puppet master 傀儡師 第二話 変異とネット民
ネット民は日々のストレス解放や、未開の地へ踏み込む場として、裏の情報をやりとりする場として、政府に干渉されない場として、仮想空間ドヤドヤを利用している。
個人情報保護法が進化して、量子暗号が普及してからは、政府ですら、個人情報にアクセス出来なくなった。
あらゆる妄想や、不確定な情報が垂れ流しになっており、AIが情報の信用度を評価して点数を付けているので、人々はそれを信頼度として利用している。
キラ子は隣のチームがなぜ、次々と成果を挙げるのか考えていた。
ウイルスの遺伝子を解析して、ワクチンを作る事や、薬を作る事、ウイルス自体を無害化するウイルスに作り直して有毒なウイルスに感染させてしまう事など様々な方法が解決策としてあるが、製薬会社であるから、薬を作る事が一番の仕事だ。
ワクチンと違い、薬の保存期間は長い。また、ウイルスの無毒化感染は製薬会社の仕事を奪う。
製薬会社の設立目的は薬を売る事だから病気が増えれば儲かる事になる。会社の設立目的が、病気をなくす事とか、減らす事であれば、薬を作る以外にもウイルスの絶滅という選択肢もありうる。
仮に、誰かが悪い目的でウイルスを変異させてばら撒いた場合、製薬会社は儲かる。
この変異は誰かが発見出来るものなのだろうか?
遺伝子解析でほとんど全ての遺伝子配列が解明されたとはいえ、配列の微小な変化を突然変異と意図的変異に区別できるだろうか?
変異株の変異可能性を把握して、突然変異すら不可能な領域での変異はある程度把握できるが、これから起こるであろう可能性のある変異はAIですら予測困難ではないか?
「ねえみんな、ウイルスの変異って意図的にできると思う?」
「突然どうしたんだタマちゃん」
「熱でもあるんじゃない?熱検出オプションに額を当ててみて」
「こんな真面目なことを聞いたのは初めてだ」
「ドヤドヤでは仕事の話は厳禁ですよ」
「ごめん。やめるわ」
「しかし、聞き捨てならないですね。一般論として聞きましょう」
「コロナウイルスの事か?変異株がたくさん出て今やただの風邪扱いだし、症状も軽くなってきているよな」
「架空の話として聞いて。ある研究所で、ウイルスの薬開発競争をしているが、特定の研究者だけが毎回開発に成功している。ワクチンが出来るのと同時ぐらいに特効薬の製造が始まる。これはなんだか変ではないか?」
「確かに変だな。コロナウイルスの初期では、ワクチン開発が先で、後になって薬が作られた。」
「どうにかして原因を調べたい」
「謎解きは我々に任せなさい」
「まずは名前だな。チーム新宿居酒屋八兵衛とか?」
「長くない?皆んなの名前を取ってドンゴンキンタマとか?」
「卑猥!」「下品!」
「新宿八組は?」
「とりあえずそれでいいよ」
「各自調べて、来週の金曜日の午後11時に集合てのは?」
「了解!」
共通認識として、ウイルスについて学ぼう。
ウイルスは生物では無い可能性が高い。遺伝情報をタンパク質で包んでいる。それ自体では代謝も増殖も出来ないず、宿主に感染して初めて複製される。生物が進化するため、遺伝情報を他の生物に複製するために生み出した存在。牛などの家畜などから感染したものが麻疹などであり、ワクチンなどの普及で、近い将来絶滅する可能性が高い。皮膚の皮下組織にウイルスと似た細胞が多く存在している。悪いとされるウイルスもあるが、善悪は無関係である。
では、次に遺伝情報とは何か?
人間には二万三千程度の遺伝子「ゲノム」があり、ディー・エヌ・エー「デオキシリボ核酸)」という物質で出来ている。ディー・エヌ・エーは細胞の中にある塩基で出来た多くは二重螺旋の鎖で、三十億個程度の超巨大分子であり、4種類の塩基、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)で構成されている。よく似た物質としてRNA(リボ核酸)があり、RNAの塩基も4種類だが、TではなくU(ウラシル)であり、多くは螺旋ではなく一本線でる。インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどはDNAを持たず、RNAを遺伝情報の媒体とする。
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