好きな映画の話 "Before Sunrise"
初めまして。交換日記(ブログ)の1ページ目です。ナツキです。
好きな曲に「子供の目で僕を困らせて」という歌詞があります。
Before Suriseの主人公二人は、まさにこんな関係だな、とふと思いました。
最近リバイバル上映もされて、観た方も多いのではないでしょうか。
私が初めて見たのは、大学二年生の時だったと思います。それから、一番好きな映画はなんですか、そう聞かれたら、私はいつもこの作品をあげています。この作品は三部作で、Before Sunriseののち、Before Sunset、Before Midnightと、9年後、18年後の彼らの話へと繋がっていきます。
アメリカの青年ジェシーとフランスの大学に通うセリーヌは、ユーロトレインの中で出会います。ジェシーの説得により、ウィーンを1日観光することになった彼らは、街を歩きながら自分のこと、仕事、恋愛などを思いつくままに語り合います。しかし二人が暮らすのは、海を挟んだ別々の土地。一夜だけと言葉ではいうものの、夜が更けるほど惹かれ合っていく二人・・・
この映画の良さは、劇画的でないところ。映像のほぼ全てを構成するのは、等身大の彼らの会話です。もう子供じゃない、けど大人になるってこういうことなんだろうか。成長のきっかけを掴み始めている、けれど、まだそこに自信が無い。そんな揺れる心を持った青年達の目線で送る一夜の出会いは、見る人の記憶をくすぐるような可愛らしさがあります。
語り出したら書ききれない、そのくらい好きな映画です。あまり長くしたくないので今回は、「ジェシー」について少し話してみたいと思います。
ウィーンで先に列車を降りるジェシーは、パリに向かうセリーヌをこう誘います。将来の自分に悔いを残さないように、今、僕とタイム・トラベルをしないか、と。
冒頭のシーンで、彼らの乗る車両には喧嘩をするドイツ人夫婦が乗り合わせていました。彼らを見たセリーヌは「年と共に男は高い声を識別できなくなり、女はその反対なの」といいます。推測ですが、ジェシーのセリフはこの言葉を聞いてのものだと思います。
長い時間を共にすると、ぶつかり合う時が訪れます。特にそれが、結婚という約束のある形だったら、簡単にやり直しは効きません。そうなった時、人は後悔という形で過去を振り返るのではないでしょうか。人生の分岐点で選択しなかった「失ったかもしれない何か」に希望を見つけようとする。そうすることで、人は辛い現実から逃げようとしているのかもしれません。
だったら、分岐点に立った今、その「何か」を思い切って「失敗」にしておこう。僕が君に「失敗」の記憶を作ってあげる。言い換えれば、君の将来の幸せを僕という「失敗」をもって保障する、というのです。
可愛らしい誘い文句ですよね。「絶対に失敗しないからw」の正解はこれだと思います。私も一度でいいから言われてみたい、ウィーンでBefore Sunriseごっこしたいなあ・・・
これは私の考えた背景なので、ジェシーがこの言葉をどれほどの深意をもって言ったのかは分かりません。ただ、彼の言葉は直感的ですが、私はそこに物事の本質を捉える感覚の鋭さを感じます。
セリーヌがジェシーを愛おしそうに見るとき、彼は決まって少年のような表情をしているのです。イーサン・ホークの明るいブルーの瞳は、まさに彼の「子供の目」を表現するのに、ぴったりだと思います。
ナツキ
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