【感想】映画『吉原炎上』その1
もう一度観たいとは思わないけど、衝撃的な映画だった。
てっきり遊女が恋人と駆け落ちするために放火するのだと思っていたが、違った。
元恋人らしい筋肉質な男性と再開して、この人と駆け落ちするのだと思ってわくわくしていたら、その後、会社の金庫からお金を盗って指名手配犯に…
つら!!
主人公は駆け落ちすることなく、遊女としての人生を全うする。
とはいっても、この主人公、非常に運に恵まれている。
この映画は主人公とそのほか3人の遊女にライトをあてて物語は進むが、主人公以外の遊女はみんな、幸せとは言い難い結末を迎えるからだ。
売上一位の先輩遊女は、誰にも見送られずにひとりで吉原を去る。
売上二位の先輩遊女は、男の口約束を信じて、裏切られて、自害する。
売上三位の先輩遊女は、病気になって、気が狂って、死ぬ。
ちなみに、モブ代表的なお菊(先輩遊女)は、一旦嫁いだものの、結局吉原に帰ってきて、格の落ちるお店に勤めて粗末ななりになる。
この三者三様の生き様を見せられると、主人公のように、お店の表玄関で他の従業員に見送られて、堂々と吉原の門をくぐることは、なかなかに幸せなことに思える。
■遊女たちの関係性
他の遊女からいじめを受けたりするのだと思っていたけど、この映画にはそういうシーンはない。
遊郭に入所した最初の日、売上一位の先輩に挨拶に行ったとき、
売上一位の先輩が開口一番、
「この娘臭うね…」と言うので、てっきり「田舎臭いわね」とか壮絶ないじめが始まるのかなとハラハラして観ていたら違った。
ただ気に入られただけだった。
売上一位の先輩のお客さんに失礼な態度をとってしまった(頬を二発ほど引っ叩いた)ときに、煙草を手の甲に押し付けられて根性焼きされたけど、あれはSM的な感じ?シス的関係でおソロの傷♪というノリだった。
主人公がお客さんとの行為に耐えきれず逃げ出した後、売上一位の先輩が主人公に仕事のノウハウを教えてくれるシーンはこの映画で最もエロティックなシーン。
この映画においては、遊女たちの関係はカラッと描かれていた。
同じ境遇の同志たちという感じ。
なかでも、お菊(先輩遊女)が再び吉原に戻ってきて勤めた遊郭で、遊女たちが食卓を囲み、拍子をとりながら歌っているシーンが印象的だった。
レ・ミゼラブル(映画)の囚人たちが労働しながら歌うシーンや、ピーター・パンの海賊たちがみんなで歌うシーンのようで労働歌という印象を持った。
遊女たちはみんな実家が貧乏というような同じ境遇であると思われるが、主人公やお菊のように家族のために仕方なく売られた人と、はたまた、売上三位の先輩のように、家族から愛情をかけられず、ただお金のために売られた人では、大きく違うように思う。
売上三位の先輩はなんのために誰のために身を粉にして働くのか分からなくて、意義を感じたくて、架空の弟を作り出したんじゃなかろうか。
■面白かったところ
遊郭建築や間取りなどを見ることができて面白かった。
特に主人公が中庭から雨の降るさまを眺めているシーンが好きだった。
売上二位の先輩がお客さんを追いかけ回して階段を走り降りるシーンなどは「千と千尋の神隠し」を連想した。
■怖いシーン
売上三位の先輩が、血を吐きながらもここは自分の部屋だと主張するシーン。
ずっと「掻いて~」と言っているのだと思ったけど、ネットで検索したところ、「噛んで~」と言っているらしい。
てっきり、性病で女性器が痒いので、男性器で掻いてくれということだと思ってしまった。
血で赤く染まった布団が腸のように蠢いていて、怖かった。
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