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君たちはどう生きるか/ネタバレ解読&解説/牧家の奇妙な冒険

1.はじめに


映画の色々な解釈が多くあるがどれもしっくりこなかったので自分なりに解説を試みようとするものである
ネタバレしているので注意
物語の核心としては3つある
①眞人が母親と決別する
②眞人がナツコを母親として認める
③石の世界の継承問題
である
それらの解説の前にまず登場人物の心を解読したい

2.眞人について


戦争の3年目に母親が火事で亡くなり、4年目に東京から疎開した。
まだ母の死からは全然立ち直れていない
疎開先で母親そっくりの母の妹ナツコが後妻として、眞人の新たな母親となり出会う
母の死から一年しか経っていないのに既に父の子を宿していると言われる

この時の眞人の気持ちは見た目がお母さんだ!という驚きと嬉しさの気持ちと、母ではない他人がいきなり母親面してきて戸惑っている感情。
さらに弟か妹生まれることに脳の処理が追いついていない。

さらにナツコは赤ちゃんの時に会ったと言っている
つまり赤ん坊の時しか会っていない、母の葬式にも年に一回会うわけでもなかった存在で、しかも父親とは母の死後頻繁に父親と会っていたということ。
これは父は好きだが眞人(姉の子供)は嫌いであるというメッセージでもあった
眞人の母親になるという歩み寄りが一切この時点ではなかった
眞人は母親そっくりの人物からの愛情は既に新たな命に注がれていると感じた

眞人は疎開先で七人の小人よろしく怪物のようなばあや達に気圧されたり新しい環境に気疲れして眠ってしまう
その寝姿をナツコは冷ややかな目で見つめる
笑うでもなくただじっと
姉にそっくりな眞人のことを快く思っていない
眞人にとってナツコは家族の異物だが、ナツコにとっても眞人は新婚の異物でもあった
この子さえいなかったら私は幸せになるのにとでも思っていたのか

深夜父の帰りを待つ眞人、父は死んだ母との3人家族で苦楽を分かち合える存在であるため父に会いたかった
しかし父は真っ先にナツコのもとへゆき期待は外れる
そこで現状打開する必要が生じた

学校で喧嘩を起こしボロボロになる
その帰途自らを傷つけ、父親の心配を期待するが意図せず話が大きくなり期待がまたも外れる
転んだと言っているのに犯人探しを提案する父親、違うそうじゃない
この自傷は幼児退行の一種だと考えられる

悪阻に苦しむナツコの見舞いにしぶしぶ行く眞人、自分がつけた傷を本気で心配するナツコに心が動かされる
その優しさに母親を見たか

館に消えたナツコを探索しにゆくキリコばあやから(ナツコが)いないほうが良いと思っているのにどうして助けにゆくのか的なことを言われる
キリコは眞人の気持ちを見抜いていた
それに対する眞人は、母親が生きているかもしれないことを理由にする
この時点では眞人優先順位は生きているかもしれない母親の探索であった

その後は若キリコに会ったりアオサギが敵から仲間になったりした

2.母親との決別 

火事で母親の死に目に会えなかった眞人は16歳の姿の母親(ヒミ)と会う
ヒミに助けられたりジャムバタートーストを食わせてもらったりナツコ会わせてもらったりと優しさを受け取り心が通い合う
子供らしい姿をさらけ出して最高に幸せの時であった
眞人はヒミに火事で死ぬことを伝えるがヒミはポジティブに捉える
火事で死んだことを眞人は悲しい出来事として受け止めていたがここで母親の純真さと優しさに心の傷が癒される
本当の母親との分かれ、眞人とヒミは何も言わず目を合わせる
眞人は既に母親との別れを受け入れた
とまあ母親の決別はすんなりと理解できる

3.ナツコの母親認定

産屋でナツコに声をかける眞人
帰ろう、と
ナツコはものすごい形相でなんでこんなとこにいるの!あんたなんかなんか嫌い!と眞人を突き放す
母親を火事で失い、アオサギが作った偽物の母親は水のように消え、今また母親そっくりのナツコが異世界に閉じこもろうとしている
嫌われてもいい、ナツコを、ナツコ母さんを失いたくない、そんな気持ちが母さん、ナツコ母さん!ととっさに言葉が出る
今まではお母さんだけどお母さんじゃない人として捉えていたが、母親そっくりのナツコを最初から母親として認めたかったのと、危機感から素直に(ナツコ)母さんを受け入れた瞬間であった
眞人の言葉にナツコは心が動かされ、逃げてと眞人のことを想う言葉を発する
結局石の力によってナツコと眞人引き離されるが眞人はナツコ母さんを認める事ができた

4.石の世界の継承問題


死にかけたペリカンからこの世界は地獄だと教えられる眞人
インコたちは鍛冶屋を食べ自身も食べられかける
大叔父が作った世界は悪意の満ちた世界であった
自身もまた悪意を持っており、大叔父から世界の継承及び新造を断る
一人で世界を作らなくてはならない石の世界は、友達の大切さを知った眞人には受け入れることはできない
たとえ現実が悪意に満ちていたとしても友達と一緒ならば大丈夫だと判断した
まあ石の世界が漫画版ナウシカの庭の主のようにひたすら気持ちの良い世界だったらまた話は変わってくるのだろうけど、眞人が石の世界の主になるのは石の意思が邪悪すぎてまあ無理だよねとしかいえない

5.余談

本作は眞人の個人的な問題を基本にしつつ、諸星大二郎が描く異界見聞録的な世界からを通して問題解決を図るという流れとなっている
なので石の世界の解説はほとんどされない、そういうものだとして捉えるしかない
石の出自と石の意思は最低限説明された

最後に、インコ大王万歳!我々もお供します!




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