管理側として「損」を選択すべきとき
わたしはいま、とある動画チャンネルに関わっていまして。ここではシナリオの添削と広告を差し込む作業だけですが、以前関わっていたところでは、数ヶ月間アシスタントディレクターを担当していました。
放送業界でもよく聞く、いわゆるADです。動画チャンネルにも、そんな役割があるんですよ。上の要求に応えきれなかったのと、昼夜問わずの激務で体に限界がきたので辞めましたけどね。わたしも妥協しなさすぎだったと反省しています。
気になってしまうと自分でスッキリさせなきゃならない性分なので、ダメですね。全部抱え込んでしまう。ほんとうは、そこまで大変にならないハズだったと思うんですがね。
それで話を戻すと、動画を公開するまでの流れがある程度わかっているものですから、お世話になっているチャンネルのADさんに、たえず突っ込みたくてたまらない心境にあるワケです。イヤですねえ。
そういうことで、かつての自分を反省する意味でも、ここにこっそり書いておこうと思います。どこかで問題提起して、ときにはハッキリ言ってあげることも必要ですからね。
1.あなたの仕事は「全体」を管理すること
どうして人に与えた作業に固執しようとするの。
はい、いきなり疑問(というか苛立ち)から始まりました。
そうなんです。なぜか例のADさんは、わたしを含む下の人間に預けたはずの単純作業に執心していて、こちらに仕事がこなくて困っているんです。
正直に言えば、シナリオの添削はワリに合わないので、他の作業もしなければ収入が増えないんですよ。シナリオについては違う機会に書くので、ここでは省略します。
まあ、チャンネルの統括さんがこの人を信頼している……
というより放置気味?なので、おとがめなしなんですけど。
でも、ある意味それでわたしも救われた部分はありますから、そのあたりは、あまりつつかないようにしますか(ずるいね)
さまざまなチャンネルにいろいろな統括さんがいましたけれども、こちらはとても寛容な方ですし、ご自身で作業もしていますから、ADの負担は少ないほうだと思います。
わたしがADだったところでは、ほとんどの作業を任されていましたし、
「なにしてんですか!そんなんじゃダメですよ!」
など、雷も落ちましたね。たった数ヶ月の間でしたが、何度も浴びました。
同じ経験をしたからこそ言えるのですが、つまり、このADさんは自分の役割を少し勘違いしているのです。
それはおそらく、自分が全体の管理をおこなう立場だということをきちんとわかっていないからでしょう。まず、それをはっきり自覚して行動していただきたいものです。
自分は小銭稼ぎができているようだけど、よく見たらあちこち作業が止まっていますよ。このチャンネル、人材は多いのに、使い切れてなくてもったいないなあ(ぼそっ)
わたしがしていたことから想像するに、ADの仕事はこれだけあります。
動画チャンネルのADがやる仕事
シナリオライター・シナリオ添削者・ナレーター・動画編集者・サムネイル作成者への依頼・各種連絡(進捗状況や都合・体調などの確認も含む)
シナリオとナレーション、動画のチェック(不備があれば差し戻し)
「総集編動画」の組み合わせを決める
完成した動画のアップロード
アップロードを完了した動画に広告を差し込み、公開日を設定する
新規ライターや添削者・ナレーター・動画編集者のテストと採用
管理表への記入など
1日に何本の動画を公開するのか、いくつのチャンネルを預かっているかによって、それぞれ同時にこなすべき量も変わります。
また、チャンネルの運営者によって、報酬を実際に支払う以外はすべて任される場合もあるので、そのときはADが契約の締結もおこないます。
わたしの場合は、あまり差し戻したくなかったので、多少の言い間違いなら、音声のカットやシナリオの調整などもしていました。
それはそれとして、こちらの場合はシステムが違うため、1にある「シナリオライターや動画編集者への依頼連絡」はしなくていいのと、動画のアップロードについても動画編集者に頼んでいる場合が多く、ADの負担は比較的軽いです。
そして、わたしも関わっている「下の人間に預けたはずの単純作業」が、5の「広告の差し込み」であり、こちらもADさんは力を入れなくていいはずなのですが……
困ったことにこのADさんは、優先度の高い仕事を放置気味にして、総取りとはいかないまでも、必要以上にこの単純作業を率先しておこなっているのです。
決してシナリオが不足しているわけではないのに、
――これは、シナリオが足りないと喘いでいるチャンネルからすると、うらやましい状況ですよね?以前のわたしなら「余ってていいなぁ」って思いますよ。
本来次の作業を進めるのに必要な2や3が、後回しになっているのです。
少し考えればわかることですが、ナレーションを入れなければ、新しい動画は作れません。新しい動画が作れなければ、当然チャンネルのサイクルに合わせた公開もできず、収益も出ません。
