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【植物基礎】トマトって夏野菜じゃなかったっけ?

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。
一昔前にはトマトは夏の野菜でした。お年寄りの方ではまだ「トマトは夏の野菜」という感覚を持っている方が多いのではないでしょうか。
今ではトマトは年中を通じて販売されているのが当たり前ですが、実際、数十年前まではトマトは間違いなく「夏の野菜」でした。
そもそもトマトは南アメリカのアンデス山脈からメキシコにかけての地域が原産地の植物です。そのため暑さには強いのですが寒さには弱いのです。
ですからトマトの旬は夏だと納得できますところが 近年は1年中スーパーマーケット なので売られています。
夏が旬のトマトが冬に売られているのは誰もが見慣れており、今では当たり前の光景です。

少し栽培を知っている人に「どうしてトマトが冬に採れるのか」と問えば、暖かいハウス温室で栽培されているから、、、という答えがかえってきます。
冬に市販されるトマトが温かいハウス温室で栽培されているのは事実です。ですから この答えが間違っているわけではありません。でもこの答えでは少し物足りません。
というのは冬に暖かいハウス温室で栽培したからといってトマトの果実は勝手に実ってくれるものではないからです。
トマトの果実が実るためにはまず花が咲かなければなりません。多くの植物では花が咲くためには季節によって変化する昼と夜の長さが大切です。
そのため 季節外れに花を咲かせるには、多くの植物の場合、 昼と夜の長さを調整しなければなりません。
例えば菊の花はお祝い事があっても不幸なことがあっても日本では欠かせないものです。
そのために 一年中、供給されなければなりません。菊は本来、秋に花を咲かせる植物ですから、蕾ができるためには 長い夜があることが必要です。
そこで ハウス温室の中の電灯で照明をして、昼と夜の長さを調整して 花が咲く時期を早めたり遅らせたりするのです。

電照菊の栽培

ですから 本来はトマトを温かいハウス温室で栽培したからといって1年中 トマトが花を咲かせるわけではないと考えなければなりません。

ところが、幸いにもトマトは昼と夜の長さに依存して 花を咲かせる植物ではないのです。トマトは多くの植物とは異なり、ある大きさになると昼と夜の長さに関係なく花を咲かせる植物なのです。
そのため 昼と夜の長さを調整しなくても苗を暖かいハウス温室で成長させれば、それだけで花を咲きます。しかし 花が咲いたからといってトマトの実はなりません。

実がなるためにはハチなどが花粉を雌しべに運んでくれなければなりません。とはいえ冬のハウス温室の中にハチなどはいません。
そこでトマトのハウス温室にはセイヨウマルハナバチというハチが人為的に放たれたりします。セイヨウマルハナバチは特定外来種に指定されているため十分な管理が必要です。また在来種のクロマルハナバチもハウス温室での交配に活躍しています。

クロマルハナバチ

これらのハチはミツバチと比べ 温度が低くても活動が活発で花粉を雌しべにつける高い能力を持っています。そのため トマトの果実を実らせるのに役立ちます。

トマトの果実はこのような苦労を克服して一年中 供給されているのですね!


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TEL 080-3396-5399
MAIL:t.ogawa19720117@gmail.com


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