仕組み化は居場所づくりなのかもしれない
個人事業でWebディレクターとしていろんなWebサービスの中の人をやっています。事業の立ち上げフェーズも好きなのですが、1が10や100にしても人が疲弊しない運用フローを整え、仕組み化することに注力してきました。
様々な場所を転々として仕事をしてきて、「仕組み化をがんばっているのは居場所づくりのためだったんじゃないか」っていう結論が出たので、それをnoteにまとめました。
Webディレクターになったのは仕組み化が得意だったからだった
新卒で入ったSIではWebエンジニアをしてました。で、転職した先でもフロントエンジニアをしていたんですが、途中からWebディレクターとしてのキャリアをはじめました。
転職して入った会社は業務の属人化が激しくて、様々な部署から依頼がくるのに依頼する担当によって内容がバラバラ。毎度デザイナーさんが工数取ってヒアリングしなおしている状況でした。そんな状況を見兼ねて、ただのフロントエンジニアが当時の上司や役員を説得してコツコツ運用フローを整えていった結果、ディレクターの方が向いてるんじゃね?と当時の上司に言われて、確かに…と思いディレクターになった経緯があります。
物事を俯瞰するのが好きだし得意だったので進行管理みたいな仕事の方が向いてるしやりたいかも、と思ってディレクターになったんです。
「チームの精神汚染濃度を下げたい」気持ちが仕組み化を加速させていった
なぜ当時、そんなに仕組み化にこだわっていたのか…。
最初は「気づいたからやる」という、ただそれだけだったんですが、後々気づいたのは、チームの精神汚染濃度を下げるために運用フローを仕組み化したかったのだということ。もっと正直に言うと、自分を守るという意味が大きかったかも。
さっきのチームの例でいうと、依頼内容の質の違いでチーム内メンバーの精神汚染濃度が乱高下している状況でした。「あの人からの依頼はスムーズなのに、この人からの依頼って情報が揃わなくてイライラするんだよなー」みたいな愚痴が溜まっていっていました。私も仕事をする中で、度々そんな場面を見たり自分が陥って、しんどかったのを覚えています。
運用フローに乗せてしまえば依頼内容の質の違いは最小限で済むので、私も精神汚染しなくていいし、チームメンバーも依頼する人たちもフロー通りにことを進めればいいだけなので、ストレスの原因となるトリガーが少なく済みます。そして、精神汚染濃度がチーム全体から薄くなっていく。運用フローを整えたことで、こんな状況変化を垣間見ることが出来ました。
当時の私は、仕組み化が精神汚染を防ぐ役割を持っていることを、無意識に理解していたのでしょう。私がHSP気質っていうのも相まってか、チーム内の精神汚染はひどく私にも影響を与えるものだったので、どうにかしたかったんじゃなかろうかと今は振り返ってそう思います。
チームの心理的安全という命題
しかし結局私は、このチームで精神汚染濃度が臨界点を突破し休職をしました。私がひとりで運用フローをがんばって整えても全然足りなかったし、メンバーを巻き込む力も足りませんでした。
ディレクターになったことでタスク量が倍になりました。忙しさは想像力を奪っていき、未来の長期的なメリットを見出す気力もなくなり、仕組み化どころではなくなって目の前の仕事を属人的に消化していく日常になりました。昇進しても、年収を100万以上上げてもらっても、社内のMVPを取って数百人のNo.1になっても、何も満たされない。人を信じる力もなくなって、もう誰かと働くのは無理かもと本気で思ったりしていました。
私がひとりで運用フローをがんばって整えても全然足りなかったし、メンバーを巻き込む力も足りませんでした。
さっきこんな風に表現しましたが、チームで働いているのだから一人でがんばったところでいつか限界がくることは目に見えています。メンバーを巻き込むスキルも当時は乏しかったし、私もいっぱいいっぱいでメンバーを巻き込む気力など残っていませんでした。それは周りのメンバーも同様でした。
その後会社を辞め、別の現場で働く機会もありましたがチームのステークホルダーたちとの立場や職業の違いで分断を感じたり、理不尽なことが横行していたり、安心して働ける場所とはいい難いところで仕事を転々としていました。
チームの心理的安全とはなんなんだ…。
仕事をしていく中で、最も難しく最も答えの出ない命題だなと感じていくようになりました。
チームで働くとは、感情を切り売りすることなのか
本屋でこの本を見かけたとき、真っ先に思ったのは「感情は資本なのか…」ということ。本の中で「感情労働」「感情管理」という言葉がしばしば出てきます。感情って本来は自由なものであるはずなのに、私たちが働くときにはマネジメントされ、対価として支払う資本となる…。実体験と共に痛感しました。
