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【妄想の種】寒さと暑さ1

今回の妄想の種は『寒さと暑さ 「寒さ編」』です。

暖かくなってきたなあ…って最近はよく思うのですが、それでも朝晩はまだ冷えますよね。私はこれを書きながらストーブからわずか20cmの距離で震えています。
しかし、さすがに20cmだとやっぱり火は熱いわけです。暑さより熱さ。

よって、たまに体の向きを変えて温める場所を変えたり、50cmくらい離れて、またすぐ戻ってみたり、ストーブのそばで落ち着きなく快適を求めているのです……。


寒さに強い子

ある晴れた冬の日。空は澄んで青く、空気は痛いほど冷たい。
はーっと吐き出した息は白く辺りを染めて、すぅっと消えていく。

「はあーーー、さっむ! 快適ー!」
「……寒いね……。飛翠なんでそんな元気なの」

授業を終えた高校からの帰り道。水希は小刻みに肩を震わせながら、楽しそうに隣を歩く親友・飛翠に視線を向けた。飛翠はとても楽しそうにニヤッと笑う。

「だって、気持ちいいじゃん? さっきまでの教室とか暖房効きすぎて、なんかもわっとしてたもん」
「確かにぼーっとしちゃったけど……だからって外に出て快適とは思えないよぉ……」

隠しきれない大きなあくびを手で抑えて、水希は眠たそうに続ける。

「早くお家帰ってこたつ潜りたいなぁ」

帰宅したらそのままこたつで寝てしまいそうな水希の言葉に、飛翠は大げさにため息を吐いて首を振った。

「何言ってんの、もうすぐ期末! テス勉の約束! ちゃんと点取ってくんなきゃ困るよー、水希、進級できんの?」
「うぅ……。ギリ……行けると思う」
「あーもースレスレの緊張感なんてゲームで十分! こたつでミカンはあたしが堪能しとくから水希は勉強頑張って!」
「えええええ……っ」

渋る水希の背を押して、飛翠は彼女の家へ向かう。いつものーー試験前は特に、よく見る光景だ。今夜は水希の家にそのまま泊まって、時間の許す限り一緒に勉強をする約束。
勉強が苦手でなるべく避けて通りたい水希との勉強合宿は、飛翠が勉強を教える代わりに彼女の手料理をご馳走になるのが慣例でもある。

「せめてこたつで30分くらいゆっくりしよーよ、もう手がかじかんでペンなんか持てないよぉ……」

涙目で訴える水希に、飛翠も自分の手を見下ろした。冷たい空気にさらされて冷えた手は、たしかに赤くなっているし動きは鈍い。

「それは一理あるね。今日は晴れて日差しがあるって言ってたから、暖かいと思ったんだよねー。手袋忘れてきたのは失敗だったな」
「元気だねぇ……」

失敗失敗、と笑いながら歩く飛翠に、水希は呆れた目を向ける。それから、小さくあくびを噛み殺して冷たく吹きつける風に肩を震わせた。

「はやく帰ろー。冷凍庫にこないだくれたおやつのたい焼きあるよ」
「まだ残ってんの? よーし行こう行こう、おやつ食べたら勉強ね。飲み物何がいいかな。ジュースじゃないよね? やっぱお茶がいいかな」

調子よく返事をして進む飛翠について歩きながら、水希は澄まし顔で首を振る。

「うちには紅茶しかありませんっ」
「えー。じゃあなんか買ってく?」
「買うのー? 紅茶じゃだめ? 寒いから早く帰ろーよぉ……」
「しょーがないなぁ寒がりさんめ!」

互いに笑いながら軽口を叩き、ぐりぐりと肩を寄せてくる飛翠を押し返して、水希は兄と2人で暮らすアパートへと帰途を急いだ。

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