロジェクトに否定的なわけでは決してなくて、従来のデザインと比較したら「うんといいよね」と思うし、きっとこういうデザインを好む方もたくさんおられるということだって理解できる。例えばかわいい猫ちゃんデザインもあるのだけれども、たぶん中学生のムスメ氏は「かわいいーー♡」とすごく喜ぶと思うのだ。10代の女の子たちが「わぁ~♡」と手に取ることができる、そこに主体的な選択の余地を作るということ、そのこと自体を心から歓迎している。

 全ての人に受け入れられるなんてことはありえないのだから、私は今回どのデザインに決まってもい、と(悪い意味ではなくポジティブに)思っている。私みたいに、あんまり「かわいい」ものを日用品として選ばないタイプ、身の回りにあまり色目のものが欲しくないタイプ、にはあの3つのデザインは積極的に評価されないかもしれないけれども、それはそれ。「あのう、かわいいとかかっこいいとかいう要素なしで、なんなら銀色の袋に生理用品が詰め込まれているだけのもんとかが欲しいかな、むしろ。」という意見は意見として述べておき。そんなふうに、「次はこんなものが欲しいな」って言えること、今までは「これしかない」って勝手に諦めて受け入れるしかなかったことに対して「こうであったらいいな」と多くのユーザーが思えるようになること、それがこのプロジェクトの一番尊い側面なんじゃないかと思っている。私もこれまで「こういうもんです」って一方的に提供されているものを仕方なしに受け取っている気でいたから、デザインになんて全然興味を持てなくて「なんとなく緑色のやつと、水色のやつ」ぐらいの認識しか持てていなかった。今回改めてよく見てみたら女の子の絵がそこに描かれているのを知ってたまげたんだけれども、それくらいどうでもいい「背景」でしかなかったのだ。(ユニ・チャームの方には大変申し訳ないけれど。)でもこのプロジェクトを通して、タンポンの外装デザインが好きじゃなさすぎて背景化しちゃってたけどそんなことしなくてもいいよねと思えたし、提示された3案があったからこそ「私はこういうのがいいかも?」っていうのを考えるきっかけをもらえたし、さらにはそれが自分だけではないっていうことも知ることができた。そのような意味において、このNoBagForMeプロジェクトは、生理用品ユーザーたちの主体性に働きかける力を持った運動なんだと思っている。

 でも、というか、だからこそ、ちょっと残念に思っているのは、最終的なデザイン決定が投票による多数決で決まってしまうという点だったりする。最も広くユーザーに好まれ支持されるデザインを採用する、というのはもちろん販売戦略として当然だと思うのだけれども、「ユーザーの主体性を(今後も)つないでいく」ことに主眼を置くのならば、今回多くの人が発信した多様な意見を意見として受け取って検討したうえで「今回私たちが最も大切にした観点はこれ。そのため今回はこのデザインに決定する」という意思決定をしたらいいのだと思うし、その意思決定の過程をこそ知りたい、と思うのだ。この運動によって、たとえば性教育の不十分なわが国で10代の女の子たちが生理を恥ずかしいことだと思っている、そういう子どもたちをひきつけ、ポジティブな気持ちで手にとることのできる生理用品にしたいと考えた、というのならそれで、私は自分好みの外装にならなくても理解も納得もできる。でもそれが多数決によって決まりました、となると、極端な話「結局世の中のみんなはかわいいものが好きで、私はマイノリティなんだなぁ。」と勝手に分断された気分になってしまう、ような気がする。でもこの#NoBagForMeプロジェクトは単に生理用品のパッケージデザインを好き・嫌いで決めることが目的なのではなくて、それぞれの人が生理という人間の身体に起こる営みと向き合い、社会的に位置づけなおし、自分の生活に合わせて主体的に選択できる社会を目指す、そういう継続的な運動なんじゃないかと私は期待している。タンポンのパッケージデザイン変更はその端緒である(にすぎない)のだから、今回照準を合わせた層やテーマを明確にして、まずはこんな文化を、社会を作っていきたい!という方向性を(誤解を恐れずに言えばトップダウンで)示してほしかったなぁというのが個人的な感想である。いっぺんに色んなことはできないから、今回取り込めなかった観点は次につないでいけばいいし、そうやってつないでいくこと、動きをとめないことのほうに意味があるのだと私は考えている。そしてこう言っている私も、その「動き」を担う当事者の一人であることを胸にとめたい。

 ところで話は少し変わって、タンポンユーザーとして外装デザインと同様にモノ申したいのは、ぜひとも「使用済みタンポンを捨てるためのものが欲しい!」ということ。いや「月経カップ体験記」でも書いたんですけど、みなさん使用済みタンポンをどうやってサニタリーボックスに捨ててるんでしょうか。私は手元にナプキンの外装(不織布)があればそれに包んで捨てるのだけれど、なにしろタンポンメインユーザーでナプキンは補助的にしか使わないものだから、使用済みタンポン>ナプキン外装というアンバランスで悩むのである。ナプキンの外装がない時には仕方なくトイレットペーパーでぐるぐる巻きにして捨てるのだが、時間が経つとトイレットペーパーは血がにじんで見た目にも悪いし、なんとなく不衛生なような気もしてしまう。だからタンポンの箱にあのナプキンの外装(不織布)をタンポンの本数分セットしておいてもらえたら最高なのに!と思っているのだけど、そんなニーズを抱えているのは私だけなんだろーか。なんなら小さな不織布詰め合わせみたいなものを別売りしてくれてもありがたい。それ以外に思いつく方法は、タンポンを入れている個包装を2倍分ぐらいのスペースにしてもらってですね、そこにアプリケーターと使用済みタンポンを入れて廃棄する、とか?今の個包装ではアプリケーターしか入らないし、アプリケーターにタンポンを戻すとか不器用すぎて無理なので。もし、「そんなことしなくても、こういうふうにすればいいよ」というナイスなアイディアがあったらぜひとも教えて頂きたい。

 というようなことを「あえて言う」。#NoBagForMeに私も背を押されている。

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Nishio Misato
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