見出し画像

知っておきたい『不正競争防止法の基礎(前編)#5』



■不正競争防止法とは何か

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保して市場経済を正常に機能させることを目的として、「不正競争」を規制するために民法や刑法、知的財産法(特許法・商標法等)等の法律の規制を補完する法律として制定されたものです。
つまり、各法律で手の届かないかゆいところにも手が届くようにした法律です。
私も色々な法律を考えた上で不正競争防止法に基づいて何か言えることはないか?という思考で考えたりしています。

■「不正競争」とは何か


不正競争防止法では、不正競争を10の類型に定義して規制しています。
特に問題になることが多いのは以下の類型です。

(1)周知表示混同惹起行為
他社商品等の名前を自社商品等の名前に使用して、他社商品と自社商品に混同を生じさせる行為は、不正競争として規制されています。

《過去の事例》ソニーが有限会社ウォークマンという名称の会社で衣類等を販売していた会社を訴えた事例があります。また、コメダコーヒーが似たような店舗外観で営業した会社を訴えています。(いずれも訴えられた会社は敗訴)

(2)営業秘密の侵害
窃取等の不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為等は、不正競争として規制されています。

《過去の事例》
・ベネッセの派遣労働者が約3000万件の顧客データを私物スマホにコピーして名簿業者等に開示した事案・東芝のフラッシュメモリに関するデータを提携先の技術者が不正に複製し、韓国のSKハイニックス社に開示した事案
・かっぱ寿司の社長が前職のはま寿司の営業秘密を持ち出したとして逮捕された事案
※  会社の情報が全て「営業秘密」として保護されるということにはなりません。

(3)信用毀損行為
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為は、不正競争として規制されています。

《過去の事例》『はぐくみプラス社』の従業員がイベントでオリゴ糖の含有率についての虚偽の説明を行った。そのことで、同オリゴ糖商品を扱っている『北の達人コーポレーション』の商品が劣っている印象を与えている、と訴訟提起し、信用毀損行為が認められた事例

(4)誤認惹起行為(ごにんじゃっきこうい)
商品・役務又はその広告等に、その原産地、品質・内容等について誤認させるような表示をする行為、またその表示をした商品を譲渡等する行為は、不正競争として規制されています。

《過去の事例》ミートホープ社が豚や鶏などを混ぜて製造したミンチ肉を牛肉100%と表示して取引先に出荷した事例について、商品の品質内容を誤認させたとして誤認惹起行為が認められた事例があります。

■不正競争防止法に違反した場合にどうなるか 

1.民事上の措置
【損害賠償請求】
不正競争によって競合他社に損害が生じた場合には、損害賠償義務が生じます。
上記、北の達人コーポレーションの事例では、はぐくみプラス社に7,000万円を超える損害賠償を認める判決が出ており、東芝の事例では、SKハイニックス社が東芝に330億円を支払う内容の和解となっています。
【差し止め請求】
未然に損害が発生することを防ぐために不正競争の差し止め請求も認められています。
コメダコーヒーの事例では、相手方会社の新規出店の差し止めが認められています。

【信用回復措置請求】
謝罪広告の掲載等の信用回復措置を求めることもできます。

2.刑事上の責任
【営業秘密の侵害】
営業秘密の侵害については、10年以下の懲役又は2,000万円以下の罰金若しくはその両方が科せられます。
上記東芝の事例では、当該技術者には懲役5年、罰金300万円の有罪判決が出ています。
【営業秘密以外の侵害】
営業秘密の侵害以外の不正競争については、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金若しくはその両方が科せられます。
上記ベネッセの事例では、当該派遣社員には、懲役2年6ヶ月罰金300万円の有罪判決が出ています
【会社の責任】
不正競争に加担した会社も罰則の対象で最高10億円の罰金が科せられることとなります。

------------

不正競争防止法の基本的事項についてお伝えいたしました。
競合他社が不正競争行為を行っている事例は結構あります!
これって不正行為にあたらないのかという疑問等があれば私までご連絡ください。

【未来創造弁護士法人】 www.mirai-law.jp
神奈川県横浜市西区高島1-2-5 横濱ゲートタワー3階
弁護士 野村拓也(神奈川県弁護士会所属)
Mail:nomura@mirai-law.jp
TEL:03-6435-8622

いいなと思ったら応援しよう!