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書評:イーディス・ウォートン『ビロードの耳あて』(中野善夫訳、国書刊行会)

「図書新聞」No.3671(2025年1月18日号)に、 イーディス・ウォートン『ビロードの耳あて』(中野善夫訳、国書刊行会)の書評が掲載されました。

アメリカ文学史の教科書で必ず名前が挙がるウォートンですが、19世紀という時代がなんとなく苦手で、さらに「お上品」な作家という固定観念から、これまで作品になかなか手を伸ばせずにいました。

幽霊小説の名手としても知られるウォートンだけに、ゴシックやホラーが苦手なわたしは本書を恐る恐る読み始めました。でも、ここに収められた短篇は、じわじわと忍び寄るなんともいえない不気味さが印象的で、あからさまなホラーとは一線を画しており、むしろその独特な雰囲気に引き込まれます。

ある書評講座で「読者の驚きを奪ってはいけない」という大原則を教わり、なるほど!と納得したものの、いざ書評を書こうとすると、どうしてもインパクトの大きかった場面やラストのどんでん返しに触れたくなってしまいます。本書収録の作品には、そのような瞬間が多く含まれており、書きたい気持ちを抑えるのが大変でした。なんだか煮え切らない書き方だと感じられるかもしれませんが、その驚きはぜひみなさんご自身で味わっていただけたらと思います!

さらに付け加えると、思わず「きれい~!」と声が漏れ、そっと撫でてしまったほど魅力的な装丁も本書の魅力のひとつです。まさに「ビロード」という言葉がぴったりの手触り。紙の本ならではの幸せを味わうことができました。

「図書新聞」編集部の許可を得て、投稿いたします。
https://toshoshimbun.com/
書評は以下のリンクからお読みいただけます。

今回も貴重な機会をくださり、大変お忙しい中、原稿のチェックをしてくださった金子先生に感謝申し上げます。



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