デジタルノマド・Satomiと振り返る経歴。海外駐在員、スーパーニートを経てたどり着いた「本当の自分に向き合う」マインド
IT企業の会社員からフリーランスに転身し、外資系企業の仕事を請け負うSatomiさん。PMO(Project Management Office)として、日本と海外の「橋渡し」をする重要な役割を担っています。
新卒で入社したIT企業では、2年間のヨーロッパ駐在を経験。会社を退職後、ニートを経てデジタルノマド(※1)になるという、一風変わったキャリアをお持ちです。
学生時代からの夢だった「海外で働く」を入社3年目にして叶え、紆余曲折しながらたどり着いたマインドの変化とは……?
海外駐在時代のお話やスーパーニートになった経緯、大切にしているマインドなど、ご自身の経歴を振り返っていただきました。
(※1:IT技術を活用して旅をしながら仕事をするライフスタイルを送る人々。)
〈聞き手:竹内美里(ライター)〉
1.プロフィールと経歴
名前:久野木 郷美(くのき さとみ)
生年月日:1992年11月16日
職業:フリーランス
出身地:札幌
ー 経歴 ー
2016年 横浜市立大学 国際総合科学部 経営学系卒
2016年 IT企業に入社
2019年 海外駐在でアムステルダムへ赴任
2021年 帰国後、旅暮らし。全米ヨガアライアンスRYT200取得
2023年 フリーランスとして仕事をスタート
2024年 沖縄へ移住
2.海外駐在に至った経緯。幼少期から「未知の世界」に興味があった
ーーそもそも、海外で仕事をしたいと思ったきっかけは?
Satomiさん:元々英語が好きで、高校で国際文化科に入ったのがきっかけです。当時から「将来は海外で働いてみたい」と思っていたので、それを見据えて就職活動をしていました。
学生時代に英語のプレゼン資料を翻訳することがあり、「完璧だよ!」と喜んでもらえたことがあって。英語力に自信がなくて不安だったのですが、自分の好きなことで誰かに喜んでもらえるって、こんなに嬉しいんだ!と感じる経験でした。
ーー海外の文化や、英語に興味を持ったのはなぜですか?
Satomiさん:親が海外にルーツがあるわけではないし、留学に行ったわけでもないので「これ」というものは特になくて。でも『フルハウス』とか『ハイスクールミュージカル』を見て、いつもワクワクしていました。賑やかで楽しそうだな、って。
ーーたしかに海外の番組って、日本にはない明るい雰囲気を感じるというか、ハイカラですよね。
Satomiさん:小さい頃から、未知の世界が好きだったんです。違う世界に興味があったんですよね。将来は海外で働きたい!と思ったのも、未知なる世界に挑戦したかったのかな、と思います。
ーー就職してからは、どんな生活を送っていましたか?
Satomiさん:海外生活を見据えたIT企業に就職できたものの、文系出身の私はプログラミングやITの理解が壊滅的で、かなり苦労しました。
ーーどのような経緯で海外駐在に至ったのですか?
Satomiさん:まず、バリバリ働く理系の人と同じことをするのではなく、自分の得意なことに着目して努力しようと考えました。
システム関係のことは得意な人に任せて、私は英語の資格を取り、クライアントとの関係性を築くことに注力し始めて。そうしている間に、グローバル会議の通訳やマネジメントのお仕事を任せていただけるようになったんです。
結果、入社3年目でアムステルダム赴任のお声がかかり、オランダに駐在する流れになりました。
ーーご自身で見出したポジションから、夢だった海外行きを果たしたんですね。かっこよすぎます……!
3.夢の海外移住。ヨーロッパ駐在をするなかで感じた「個人主義」の文化
ーー実際のところ、海外駐在はいかがでしたか?
Satomiさん:クライアントの銀行の立ち上げに関わっており、2年間オフィスに通っていました。海外で生活することは、毎日チャレンジングで刺激的でしたね。オランダに赴任して感じたのは、日本以上に「個人主義」の文化が強いことです。
ーー個人主義……どんなことが日本と違ったのですか?
Satomiさん:日本とは比べものにならないくらい、「自分の責任は自分で持つ」という感覚が根付いています。その代わり、「人はみんな平等である」というのが共通認識として存在していて。
例えば、役員がコーヒーを買ってきてくれたり、家族やパートナーを招待する会社のイベントがあったり。友人の職場では、クラブイベントが開かることもよくありました。普段からかなりフランクな関係性なんです。
ーー上下関係を重んじる日本では、なかなか見ない光景!
