鼻炎にヤードム
日本には花粉症患者が非常に多い。人口の3割とも5割とも言われるが、冷静に考えると物凄い人数が苦しんでいることになる。
かくいう私も幼少時から鼻炎を患っており、14歳頃には花粉症も発症。
成人した頃から重症化が進み、立春の訪れとともに鼻水が滝のように流れ続け、目は充血してコンタクトを入れるのにも四苦八苦、体中の粘膜が腫れて呼吸も苦しくなり、薬の服用もあいまって意識朦朧…というQOL対平常時比20%の惨状が数か月続く。春が終われば一安心ということもなく、これが秋にもやってくる。むしろ秋の方が酷かったりする。
そんな訳で私の「もしも願いが叶うなら」は「花粉症治したい」であった。
カネもいらない、名誉もいらない。ただ、この身体に平穏を。
そんなことを思い続けていた。
それが思わぬ形で解決したのは1度目のタイ生活による。
タイには花粉が無いので在住中は症状が治まるのは想定していたが、なんと日本に帰国して戦々恐々で迎えた秋シーズンを薬も何も無しで無事に乗り切ってしまったのだ。こんなに快適な秋は10年以上振りである。
花粉のない地域に1年以上避難していたお陰でデトックスされたのか。そんな上手い話はないだろうと身構えて春を迎えたのだが、またもや私の鼻腔は平穏無事に花粉シーズンを乗り切ってしまった。
これはもしや完治してしまったのか…という疑問は次の秋シーズンの無症状で確信に変わり、人生で1番の願いが成就した喜びを噛みしめていた。
だが、そんなに甘くないのが世の理。
翌年2月も終わろうかという某日、突如として両の鼻から蛇口をひねったように鼻水があふれ出した。おおよそ3年ぶりの花粉による総攻撃、もとい、花粉への過剰反応による自爆行為が始まってしまった。かつての私はこんな苦しい思いを1年の半年近く続けていたのか…。
幸い、3月中旬のタイ渡航は既に決まっていたので、2週間耐えれば苦痛から解放されることが約束されていた。
そうして花粉症再発のお陰で微かに芽生えていた日本への名残惜しさは一瞬で消え去り、早くタイへ行きたい、ここから脱出したいという切なる願いに昇華されていった。
ということで、もうすぐタイに戻ってきて1年経とうという現在、自分史上最強に健康で文化的な生活を送っているのだが、それを支える必須アイテムがある。そう、みんな大好きヤードムだ。
リップクリームのような小さく細長いスティック状になっており、くるくるっと蓋を開けると中にはスーッとする綿のようなものが詰められている。鼻の穴に近づけ或いはぶっ刺してスーッと吸い込めば、強烈な爽快感で詰まりが解消される。鼻づまり以外にも、つまらない会議で眠気に襲われている際の眠気覚ましにも利用できる。さらには、下の部分を回すと液体がちょこっと出てくる仕様になっており、こめかみに塗って頭痛解消に役立てたり、蚊にかまれた時のかゆみ止めとしても使えたりする万能アイデムなのだ。
タイでは国民ひとり1本必ず持っているのではないかと思う程、街中でよく見かける。どう見かけるかというと、高確率で鼻に突っ込んだまま歩いている人を見かけるのだ。バンコク(もとい、クルンテープマハナコーン)の中心街で、デパートのエスカレーターで、その辺の道端で。
日本に住む尊い花粉症犠牲者には、このヤードムを贈りたい。
そしてメンタルを強化して、車内や社内でおもむろに鼻に突きさしてQOLを上げて頂きたい。