見出し画像

15. 木材の利用~国内編~


皆さん、お久しぶりです!
ミライノラボ学生研究員の広瀬愛理です!

はじめに


今回は、このシリーズ最後の木材の利用~国内編~として公共建築物等木材利用促進法とその改正を取り上げたいと思います!

そもそもどんな法律?


「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)は、平成22年5月26日に公布され、同年10月1日に施行されました[1]。

この法律の目的はその名の通り、木材の利用を促進するためです。基本方針には、低層の公共建築物の木造化,内装の木質化,木材原料の備品や消耗品の利用など具体的な促進方法が挙げられています。
その結果、公共建築物の床面積ベースの木造率は、法制定時の8.3%から令和元年度には13.8%に上昇しています[1]。

この法律の制定後に整備された建築物の一例はこちらです!

【平成 30 年度に木造で整備を行った公共建築物】

note_mjkc画像

出典:林野庁資料[2]
木を使ったバスの待合室は一段と温もりを感じられそうです!

【平成 30 年度に内装等の木質化を行った公共建築物】

note_mjkc画像2

出典:林野庁資料[2]
やはりこちらも、よく見る裁判所の雰囲気も違ってみえます!

法律の改正


そして今年、この法律が改正されることになりました。
林野庁によるとその背景は2つあります[1]。
①民間建造物の中での、非住宅分野や中高層建造物の木造率の低さ
②2050年のカーボンニュートラルの実現

①非住宅分野や中高層建造物の木造率

以下の表、オレンジ色が非木造を示しています。右側が非住宅のグラフです。
林野庁によると、以下のような解説がなされています[3]。
1~3階建ての低層住宅の木造率は8割
   →住宅が木材の需要、特に国産材の需要にとって重要
4階建て以上の中高層建築及び非住宅建築の木造率は1割以下
   →中高層及び非住宅分野については需要拡大の余地がある

グラフ

出典:林野庁資料[3]

②2050年のカーボンニュートラルの実現

環境省によると、カーボンニュートラルは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します」とされています[4]。

そこで,重要になるのが森林の吸収分をどう増やすのかです。森林研究所によると、「木造住宅の柱や梁などに使われている木材は、樹木として吸収した CO2 をしっかりと蓄えています。もし木造住宅が増えると、その分だけ CO2 貯蔵量が増加するので大気中から CO2 を取り除いたことになります」と解説されています[5]。

画像3

筆者作成


木を初めとする植物は、光合成で空気中から二酸化炭素を取り込みます。そのため、木を燃やさずにそのまま使うと空気中に二酸化炭素を放出せずに済みますね。これは、温室効果ガスの排出量を抑制する方に貢献すると考えられそうです。

そして、新たな木が植えられることによって、その木の葉が光合成を行い、二酸化炭素をさらに吸収することができます。

こうした意義から,林野庁の今回の法改正では基本理念が新設され,森林による二酸化炭素の吸収から木材利用までの循環が強化がうたわれており,さらにその理念に基づく様々な木材利用推進項目が打ち出されています[1]。


●法律の題名、目的の見直し

題名を「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改め、目的について「脱炭素社会の実現に資する」旨を明示する改正を行うとともに、木材利用の促進に関する基本理念を新設します。

●公共建築物から建築物一般への拡大

基本方針等の対象を公共建築物から建築物一般に拡大します。また、建築物における木材利用を進めていくため、国又は地方公共団体と事業者等が建築物木材利用促進協定を締結できるという仕組みを設け、国又は地方公共団体は協定締結事業者等に対して必要な支援を行います。

●木材利用促進本部の設置

政府における推進体制として、農林水産省に、農林水産大臣を本部長、関係大臣(総務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣等)を本部員とする木材利用促進本部を設置し、基本方針の策定等を行います。

●「木材利用促進の日」、「木材利用促進月間」の制定

国民の間に広く木材の利用の促進についての関心と理解を深めるため、漢字の「木」という字が「十」と「八」に分解できることにちなみ、10月8日を「木材利用促進の日」、10月を「木材利用促進月間」として法定化し、国等は普及啓発の取組を行います。


地方創生との関係


地方創生の観点から見ると気になるのは国産材や地域産材の利用の促進です。なぜなら、国産材や地域産材が使われるということは国内林業の従事者の方の仕事が増えるからです。

今回は「公共建築物等の整備に活用可能な補助事業・制度等一覧 (令和3年度事業)」の中から地域産材に関わるものをご紹介します[6]。

画像4

出典:公共建築物等の整備に活用可能な補助事業・制度等一覧(令和3年度事業)より抜粋

改正に伴う、制度の進化にも注目です!

国産材・地域産材を応援する取り組み


補助金以外に、ビジネスの世界でも国産材・地域産材を使う取り組みが行われています。

・WOOD CHANGE | そのひとときから始めよう。木に変えて、変わったのは暮らしとワタシ (楽天)

これは、身の回りのものを木に変える、 我々の暮らしに木を取り入れる、建物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジすることを目的とするプロジェクトで国産木材商品も取り扱っています。

商品を買うだけで、日本の林業を応援することができますね!!

おわりに


今回は、法律の改正に当たってこれまでの結果や改正の背景、地域材を使う取り組みなどをご紹介しました。気候変動に対する取り組みや国内の森林整備が改正によってどのような影響を与えるのか是非見ていきましょう!

このプロジェクトの概要はこちらから~!


参考

[1] 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(改正後:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律), 林野庁


[2] 平成 30 年度 公共建築物における木材の利用の 促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ, 農林水産大臣、国土交通大臣
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001333373.pdf


[3] 令和元年度 森林・林業白書 第1部 第3章 第2節


[4]脱炭素ポータル, 環境省


[5]2050 年までの木材利用による CO2 削減効果シミュレーション, 森林総合研究所 平成 21 年版 研究成果選集, 構造利用研究領域 木質構造居住環境研究室 恒次 祐子 木材特性研究領域 領域長  外崎 真理雄
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2009/documents/p12-13.pdf


[6]公共建築物等の整備に活用可能な補助事業・制度等一覧 (令和3年度事業), 林野庁, 令和3年4月版
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/attach/pdf/index-157.pdf


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集