義母とわたし
大阪市内でOLをしていたような義母が、父と知り合って淡路島に嫁ぎ、何人もおじいちゃんおばあちゃんをひとりで看取るも、義父に先立たれ、本当なら次は自分が息子や嫁に世話してもらい、悠々自適な老後を過ごせるはずなのに、ひとりで暮らしている。
なんて書くと、悲壮感たっぷりだけど、めちゃくちゃ元気。趣味もたくさんあるし、友達も多いし、忙しく楽しく暮らしている。
とは言え、田舎特有の無駄に広い畑や裏山の世話を80近い母がひとりで手に負える訳はなく、旦那さんが単身赴任先の東京から月に一度は世話をしに帰っている。長男の嫁である私も子どもたちが成人し、今や仕事もしていないのでマジで何か!何かせな!と思うだけは思い、「いつ帰ったらいい? 草刈り手伝うで!」と電話しても「あんたなんかにできるかいな!怪我されたらよわるわ!」と笑い飛ばされ、「せや!そろそろ玉ねぎ植えるやろ?教えてぇよ!」と言っても、「今年苗ちょっとしかないからな、失敗されたら困りますねん!」悪戯っぽい笑い方で絶妙な毒舌さ加減が何というか、電話の向こうのニヤリと笑う顔も想像でき、腹が立つどころか今やチャーミングにさえ思えてきた。
野良仕事は突然やろうったって、できるもんちゃうよ!というのが母の考えで、台所もテキパキやってしまう母の隙に入れないし(手早いけど料理は下手)、掃除はされるのも嬉しくないらしい(綺麗好きは悪である)。
私に何ができるんやろ…と旦那さんに相談したら、遊びに連れてったってや!コロナ前によく遊んでた親戚のお姉さんは高齢で、お友達も足を悪くして、と、連れがいないらしい。とは言え、私と行って楽しいんかな…と、電話してみると、「行く!!行きたいとこあんねん!」と即答。マジか…。
島の中に新しくできた施設内のレストランでご飯を食べ、花さじきに行き、帰りにアイスクリームを食べた。ちょっとこれ味しつこいわ!を5回くらい連呼してて、絶対お店の人に聞こえてるし、って娘と爆笑した。 道中黙ることなく、ずーっと喋っていた。バスで先に帰った娘からは家に着いたよ! 楽しかったね。とLINEが来て、私は久しぶりにひとりで義実家に泊まった。
翌日は、掃除したり、買い出しして常備菜でも作ろうかな、と思っていたら、農家のおばさんがかぶるフリルみたいのが顔周りに付いた帽子と手袋と熊手を渡されて、裏山の落ち葉の掃除(蛇に遭遇)、お昼を挟んで午後からは、畑に入れる籾殻がパンパンに詰まったアメリカンサイズの袋を積み込み積み下ろす要員として母運転の軽トラに乗せられ、全身籾殻まみれになりながら作業をこなす。(畑と畑の間の細い道もミッションの軽トラを手慣れたハンドル捌きで操り、巨大な籾殻の袋も片側は母が持っていたのだから、凄い)
え?結構当てにされてるし、役に立ってるくない!?ワタシ…。
仕事で忙しくて余裕のない実の子たちは、母の一瞬も止まることのないトークはなかなか辛いらしいが、無職の、町の遊んでるお母さんであるところの私は少し距離が取れる分、ただただ面白くて楽しかった。嫁としてこんな役回りも有りなのかと新しい発見だった。(違うよねw)
だけど、昨日の夜、真っ赤になった月を嫁と姑2人で、自分達が生まれ育ったのとは違うその場所で見上げてる光景は、なかなか良いものだったんじゃないかと思っている。
義母、次は北野ホテルの朝ごはん食べてみたいらしいです。
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