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小学生池田、のび太にメタ世界を語らせるの話



家にパソコンが来た

小学生の頃、家庭にWindowsパソコンを手に入れた。OSはWindows98。今となっては化石OSだが、人生で出会った最初のWindows OSであることもあってXPの次に好きなOSだ。

起動の時のカリカリカリカリ…(内部の音)が好きだった。

小学校低学年の自分は真っ先に飛びつき、いじり始めた。同梱されていた富士通のCD-ROMかるがるパソコン入門を一通り遊び、ブラインドタッチを覚え、誰に見せるためでもなく原稿用紙モードで起動できるワープロソフトで文章を打ち始めた。

しょうもないものを書いていた気がする。シンガポールをもじった題名「死んだポール」とか。今とほとんど変わらないんですよ。たしか原稿用紙1~2枚ほどの話で、スカイダイビングをするポールがパラシュートをつけ忘れてしまって…みたいな話だった気がする。

くだらないの中に愛が。人は笑うように生きるようだが、くだらない話はドリームキャストにも波及する。


1998年、ドリームキャスト発売

セガより発売されたドリームキャスト

1998年にセガからゲーム機「ドリームキャスト」が発売された。正確には異なるようだが当時「128bitのゲーム機」と雑誌媒体などでアピールされたこのハードは、1994年に発売されていたプレイステーション、1996年に発売されたニンテンドウ64などと比べても当時の中でもかなりスペックが高く、綺麗なグラフィックや高い処理能力をはじめ、当時ではまだ主流ではなかった有線でのインターネット接続機能を標準サポートした。ソニーがプレイステーションで先に発売していたようなディスプレイ付きの遊べるメモリカード「ビジュアルメモリ」もあった。


ビジュアルメモリ

今は亡き湯川専務による「ドリームキャストいかがですか」「専務、ひとつください」のCMも懐かしい。第38回全日本CM放送連盟全日本CMフェスティバルの最優秀テレビCM賞を受賞していたようで、その衝撃的なCMは今でも強く記憶に残っている。

これだけ自分で持ち上げたドリームキャスト、持ってはいないのだが何故か販促用ビデオテープがあって家でソニックやシーマン、Dの食卓2、あつまれ!ぐるぐる温泉などのティザーを見たり、スーパーのゲーム売り場でソニックアドベンチャーの疾走感を楽しんだりしていた。


ドリームキャスト、池田ノベルに登場

そんなドリームキャストが8~9歳の池田のワープロミニ小説に登場した。
ドラえもんの吹き出しセリフ「ドリームキャストぉ!」がそのまま題名になって、本文1文目でのび太がそれに続いて話し始めていたような気がする。
あまり多くは覚えていないが、地の文がほぼなく、のび太の部屋にいるのび太とドラえもんの会話で進行する。記憶を引用していく

「ドリームキャストぉ!」
「なあにそれ?」
「これは未来のゲーム機で、これを使うとゲームの世界に入って遊ぶことができるんだ」
「うわーすごいね!」

池田の記憶より

ドラえもんが未来デパートで買ってきた「ドリームキャスト」という未来のゲーム機でのび太と遊ぶという設定だ。
大人になってドラえもんのパラレル西遊記を観たが、あの感じだ。
実際にゲーム機の世界のなかに入って体感することができる。

「これで遊ぶとするか。カードをセットして」
「うわ!部屋の真ん中に穴が出てきた!」
「さあのび太くん!ここに入って!いくよ!」
「うん!」

すごいおぼろげな池田の記憶より

ドリームキャストを起動するとのび太の部屋に大きなワームホールのようなものが出現。中を覗くとタイムマシンの中のような青い空間が広がっている。
のび太は少し戸惑いながらドラえもんの後に続いてゲームの世界へ続くワームホールへ入っていくのだった。

「ここは…?」
「西部の荒野だよ。ここではのび太くんはガンマンなんだ」
「ガンマンかあ!ねえドラえもん、あそこに人がいるよ」
「同じガンマンかもね、行ってみよう」

だいたいあってるようなくらいの池田の記憶より

ゲーム世界の荒野にワープしたドラえもんとのび太。
ここでのび太が銀河超特急(1996年公開)のときのように西部のガンマンとして無双する話かと思われたが、印象に残っているのはここからだ。
ドラえもんとのび太は現地のゲーム世界のガンマンと接触する。
のび太がガンマンを諭し始める。

「あのね、この世界は本当の世界じゃないんだ」
「何を言ってるんだ?」
「僕たちはゲームからこの世界に来て、君たちがいるのはゲームで作り出された世界なんだ」
「なに!?ここは本当の世界じゃない!?うわーー!!!!!!!!!」

小学校低学年にしてはかなり恐ろしい池田の記憶のかけらより

ガンマンにとんでもないことを言い始めた。
「今いる君たちの世界は本当の世界じゃない」と現実を突きつけ、ゲームの世界のガンマンは発狂する。
今まで本物だと思って生きていた自分が偽物だと告げられガンマンのアイデンティティが崩れていく。そんな内容だった気がする。

何これ。

小学生池田、この世に存在する"認知"というものに関して小学校低学年にして恐ろしい目覚めを既にしていた。

何が実在する世界なのか。今いる世界が本当の世界なのか。実は自分たちも誰かが遊んでいるゲームが作り出した世界なのではないか。早くもインテリジェント・デザイン説に触れていた。本当に実在する世界に暮らしていると信じていた人にもし真実を知らせたらどうなるのか。真実を知らせて発狂させた本人も誰かによる作り物でニセモノの世界なのではないか。ではその人にとって目に見えて実在している世界とは何か。

そこまで考えていた気がする。それをドラえもんに落とし込んでぶつけたのはすごいと思った。

もしゲームの進行上重要なキャラだとしたら発狂させたらゲームが正常に進まなくなる気がするが、何をもってクリアとする西部劇のゲームだったんだろうか。
ゲームの中のキャラクターが発狂したのであれば特に特定の返事だけするようなプログラミングされたNPCではなさそうだし、西部劇に住む人々も自分の世界が本物の世界だと信じていそうだ。
生身の人間がゲームによって作られ、生かされている。ゲームによって作られた世界だとは知らずに。

そんな設定の話だ。

原稿用紙数枚だったはずのワープロ小説「ドリームキャストぉ!」のその先の話は覚えていない。



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