見上げればいつも四角い青空#25 天高く馬もボクも肥ゆる秋(笑)
先日、所用で四谷から学習院大学初等部と迎賓館の間を通り、東宮御所に沿った道を登っていると、空には真夏のような太陽ともくもくと湧くように広がる入道雲が見えるのに、東宮御所の中からは、まるでベルだけで構成された器楽隊でも潜んでいるのでは?と思うほどのスズムシの大合奏に出くわした。
ビッグバンド並みの音量で響く“りんりん““りんりん“という演奏には、東宮御所の周囲を巡回しながら警護する警察官も辟易している様子だった。
まだまだ東京には豊かな自然の森があると改めて実感する。
そんな体験から2週間も経たないのに、朝夕はめっきり涼しく過ごしやすい、秋を感じさせる空気感に体がついて行かない。
子どものころ、秋は運動会の季節だった。
運動会の当日、すぐにでも運動会を始めたいボクたち子どもには、延々と続く来賓のお偉方のあいさつで「天高く馬肥ゆる季節となりまして…」などと言われても、ありがた迷惑でしかなかったのを思い出す。
もともと中国前漢時代、空は高く、そして青く澄み渡り、実り多く、人も馬も食欲旺盛となる秋は、匈奴と呼ばれる異民族が攻めてくるから警戒を怠るな!というメッセージだったこの言葉は、今では転意し、実り多く、過ごしやすい季節という、まるで運動会のあいさつにぴったりな時候の言葉となった。
何をしても何を始めてもOKな秋は、運動の秋でもあり、芸術の秋でもある。そして読書の秋もあるが、ボクの中にいちばんしっくりくるのはやはりボクを肥えさせる“食欲の秋“だ。
お米にお芋、ぶどうに柿、松茸にさんま、数え上げればきりがなく、数える先から涎がこぼれそうな、何を食べても美味しい実りの季節だ。
これから始まる今年の秋はどんなおいしいものを食べられるか楽しみでならないけれど、天高く馬も肥えるし、ボクもすぐに肥える。そして若いときと違って、肥えたものもなかなか落ちない、肥えすぎ注意の秋なのだ。