感じられた感情はそのままストレートに表明されるのではなく、いったん点検され、操作され、修正され、一連の管理の工程を経た後に表明される。
本の中にこんな文章があるんですが、ネガティブな感情ほど「一連の管理の工程を経る」上で、かなり慎重に工程を重ねるのではないかと感じます。イガイガの形状のものを、まるい形状に無理くりこねくり回して相手にパスするようなイメージですかね。一見丸いけど、無理やりこねくり回したものはやっぱり相手にバレるもんで気まずくなったりして、負の連鎖が少しずつ始まっていく感じ。
グッと言葉を飲み込んだり、嫌なことを受け入れたり、影で悪口言ったり。そういう状態が続くと、感情をコントロールすることに疲れ無頓着になり、感情の管理工程がぶっ壊れることもあるかもしれません。その結果、チームの精神汚染は加速するんでしょう。
逆に言えば、「管理工程」に乗せる感情が適度な数で(0だと心は死ぬ)、あまり感情をこねくり回す必要なくメンバーに投げられて、メンバーからもいい反応が返ってきて、となるのが理想だし心理的安全が確保されているといえるのかもしれません。
「相手に嫌な思いをさせない」って社会の中では当たり前ですが、仕事という名の共同作業をする上では、そうかんたんではありません。思いがけないところで傷つけてしまったり、傷を受けたりします。なので、そういう瞬間を極力なくしていくには、個々のコミュニケーションスキルにプラスして、相応の仕組みをチームに取り入れる必要があります。
仕組みはチームの精神汚染濃度を下げる
いくら仕事とはいえ人間は感情で動く生き物なので、感情をないがしろにしては人とのコミュニケーションは成り立ちません。だから「黙ってやれ」とか「上に従え」と誰かが言ったりそういう雰囲気を作ってしまうと、歪が生まれます。歪からは負の感情が生まれ、積もっていきます。
前にこんなnoteを書きました。
チームの中の失敗を「人の失敗」ではなく「チームの課題」として取り扱う
人のせいにしてしまうと、コントロールを完全に相手に任せてしまうので改善するのかしないのかよくわからないことになります。でも、仕組みのせいにしちゃえば、議論をして方法を一緒に考えアクションしていけます。
感情が揺さぶられるのは、そこに人がいるからです。仕組み化しちゃえば、人との間に仕組みがあるので、負の感情が揺さぶられる瞬間も少なくなっていきます。負の感情は最小限に、喜びや感動は最大限に。そういう仕組み作りが必要なんじゃないかと思います。
話は変わって、emol workを運営しているちかみさん(@chikami_emol)のnoteがとても印象的でした。
(1)「管理者がどうにかしてくれるから自分は周りに関与しない」という自分のチームのことでも他人事に感じてしまう。
(2)「管理者は、評価する側だから正直には話したくない」という管理職に対する不信感を抱いてしまう。
管理者がいることの問題点としてこのような内容がnoteに書かれていて、すごく共感しました。期待と失望を過度に請け負う管理者の立場はきついし、チームは自分がコントロール出来ないっていう雰囲気で働くメンバーもきついです。
emol workはチームの課題を、管理職への研修でも若手へのビジネス講座でもなく、チームメンバーそれぞれにフォーカスし解決を目指す仕組みを打ち出しています。まさにチーム運営の仕組み化。
心に蓄積するストレスは、無意識に溜まっていって気づいたら崩れ落ちてしまうものです。仕組み化がストレスのチリツモを最小限にする手段になっていけたら最高です。
心理的安全×仕組み化=居場所づくり
今のところ、私の出した答えは「チームの心理的安全はチームで作っていくしかない。個々の課題ではなくチームの課題として取り扱い、仕組み化で解決することがひとつの手段なのかも。」です。
「〜かも」と表現したのは、私もまだまだ模索中だからです。正直、この命題を仕組み化でキレイサッパリ解決することは難しいです。でも、手段としては有効なことだと思います。
私にとっては、仕事っていうのは自己実現の大事な場所だし、チームの一員になることで人生の居場所を確保しています。
「あのときの自分」が感じていたように、運用の仕組み化は精神汚染濃度を下げる効果を持っていて、人を守っている要素も大きかった。当時は頓挫しちゃったけど、これを持続可能な状態に持っていければうまくいくかもと思ってます。
仕組み化は居場所づくりにつながっていたということ、なのかも。ちょっと飛躍しすぎたかな。でも今のところ、こんな感じで考えてます。
私は運用の仕組み化を通して、チーム運営最適化のきっかけを提供していきたいなぁと思っています。
information
「いろんなWebサービスの中の人」をやっている個人事業主です。
チームの仕組み化までやるディレクターです。
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駄文が捗ります