Satomiさん:平等であることは、職場に限ったことではありません。
年齢や身分は関係なく、個人が尊重されるからこそ、裏を返すと「全て自己責任」なんです。
無駄なことは徹底的に省き、根拠があることにしか時間を費やさない。自分のことは自分で決める。他人に舵を切らせない、みたいな感じですね。
ーー国民性として、強い意志があるんですね。
Satomiさん:とにかく「生きることへの責任」を、一人ひとりがしっかり握っているんです。この姿勢は、間近で見ていて本当に刺激になりました。駐在したからこそ、学ぶことができた感覚ですね。
「自分で考え、行動を変える」
簡単そうに見えますが、明確な意志を持たないとできないことなので、得られてよかったマインドです。
ーー人種や言語が異なる環境に飛び込むと、新たな価値観を吸収できるんですね……!
4.苦しかったコロナ禍で、退職を決意。
海外移住の夢を叶えるも、コロナ禍に突入……。Satomiさんの人生を変える、大きなターニングポイントが到来します。
ーーオランダ駐在中、新型コロナウイルスの影響は?
Satomiさん:コロナの影響はものすごく大きかったです。業務として関わっていた銀行が無事開業し、目標を達成したということも重なり、喪失感に襲われました。
コロナ禍から始まった人種差別や、人と会えない状況にも苦しんだ記憶があります。
ーー異国の地にいるだけでも不安なのに……。
Satomiさん:オランダって、冬は基本的に天気が悪くて暗いんです。それも相まって、気分もどんよりしがちで。
先が見えない日々を送るなかで、自分が本当にやりたいことって何だろう?と考えるようになりました。
ーー自分と向き合う時間になったんですね。
Satomiさん:街がロックダウンして日常がなくなっていき、自分自身も離婚を決めたタイミングだったので、メンタルが限界に(笑)
このままだとまずいと思い、帰国と退職をする決断に至りました。
ーーどんな心境だったんですか?
Satomiさん:自分のアイデンティティを全部失った感覚ですね。常識が全て消えた、って感じ。
でも、今まで無理して頑張ってたかも……と思う部分もあって。好きなことをやりたい!もう何にもとらわれずに生きる!って、解き放たれた気もした。振り返ると、ここが人生のターニングポイントだったかもしれないです。
ーー退職も離婚も、Satomiさんの人生にとって、前向きなスタートだったんですね……!
5.スーパーニート期間。多拠点生活をして見えてきた、新たな未来
ーー帰国してからは、どんな生活を送っていたのですか?
Satomiさん:ヨガインストラクターの資格を取得したり、インテリアを学びながらスタイリストさんのお手伝いをさせていただいたり。ニート期間は、とにかく自分の心が動くことに時間を使いました。
ーー拠点はどちらに?
Satomiさん:拠点は絞らず、旅暮らしのような生活をしていました。
コンビニへ行くにも車で山を越えなければいけない田舎にステイしてみたり、夕日が見える海辺でデイキャンプをしたり、とにかく自由に飛び回りました!
ーーのどかな旅生活、最高ですね。
Satomiさん:東京でも新しい出会いがたくさんあって、自分の世界がかなり広がりました。
都会は洗練されていて気分も上がるし、多様な考え方に触れることができる。
田舎は自然が豊かでパワーチャージすることができ、自分の感情をクリアに見つめられます。人との関係が密なので、かなりリラックスできます。
都会と田舎、両方の良さを感じることができたニート期間は、私にとって貴重な時間でした。
ーー出会う人や環境から、新たな刺激を受けたのですね。フリーランスという働き方に切り替えようと思ったのは、どういった理由だったのでしょう?
Satomiさん:フリーランスや起業家として、自分の意志をしっかり持ちながらイキイキ生きている友人が周りに増えてきたんです。
みんなとワーケーションをしたり、人生について話したりして、このまま場所にとらわれずに働けたら最高だな、と思うようになりました。
ーーフリーランスという働き方は、さまざまな土地に足を運び出会いを求めたからこそ行き着いた答えだったのですね。
6.デジタルノマドという働き方で「三方よし」を目指す
会社に所属せず、フリーランスとして働くことを決めたSatomiさん。
現在は、外資系ITプロジェクトのマネジメント業務やグローバルコミュニケーションを担当。海外のデジタルノマドを日本に誘致する事業のブランディングやPRにも参画されています。
ーー「デジタルノマド」という働き方は、憧れられることも多いかと思いますが、実際はいかがですか?
