10. 森林の持続可能な経営 ~国内編~
はじめに
皆さん、こんにちは!
今回の記事を担当します、ミライノラボ学生研究員の鈴木ひとみです。
毎週、SDGsと木材のつながりを考えていくこのnote。
今回は国内における森林の持続的な経営について一緒に考えていきましょう!
森林の役割
森林が様々な役割を果たしているというのはよく耳にしますが、ここで改めてその代表的な機能を考えてみましょう。
[1]
国土の3分の2を森林が占めている日本。そんな日本において、森林の持つこれら機能の影響は他の国よりも大きいと考えられます。また、➀、④の機能の強化はSDGsの13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」というのに繋がりますね。さらに②、③の機能は11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」というのに繋がります。つまり、森林保全はSDGsの達成に直接的に結びつくのです。
日本の森林
日本の森林は大きく分けて自然林と人工林で構成されています。
[2][3]
人工林は人の手によって作られた森林のため、人の手による適切な管理を必要とします。この手入れがされなかった場合、先ほど挙げた森林の機能が弱まると同時に、森林の崩壊を招きます。日本の森林のうち、人工林の占める割合は約4割。つまり、人工林の適切な手入れを行うことが、森林の持続には必要不可欠です。
[4]
注:国有林のうち人工林は4割、民有林のうち人工林は7割 [5]
木材には収穫適齢期があり、この時期に伐採することを主伐といいます。
現在、日本の森林蓄積量において人工林の割合が増加しています。それを踏まえると、人工林の主伐は日本の森林の減少に繋がりかねません。人工林を主伐した跡地に、新たに植林をする再造林を行うことも、森林の持続可能性を高めます。しかし、木材価格の低迷や再造林費用が主伐による収入を倍近く上回ってしまうことから、主伐後の再造林は進んでいないのが現状です。
林業の今
これまでは森林自体の持続について見てきました。
ここからは産業としての視点で持続可能性を探っていきます。
5,241,500000千㎥ [6]
この数字は、2017年における日本の森林資源量を示す森林蓄積量です(その内、人工林は3,308,000千㎥で63%)。
一方で、2017年における日本の総木材需要量は81,722千㎥ [6]。日本の森林の蓄積は毎年1億㎥ずつ増加しているので、数字上は日本における木材需要を国内産の木材で賄うことが可能だと考えます。
また、国内の人工林の半数以上が収穫適齢期である主伐期を迎えています。収穫適齢期になった人工林を産業資源としてうまく活用できれば、日本の林業は高収益・成長産業になる可能性を大いに秘めています。そして、前述のとおり、人工林の主伐は森林保全の観点からも重要です。それゆえに国産材をいかに活用していくかというのは、喫緊の課題なのです。
国産材の持続的な利用
なぜ、国産材の利用が増えないのでしょうか?
その理由の一つとしては、国産材の流通の仕組みがまだ整っていないことが挙げられます。
現在の木材の国内流通は、数多くの中間流通業者が連続的に介在し、諸経費が非常にかかる高コスト構造の状態にあります。
[7]
国産材を普及させ持続的に利用していくためには、国内の流通改革が必要不可欠なのです。
まずは、中間流通業者のあり方を見直すことが必要だと考えます。
中間流通業者のうち、大規模事業者は直接生産者から仕入れを行い、製品化から販売までを担う国産材の販売ルートの確立といった、建築業界に新たな流れを構築していくことができるのではないでしょうか。このような、国内商社的な役割を担う中間流通業者があれば、複雑な販売ルートを簡略化し、そこに係る経費の低コスト化を図れると思います。
また、上記のような中間流通業者が存在した場合、直接的に設計者、建設依頼者に関わることが可能となります。そのため、設計事務所や工務店等の建築業界、そして建設依頼者などのエンドユーザーに対し、直接国産材を売り込むことができ、国産材の普及に向けたアプローチを展開していくことができます。このような販売、広告宣伝を積極的に行い、国産材のブランド化を目指し、国産材が求められるトレンド化を図っていくことが重要なのではないでしょうか。
一方で、小規模事業者は個人向け販売を特化し、国産材を利用した商品開発を行い、インターネットなどを利用した宣伝・販売ルートを確立することが、持続可能な経営の一つの方法になると思います。具体的には、家具、木のおもちゃ、食器などなど。SDGs が掲げられた今、ナチュラル思考のニーズにフィットすると考えられます。
それぞれ消費者のニーズに対応した販売戦略をとることが、国産材を国内に普及させ、森林を利用した持続的な経営に繋がるのではないでしょうか。
おわりに
ここまでお読み頂きありがとうございました!
森林の持続はもちろんのこと、木材に関わる事業者の方々の持続的な経営もSDGsに当てはまります。ぜひ、様々な視点から木材とSDGsのつながりを考えてみてください!
それでは、次回の投稿もお楽しみに!
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引用・参考文献
[1] フォレスト・サポーターズ 豊かな森林の役割
[2] 【資料】間伐が必要な吉野川上村の森
[3] 白神山地ビジターセンター
[4] 私の森.jp 日本の森林分布・面積
[5] 林野庁 森林資源の現況
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h29/attach/pdf/2-3.pdf
林野庁 森林面積・蓄積の推移
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h29/attach/pdf/2-1.pdf
[6] 林野庁 森林・林業統計要覧2019 1国民経済及び森林資源
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/attach/pdf/youran_mokuzi2019-4.pdf
[7] HADATOMOHIRO 数多くの中間流通業者が介在する日本の木材流通構造の課題
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