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朗読劇「アマリリスとおはなやさん」プロローグ②

6/2(金)21:00より上演予定の
朗読劇「アマリリスとおはなやさん」
原案のプロローグ公開です。

▼前半はこちらの記事にて

▼ダイジェストの音源はこちら
https://u8kv3.app.goo.gl/zaQwq
アプリ不要、ブラウザからも視聴できます。
少しでも世界観が気になったら是非。


2.プロローグ後半

店内は所狭しと花瓶が置かれ、様々な花が並んでいました。
おじいさんは作業台の前に立ち止まり、
「ふむ、君には踏み台が必要だね。」
と言いながらさらに店内の奥へと進みました。
作業台の上には既に色とりどりの花が並べられており、水気が小さなパールのように輝いています。
「綺麗……」
そう言ってアマリリスが花に手を伸ばした瞬間、
「触っちゃダメだ!」
と店主の大声が飛んできて、アマリリスは体を固くしました。
「……感情が豊かな君にとっては毒になるかもしれないからね」
先程とは違った優しい声で店主は言います。
しかしアマリリスは毒、という言葉を聞いて、顔を真っ青にし、それからすぐ真っ赤になりました。
「そんな危険なものを置いておくなんて!」
「話を聞いてくれないかい。君にはこのお花が普通のお花に見えるかな?」
「ええ、少しキラキラしてるけれど、普通のお花だわ」
「私はね、想いを形にする花を売っている。それを手にした時、本当の想いに気が付いたその人は、感情の赴くまま行動することが出来るんだよ」
アマリリスは店主の言うことがあまり理解できませんでした。
「丁度1つ仕事があるから見ていて欲しい。今に来客があるよ」
すると1 人の青年が店先に現れました。
「あの、予約していたお花を取りに来たのですが」
「はいよ、君は恋人がいて、これから先の人生に不安を感じていると言っていたね」
「はい、そうです」
アマリリスは二人の会話をただ眺めておりました。
「そしたら、この花をあげよう」
店主は赤と青紫のカーネーションが包まれている花束を青年に手渡しました。
すると青年は突如目をキラキラ輝かせ、「早くプロポーズしなくっちゃ」とだけ言い残し、店を出ていきました。
「一体何が起きたの?」
「今のはカーネーションを渡すことで彼に真実の愛を教えたんだよ。きっとこれからプロポーズをしに行くだろう。こうやって、私は迷っている人を導く花束を作っているんだ」
「難しいわね……でもとっても面白そう」
「そう言って貰えて嬉しいよ。どうだい、君も1 つ、作ってみないかい。私よりも感情が豊かな君が作れば、もっともっと素敵なものが出来上がると思うんだがね」
アマリリスはいよいよワクワクして、
「どうしたらいいのかしら」
と前のめりに尋ねました。
「私が花を繕うから、君には感情を込めて欲しい」
簡単そうに店主は言いますが、アマリリスは未だにピンと来ていません。
「まぁ、やってみたら、分かるだろう」
そういうと、店主は可愛らしい花たちを1 つの花束に仕上げ、アマリリスに手渡しました。
「これに、嬉しいという気持ちを込めてご覧」
アマリリスはウキウキした気持ちで花束をぐっと握りしめました。
するとどうでしょう。
花束は見る見るうちに色と形を変えました。
「すごいわ!」
「やっぱり君は素晴らしい。嫌じゃなければ明日からも手伝いに来てくれないかい。今日はもう、日が暮れてきた」
外を見ると、真っ青だった空はぼんやり、オレンジがかっているのでした。
「分かったわ!また来るわね」
「またおいで。あぁ、そうだ、名前を聞いていなかったね」
「私、アマリリスって言うの!」
「なるほど、通りで…… アマリリス、待っているよ」
アマリリスはその日はまっすぐ家に帰り、明日からの楽しそうな日々に思いを馳せるのでした。

つづく。

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