「総集編動画」というのは名前のとおり、今までのまとめ動画で、長いものになると何時間にも及びます。
わたし自身はこういうジャンルの動画は観ません(添削だけでおなかいっぱいです)が、長いほうがたくさんの広告を挟めるので、総集編を作るためにも、新作は多く用意しておくに越したことはありません。
はっきり言わせてもらうとこのADさんは、自分の利益しか考えず、チャンネルにとって優先度の高いことを後回しにしているわけです。
さらに、この人が積極的に進捗状況や予定伺いといった連絡をしているのを見たことがないどころか、逆に他人への依存が強い感じもします。
では、どうしてそのような考え違いが起こるのでしょう。
次の章で書いてみたい(愚痴ってみたい)と思います。
2.「全体を管理する役割である」という自覚がない管理者
唐突ですが、こういう人の下についてしまうと不幸です。
指示待ち(受け身)タイプ →自分で物事を考えられない
後出しじゃんけんタイプ →人の意見にタダ乗りするだけ
指示待ち(受け身)タイプの下についたら
ADに限らず指示待ちタイプの管理者に、ある問題について尋ねたとき、こう言われたことはないでしょうか。
「自分ではわからないので、上に確認します」
「大丈夫だろうと思いますが、上に聞いてみないとハッキリ言えないです」
その問題がマニュアルを読んでも解決できるものではなく、本当に想定外の出来事であれば、ヘンに勝手な自己判断をするわけにはいかないので、その対応は間違えていません。
しかし、立場上、ある程度の判断をゆだねられているにもかかわらず、今までの事例をちょっと応用すればどうにかなりそうな問題でさえ、こんな言葉で片づけるようであれば、
その人は物事の理屈を何もわかっていないか、自分で考えるのが面倒なのかもしれません。
後出しじゃんけんタイプの下についたら
「ああ、わたしも言おうと思ったんですけど、それでいきましょう」
「そうですね、わたしもそれがいいと思ってました」
後出しじゃんけんタイプというのはまあ、人が提案したとたん、こうしてタダ乗りしてくる人ですね。ビジネスチャットで何回苛立ったかわかりません。
――思ってたんなら、なんで言わないの!むしろそっちが指示するべきでしょうが、こんなこと!
おそらく、面と向かっていたら言ってしまったでしょうね。わたしは気になると口を出さずにいられない性分なので。在宅ワークで、つくづくよかったです。
どちらのタイプにも共通するのはこれですね。
どんなに些細なことでも自分で考えられない・決断できない
逃げ腰である
融通・機転が利かない
教わったことしかできず、効率のいい方法を考える発想力がない
自分のことしか見えておらず、他の進み具合に気を配るどころではない
こういう人たちが上だったら厄介ですよ。部下であるこちらが判断して、気を回さなければいけませんからね。
――実際、いつもわたしが管理表記入してますし、シナリオの進捗状況もたまに聞いてるんですが。本来ADさんの仕事ですよ?困ったものです。
成長したい人にしてみれば「自立した考え方ができるようになる」などのポジティブな面もあるかもしれませんが、あまりに下の人間が根回ししなければならないようなら、アンタなんのためにいるんだよ、っていう話です。
3.「木を見て森を見ず」ではダメ
そういうわけで、わたしがこんなにダラダラ書いて、結局何を伝えたいのかというと、管理者だという自覚があるなら、小銭稼ぎに執心しているヒマがあったら他の作業も並行して進めるべきだということです。
特に大事なのは、待機しているメンバーの中から、やる気のある人を見極めて、早く次の餌をあげること(動画作成者を待機させるなんてもったいない。なに考えてるんだ)。
取り分が減ってしまうからヤダ、あいつ(みずき)にやらせたくない、だの、いろいろ理由はあるかもしれませんけど、管理者というのは時として「全体のために損を取らなければならない立場」なんですよ。
自分のことはあまり言いたくありませんけど、ADやってた頃は、ほとんどシナリオライターさんの代わりに怒られていたようなものです。
チェッカーの人でも音を上げるほどの、あまりにひどいシナリオを直していて、
「もう、これじゃ賞味期限切れですよ」
「何日かかってるんですか!」
と連日のように叱られていたんですから。
まあ、叱られてもしかたがないと織り込み済みでしたから、ショックは少なかったですが、今にして思うと、けっこうなストレスになっていたようです。
もちろんシナリオの添削はすべての作業の合間にやってましたから、関わっていた頃は、寝る時間なんてほとんどありませんでした。今はその経験を生かして、週1日は休養することにしています。
もし、管理する立場に興味のある人がいるなら、何から何まで抱え込む必要はないですが、思いのほかたくさんの人を動かさなければならないことを、頭に入れておきましょうね。
え?わたしですか?メリットは多いけど、去年疲れましたから当分遠慮しておきます。