「ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか。」
学校に行きたくても行くことができない子どもたちが世界にはたくさんいるということは、知ってはいても、学校にいけないってどういうことなのか、なかなか想像がつきません。
「ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。~マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える~」は前半はマララさんの言葉、後半はノンフィクション作家の石井光太さんが国の情勢や大人たちの都合で学校に通えない子どもたちの実情を紹介する写真絵本です。
様々な国の風景や子どもたちの写真を見ると、子どもたちの置かれた状況が現実世界のことなんだと伝わってきます。
マララさんが生まれ育ったパキスタンのスワート地方では武装グループがやってきて「パキスタン政府を倒して、国を支配しよう」と言い、うつくしい町が戦場になってしまいました。社会をつくっていくのは男たちなので女は勉強する必要はない、とマララさんたちは学校に行くことを禁じられます。
インドではほんのひとにぎりのお金もちが、豊かに暮らしていますが、大部分の人は大人も子どもも朝から晩まで働かなければなりません。文字の読み書きや計算ができなければ安定した仕事につけないのはわかっていても、その日を生きていくので精一杯なので、子どもたちを学校に行かせてやれないのです。
この本で紹介されているのは外国のことだけではありません。日本でも貧しくて修学旅行や給食費が払えなくて、それがはずかしくて学校に行かなくなった子どものことも書かれています。
戦争、差別、虐待、いじめ…など、貧困の理由は色々あり、それをなくすことは簡単なことではありません。
”しっかりと自分の考えをつくりあげ、
それを人にわかってもらえるようなことばにして
伝えなければならない。”
と作者の石井さんはこどもたちに語りかけています。
当時10代だったマララさんの国連でのスピーチは、まさに自分の考えを世界の人びとにわかってもらえる言葉で伝えるものでした。
2013年発行の本ですが、10年経った今、世界は変わっているのでしょうか。日本では2021年度の小中学生の不登校数が20万人を超え、過去最高になったそうです。学ぶ場所が必ずしも学校である必要ではないですが、学びたいけど学べない子どもたちも中にはいるのではないでしょうか。
ここ数年、コロナ過でコミュニケーション不足になりがちになっているので、学んで、遊んで、考えて、話し合うことができる学校ってすごく貴重な場所だな、と感じます。自分が子どものときは、そんな風に思っていませんでしたが…。
マララさんの言葉は子どもたちにも響くと思うので、ぜひ小学校高学年~のこどもたちに読んでもらいたいです。