日銀の国債保有、初の5割超え 資金循環統計9月末~金利上昇は必至~【日経新聞をより深く】
1.日銀の国債保有、初の5割超え
日銀の国債保有比率が時価ベースで50%を超えました。日銀が国債購入を続けるのは「イールドカーブコントロール」の為です。
日銀が国債を買い続けるため、長期金利は0.25%近辺で安定して推移しているわけですが、一方で日銀の金融政策の修正観測を背景に海外勢による国債の売り圧力は高まっています。日銀は4月以降、金利上昇圧力に対抗するため国債を0.25%で無制限に買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を毎日実施しています。そして、とうとう12月1日に「ここまで来たか」という事態となりました。
12月1日に実施された財務省の入札で発行された直後の新発10年国債(368回債)が日銀によって大量に吸収されました。発行額2.8兆円のおよそ半分に当たる1.5兆円の10年債が1日も市場に残らず、日銀が買い取ったと思われます。これまで日銀が発行された国債をその日のうちに買い入れたことはありませんでした。
財政法5条では日銀が財務省から直接国債を買い入れることが禁止されています。今回、入札と同時に発行された銘柄の国債を日銀が買い入れたことで、直接引き受けに限りなく近づいてしまいました。
2.国債の買い手がいなくなる
海外勢が売り圧力を強めているだけでなく、国内勢も日銀が政策修正に動いた際に含み損が拡大することを恐れ始めています。
日銀は上昇圧力がかかっている金利を引き下げるために国債を購入しています。では、なぜ、金利に上昇圧力がかかっているのでしょうか。それは、将来の金利が現在より高くなると予想されているからです。
市場参加者は現在の金利は低すぎるので、いずれ軌道修正して正常な金利に戻っていくと考えています。これは、金利が上昇して、国債価格が下落することを意味します。そうすると、現在の高い価格で国債を購入すれば、損失を被ることになります。すると、国債の買い手がいなくなっていきます。
そして、買い手のいなくなった国債は価格が下落します。それは金利上昇を意味します。
3.金利は既に上昇している
10年より長期の国債利回りはコントロールされていないので、市場の需給により上昇しています。
10年物国債金利は0.25%を上限に日銀のイールドカーブコントロールでそれ以上上がらない状態となっています。
イールドカーブコントロールの対象となっていない長期債はすでに高い金利を払わざるを得なくなっています。つまり、実体的には長期金利はすでに上昇しているのです。
金利が上昇し、国債価格が下落すれば、保有者に評価損が発生します。それは、日銀だけではありません。民間の金融機関でも発生します。民間の金融機関でも日銀と同程度の評価損が発生する可能性があります。
日銀の場合には、保有国債を簿価で計上しているので評価損は含み損にとどまります。しかし、民間の金融機関の場合には、国債を時価で計上しています。そのため、評価損が発生すれば、資産額が減少することになります。この場合、金融機関によっては、債務超過に陥るかもしれません。
さらに金利が上昇すれば、企業の借入コストも上昇し、住宅ローン金利も上昇します。そうなれば、住宅価格、特にバブルと思われるマンション価格も下落します。
金利が本格的に上昇すれば、日本経済の様子も一変するでしょう。その時期は、来年4月の新日銀総裁が誕生するときかもしれません。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】