【月便#09】ハツユキカヅラ
GWが明けて、水曜日。5月12日。
晴れと雨を繰り返す落ち着きのない4月の陽気を越え、爽やかな初夏の空気が流れはじめています。
この2週間で田んぼには水が張り、カエルが盛大に鳴きはじめ、土手のタンポポはシロツメクサに変わりました。
矢沢での5月がこんなにも素晴らしいということを、私は去年、知りませんでした。
yashuさんにつくってもらったウッドデッキに寝そべり、空を見上げる。日中も朝夕も、気持ちよく外気に触れられます。何より草花がここぞろばかりに生い茂り、 "緑萌える" とはこのことか、と34歳にして理解しました。
この時期の矢沢は、どこを切り取っても美しい。
昨年の今頃はリノベーションにやっきになっていたけど、今年は庭に力を入れよう。そう決めて、少し前から草むしりだの苗の用意などをしはじめています。目下の気になり事は、昨年末に慌てて地植えした「ハツユキカヅラ」の成長の行方。いくら強い植物とは言え、真冬の入り口に植えて、例年より寒くなってしまった冬の元放置してしまった罪悪感…。言わずもがな、春を迎えても中々芽生えず、思い切って土から抜き出し、追肥をしてポットへと戻したのが数日前。心なしか元気になってきているようですが、まだまだ予断を許しません。
実はこのハツユキカヅラ、フェンスに伝わせて目隠しにしようと思い、一気に60株ほど購入したもの。今、ひとつひとつポットへ移し替えた彼らを眺めて「一気にやりすぎたなぁ」と反省しています。気分はまるで60人学級の先生、もしくは、肝っ玉母ちゃんです。
ハツユキカヅラを植えた時はリノベーションの最終段階で、これでようやく年内にやり切れる…兎にも角にもまとめてやったろ!という気分だったのですが、今思ってみると、何も無理やり極寒の時期に断行しなくても良かった。春になって温かくなってから、きちんと土をしつらえて、植えてあげれば良かったなとつくづく思います。
「はじめから100%を目指す」というのが私の癖だということを、この2年に及ぶリノベーションを通して学びました。「全力でやり切る」と言えば聞こえが良いかもしれませんが、「はじめから100%」は、ちょっと違います。はじめのヨチヨチの一歩でさえも "絶対に失敗せずに完璧にやり切るんだぜ、オオォォォ!" というニュアンスを含んでいるからです。
もちろん私も口先では、「完璧なんて目指さなくていいよ。今できる一番を」なんて言ったりします。そしてそれは本心でもありますが、いざやってみようとすると、難しい。ハマればハマるほど "徹底的" 路線へ走ってしまうのです。この傾向は思えば子供の頃からで、そのせいで周りに引かれた経験も、ひい、ふう、みい、よー、いつ…(止めます 涙)。
ただ植物を相手にしていると、そうはいきません。枯れそうなハツユキカヅラを相手にし、なんとか生き延びて欲しいと思いながら土を替え、追肥をして水やりをする。まるでインターネットの更新ボタンを押すかのように、一時間ごとに様子を見に行き、「元気になったかなぁ」「はやく緑にならないかなぁ」とか思ってしまう。当たり前ですが、ネットの世界ではないのでそんな数時間じゃ何も状況は変わりません。
庭を眺めていると、一年越しに再会する植物がたくさんあります。昨年お友達にいただいたスノードロップは、整備もしていない庭にただ植えただけなのにも関わらず、去年と同じところにまた芽を出しました。今年もきれいに咲いてくれています。カッチカチの土に適当に撒いてしまった紫蘇のタネも、小さいながらもきちんと育ち、種まで散らして、今また赤ちゃんのような芽を出してきました。
思い通りになんてならない、ならなくていい、ということを教えてくれるのは、素敵なインフルエンサーやエッセイストではなく、自然の方なのではないかと、つくづく思います。頭で分かっていても体で知れていないこと、私にはたくさんあるなって。
今年はハーブも仲間に入れたいと思い、先日数種類の苗を買ってきました。今度は一気に60株でなく、ささやかに一株ずつ。
元気に定着してくれるのか、しないのか…今はまだ分かりませんが、はじめから100%を目指さず、おごらず、自然に任せてを今年の目標にやっていこうと思う、初夏の夕暮れです。
guesthouse Nafsha
Misato
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