【みらいけんアドベント12/9】「遭難した日」をよく思い出して今を生きる。
今も狭い世間や業界にいるので名前は伏せたい。ネット特にtwitter上では、「正しい」ルールや倫理観があれば人を傷つけていいらしい。だから、場所についても詳しくは書けない。
しかし、匿名なので、恥も外聞もなく思いっきり書く。なるべく読んでくれた人の為になるよう に。
お金稼ぎに飽きていた。生き甲斐もない、恋人もいない。狂ったように山に行って釣りをしていた。淡く死んでもいいやと思って道無き道を登山し、釣りを無心でやっていた。上流にしかいない天然の渓流魚。3時間かけて汗だくで登り、当たりが一回の時もある。いや、2日間通して当たりすら無い時もある。釣れた時のドーパミンが、荒い呼吸の中でも音を立てる。誰もいない沢。熊には二回、イノシシには数え切れないくらいあった。
遭難する前日も釣りに来ていた。
私と遭遇したウリ坊が5、6匹川を渡っていた。嫌な予感がする。奥にいる。お母さんイノシシ(お父さんかもしれないが)が私を睨んでいる。 奇声を上げて、逃げて行った。ウリ坊は置いてけぼり。なんとカワイイ姿だろう。きっとこの光景は一生忘れないと思う。 「ウリ坊はうまい」と聞いていたが、握っていた石は足元に捨てた。
遭難した日のこと。
あれは、2022年の4月頃。珍しいくらいに沢山釣れた。春の気温がちょうど適温になっていたのだと思う。もっと大きい魚が上流にきっといる、今日を逃せば釣れないかもしれない。自分の頭の中での会話。
雪の塊がまだ残る山頂にまで辿り着いた。滝が見える、ここまで来たし、上まで登ってみよう。
雪が解けて道ができている(様に見える)。今思うと、この場所で、滝を登って下った辺り、東西南北の方角を完全に失っていた。釣りに疲れ近道をしようとした。
来た道ではなく、反対側の山を登り始めた。これが第二の過ちだった。 道に迷った。と、頭の中で会話した時に、落とし穴にはまった様に滑落した。私の重さで、雪が下に落ちてそのまま無音で私も落ちた。今思えば、この雪の落とし穴で足を挫いたり、腰をやっていたらこの文書をきっと書けてな いと思う。その場で餓死、息絶えていたと思う。
後に続いて、道中に放置した車の持ち主である私の捜索が始まっていたと思う。そうワイドショーで時々見る光景だ。「どうして遭難なんかするんかな?」「歳と相談して登らないと」 などと、言っていた自分が恥ずかしい。 いや、彼らの何人かは死にに行っているとすら、今は感じる様になった。雪が沢の水と混ざる、着地した足。どっちか忘れたが、一方の膝小僧が少し血が出てい る。なぜか安心した。死ななかったと感じた時に、同時に体が震えた。釣竿は雪の上に残っている。もちろん諦めた。
とにかくこの沢を下ろう。山裾の農地には多分出るはずだ。「死にたくなかったんだ」頭では、ずっとこういう感じの内容が浮かんだ。「ビュン」と大きい魚が岩から逃げて行くのが見えた。竿がないんだった。「(竿がもし)あっても帰るの優先だったか。」と口先で独り言を言った(ように記憶している)。
足がかなり疲れて来た。次はとんでも無いくらい大きい茶色のカエルが群れで見えた。暗くなって来た。農地にはまだ着かない。ビニールハウスの光も全く見えない。焦って来た。滑落した後に安堵して、帰れると思っていたが、夕日が沈みそうだった。全身濡れて、寒さも感じる。水が下流に流れ落ちる音をたどって、ひたすらに下った。早足で歩くと、体温が上がって寒くなくなって来た。コンクリートが見えた。「やっとだ」と感じた。(ように記憶している)
遠くに街灯が見えた。その下に家がある。迷わずインターホンを押す。 「すいません、車がどこに置いたかわからなくて」 おばぁさんがスマホを持って出て来た。 軽トラックに乗せてくれて、車に戻った。「ありがとうございます。」と伝えても、無言だった。 きっと眠たかったのだと思う。 行きに買って半分残ったピザまんが助手席にある。汚い手のまま食べた。エンジンをかけ、ハイビーム点灯で坂道を下る。信号で停止した時に、涙が出た。
2023年に向けて
人間なので、嫌なことが続くと生きる気力がなくなる時が時々ある。上の体験を意識的に思い出してみたい。無理するのではなくて、魚を探すように、生き甲斐を見つけ出す努力を続けようと思います。
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