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朗読劇「アマリリスとおはなやさん」①

6/2(金)21:00より上演予定の
朗読劇「アマリリスとおはなやさん」
原案のプロローグ公開です。

5/11(木)19:00に後半をアップします。

▼ダイジェストの音源はこちら
https://u8kv3.app.goo.gl/E4Riz
アプリ不要、ブラウザからも視聴できます。
少しでも世界観が気になったら是非。


1.プロローグ前半

とある街のとっても大きな通りを小さな女の子がトタトタと走っておりました。
雲ひとつない真っ青な空。
そんなどこまでも続く青の中に小さな赤い風船が飛んでいます。
「風船さん!待って!」
ゆらゆらと風の力で移動する風船を見上げながら、少女は叫びます。
彼女の名前はアマリリス。
風船と同じ色のワンピースに身を包み、街の中をひたすらに走っています。
「お嬢ちゃん!前を見て走りなさい!」
「無理よ!だって見失ってしまうもの!」
真昼の街は多くの人が行き交い、時々ぶつかりそうによろけながらも、彼女は風船から目を離すことをやめません。
自分と同じ色の可愛い風船。知らないおじさんに怒られたって、風船さんの方が大切です。
大事に大事に紐をぎゅっと握っていたのに、突風で吹き飛ばされてしまった風船さん。
パンッ。
「あっ!」
ひゅるるるる。
なんの前触れもなく、風船は音を立てて割れ、どんどん萎んで下に落ちていきます。
「風船さん!行かないで!」
アマリリスは叫びながら風船が落ちた辺りを目指して走り続けました。

***

「どこに行っちゃったのかしら…」
気がつけばアマリリスは街を抜け、木々の生い茂る知らない森へと迷い込んでいました。
アマリリスは半分泣きべそをかきながら、上と下を交互に見て、歩き続けます。
すると木々の隙間から赤いものがちらと見えました。
「風船さん!」
アマリリスは全部の力を出して赤いものの傍に向かいます。
「風船さん……じゃ無い……」
草木を抜けた先に見えたのは色とりどりのお花が並べられた小さな建物でした。
上の方には看板がついており、『花愛堂』と書かれています。
ガッカリしていたアマリリスでしたが、お花の香りが甘く優しくて、元気になりました。
「とっても素敵なお花だわ!」
赤、白、黄色に緑の葉っぱが彩やかです。
花の入った瓶はきらきらと宝石のように輝いて見えました。
アマリリスは一目でお花たちを気に入りました。
さっきまで風船に一生懸命だったのに、もう今はお花のことでいっぱいです。
「あのう、誰かいませんか?」
呼びかけると奥から優しそうなおじいさんが杖をつきながら出てきました。
「誰かな」
おじいさんは目を閉じて首をかしげています。
「お花、とっても綺麗で素敵!」
「ありがとう」
「それで…あなたはだあれ?」
「私はこの店の店主だよ。お花を買いに来たのかな?」
「えっと……あ!そうだわ!私、風船さんを探していたの!風船さんはどこかしら……?」
「君はとっても感情豊かな子だね。面白い」
店主は相変わらず目を閉じたまま、ふっふっふと笑いました。
「笑い事じゃあないのよ。風船さんが壊れちゃったんだもの……」
「それは悲しいね。そうだ、代わりになるかは分からないが、ここのお花を1つあげよう。これも何かの縁だからね」
「いいの?嬉しい!私、真っ赤なお花がいいわ。とっても可愛いんですもの」
それを聞くと店主は奥から真っ白なお花を持ってきました。
「おじいさんたら、目が見えないのね。それは白いお花よ」
「分かっているよ、まぁ見ていてご覧」
そういうと店主はふぅ、と花に息を吹きかけました。
するとどうでしょう。真っ白だったお花は赤く色付きました。
「わあ!どうやったの?おじいさんは魔法使いなの……?」
アマリリスは花を受け取りながら目をキラキラ輝かせました。
「ふふ、私はこうして色々な花に想いを込めて届ける仕事をしているんだよ。良かったら手伝ってみないかな」
「私、あいにく魔法は使えないのよ」
「大丈夫、君なら出来るよ。さあ、中にお入り。」
そうしてアマリリスは、言われるがままに店内へと招き入れられたのでした。

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