Satomiさん:デジタルノマドで良かったことは、場所にとらわれずに働けることです。フリーランスに転身してからは仕事が忙しく、自然を求めて島を巡るようになりましたね。居心地がよくて、その流れで最近沖縄に移住しました!
日本全国や海外のデジタルノマド達に会うことができるので、シンプルに楽しいです。
ーー旅行感覚で島を巡っていたところから、すぐに移住してしまうとは。デジタルノマド、強し……!
Satomiさん:ただ、忙しくなりすぎてしまうので注意が必要です。
仕事も遊びも詰め込みがちなので、体力と気力がプチッと途切れることがあります(笑)自分のエネルギー量を見定めることが大切だなと。
ーー自由であるがゆえの注意点ですね……!仕事では、どんなことを大切にしていますか?
Satomiさん:「三方よし」の構造を作ることです。クライアントが喜んでくれているか?自分の欲求も満たせているか?さらには、社会的にどんなインパクトを残せるか。
関わっている人や環境がみんなポジティブである「三方よし」の構造を目指したいです!
ーーご自身としては、どんな欲求をお持ちなのでしょうか?
Satomiさん:会社員の頃から「クライアントの役に立ちたい」という欲求が強くありました。自分自身のやりたいことが確立していたわけではなかったので、それなら誰かのやりたいことを応援したい!解決したい!と。
「誰かの役に立ちたい」という欲求は今も変わらず根本にあり、自分を動かす燃料です。
ーー自分以外の誰かのために動く姿勢、しびれます……!
7.心の声を聞き逃さないで。「本当の自分」に向き合ってほしい
さらなるレベルアップを目指して、クリエイティブディレクションを学ぶ講座『ネオンアカデミー』に入会したSatomiさん。
新たな武器をたずさえて挑むSatomiさんの、今後の展望とは?
ーーネオンアカデミーも後半戦に突入しましたが、ズバリ感想を!
Satomiさん:講義が毎回楽しくて、あーーー面白いーーー!といつもワクワクしています。入会を決めたのも、「未知なる世界に挑戦したい」という自分自身の欲求に素直になった結果なので、純粋に楽しいですね。
ーーネオンアカデミーを通じて、今後はどんな活動をしていきたいですか?
Satomiさん:会社員時代から仕事の軸になっている「日本と海外のブリッジ」を、クリエイティブな視点からもチャレンジしていきたいです。通訳やインバウンド向けのPRにとどまらず、日本と海外を繋いでいきたい。
あとは、海外にいたときに感じた「発想の転換」を日本でも活用したいです。コロナ禍のオランダでは、検査場がパーティー会場のように飾り付けられていたり、環境問題に関する意識の在り方をデザインや機能性があるプロダクトに落とし込んでいたりして。
問題解決に、前向きな気持ちで取り組んでいたんです。
ーー日本でも応用できることがたくさんありそうですね。
Satomiさん:検査に行くのって億劫だし、生ゴミの処理に関しては地味で汚いイメージがありますよね。でもそういうアクションこそ、テンションが上がる戦略を考える。オシャレにかっこよく環境に良いことをして、人々が気持ちよく動くような発想が素晴らしかったんです。
私も、こういうクリエイティブディレクションがしたい!
ーー素敵です!これまでの経験を踏まえて、どんなマインドの変化がありましたか?
Satomiさん:20代を振り返ると、とにかく目標達成思考だったなと思います。その結果、「海外に住む」という夢を叶えられたのかな、と。
でも、「こうじゃなきゃいけない」を常に掲げて、自分自身をしばり付けていた気もします。30代はもっと自分の感情を大切に、しなやかに生きていきたいですね。
ーーSatomiさんの「今」は、しなやかです……!
Satomiさん:だから、もし20代で悩んでいる人がいたら、自分の心の声を聞き逃さず、やりたいと思ったことにはチャレンジしてほしいなと思います。目標達成思考にとらわれすぎると、目標は達成したけど、どこか満たされない……ということが起きるので。
「こうしなきゃ」ではなく「こうしたい」という素直な気持ちを大切にしてほしい。表面だけの目標に、とらわれないでいてほしい。
私も常に自分にとってのベストを探し求めながら、「本当の自分」に向き合い続けたいと思います。
学生の頃から夢だった「海外で働く」を叶えたSatomiさん。
働き方を変え、環境を変え、マインドの変化を乗り越えて、進化し続けています。
あなたは今、自分が生きやすい環境にいますか?
自分の感情を無視していませんか?
心の底から湧き出る本音に、耳を傾けてみてください。
〈取材・文=竹内美里/写真=ご本人より提供〉