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第六回 未来をつくるケアマネcafe

令和6年8月21日「これからどうなるケアラー支援」~ダブルケア・ヤングケアラー支援を考える~をテーマに、2名のゲストスピーカーをお迎えしてカフェが開催されました。

【ゲストスピーカー】
室津瞳さん NPO法人 こだまの集い代表
町亞聖さん フリーアナウンサー 元ヤングケアラー

【ダブルケアの現実とその課題】

NPO法人こだまの集い代表、室津瞳さんは、地域におけるダブルケア(育児と介護の両立)の重要性と、その課題について深くお話しくださいました。室津さんが大切にしている「つながる・対話する・伝える」という三つの価値を基盤に、地域包括支援センターと協力し、「Wケアカフェ」を開催しています。このカフェでは、育児と介護をテーマに語り合う場が提供され、参加者は女性が多いものの、男性の参加も徐々に増えているとのことです。

室津さんは、育児と介護が同時に重なる「ダブルケア」の現実を紹介し、その大変さについて語りました。育児は妊娠から大学卒業まで、介護は気にかける時からお看取りまで続く長期的なものです。特に、晩婚化が進む中で、子育てと親の介護が同時期に重なるケースが増えており、社会全体での理解と支援がますます求められています。ダブルケアラーの平均年齢は39.6歳で、30代から50代の多くがこの状況に直面しているといいます。

ダブルケアラーが抱える主な課題には、マルチタスクによるストレスや、子育てと介護のジレンマがあります。仕事、子育て、介護といった多重の役割をこなさなければならないため、精神的・身体的な負担が大きいのが現状です。介護に先に目を向けることで、子育てにも向き合う余裕が生まれるとの経験から、ケアマネジャーや地域の支援が重要であると室津さんは強調しています。

【ヤングケアラーの現実と支援の必要性】

一方、町亞聖さんは、ヤングケアラーとしての経験を通じて、その課題についてお話しくださいました。町さんは18歳から母親の介護を担い、家族を支える日々を送っていた経験があります。

ヤングケアラーが直面する問題としては、自己認識の欠如や、同年代の友人に相談しにくいという状況が挙げられます。多くのヤングケアラーは介護保険制度の対象外であり、自分の状況を言葉にすることも難しいという現実があります。

町さんは、特に「友人に相談できない」「同情されたくない」という感情を抱えていたことを述べ、ヤングケアラーへの支援の重要性を強調しました。埼玉県では早期にヤングケアラーを含んだケアラー支援条例が制定されましたが、支援体制はまだ十分とはいえません。町さんは、バリアフリーの概念が浸透する前に困難を乗り越えた経験から、環境整備と支援の重要性を訴えています。 

【質疑応答と今後の展望】

ヤングケアラーにまつわることでは、働いている親の代わりに大学生が介護を担い、親が共働きで不在のため、大学と介護を両立し、ケアマネジャーがプランにその状況を組み込むことがあるといいます。キーパーソンが親ではなく、大学生のお孫さんである、という点をしっかり認識することが重要です。世田谷区では、ヤングケアラー支援マニュアルをクラウドファンディングで作成しており、このマニュアルはケアマネジャーを中心に作られました。たとえば、中学生の子どもが認知症のおばあちゃんにどう接すればよいか悩んでいたケースでは、ケアマネジャーがその悩みに気づき、認知症について説明し、子どもをサポートすることができました。町さんは、家族の悩み事を聞くこともケアマネジャーの重要な役割であり、家庭にいる子どもにも目を向けていくことが大切だと強調しています。また、町さんはケアマネジャーをソーシャルワーカーとして位置づけ、ケアの必要性を証明し、その対価を得られる仕組みを提言しています。

一方で、介護について会社に相談しにくい風潮があることも指摘されました。勇気を出して実情を相談しても、上司に介護の経験がないために理解が得られず、口をつぐんでしまうこともあります。特に男性の場合、就労を続けることに対して危機感を感じることが多く、経営者や管理者が話しやすい風土を築くことが求められています。 

今回の講演を通じて、ダブルケアやヤングケアラーへの理解と支援の重要性が再認識されました。室津さんと町さんの体験を通じて得られた知見は、地域社会全体での支援がより充実し、困難に直面する人々が少しでも楽になる社会の実現を目指すための大切な一歩となりました。今後もこうした取り組みが続き、より良い社会が実現することを期待しています。

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記事執筆 黒澤 智尚
病院、在宅医療現場にて、計6年の医療ソーシャルワーカーの経験から、在宅を支えるケアに魅力を感じる。デザインスクールがきっかけで介護の世界へ。3年の現場経験を得て、小規模多機能ホームゆかい西野を札幌市で開設し、今に至る。 現在、kaigoカフェイナンクル(アイヌ語で幸あれ)も運営している。映画、漫画、アニメで物語に触れるのが好き 

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