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「食糧主権」について考える

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https://www.flickr.com/photos/j-kwan/9143581866/


今月、4年ぶりにハンガリーで開催されたバラトングループの合宿に参加してきました。

バラトングループとは、『成長の限界』の研究・執筆者であるデニス・メドウス、ドネラ・メドウズが1982年に始めたグループで、システム・ダイナミクスや持続可能性の研究者・実践家ら、世界中に300~400人メンバーがいます。
http://www.balatongroup.org/

ふだんはメーリングリストで情報・意見交換をし、共同プロジェクトを進めています・毎年9月には、数十カ国から参加する50人限定でハンガリーのバラトン湖畔で合宿を行い、時代の少し先をゆくテーマについて、学び、議論します。メンバーはここでの学びや、ここで構想・連携して着手した共同プロジェクトなどを各国に持ち帰って、それぞれの研究や活動に活かします。

こちらに17分のバラトングループ・合宿の紹介ビデオがあります。英語ですが、メンバーや合宿のようすなど、見ていただくことができます。(7:50ぐらいから、私もちょこっと登場します)https://vimeo.com/51860396

バラトン・メンバーは完全招待制で、合宿にゲストスピーカーまたはフェローに選ばれて参加した人がメンバーになります。合宿は50人限定なので、メンバーの中から選ばれての参加となります。今回は23カ国から42名ほどの参加者で開催されました。

今年のメインテーマは「食糧システム」でした。グローバルな状況、各国の取り組みなど、さまざまな発表とディスカションが繰り広げられました。初日にセネガルからの参加者が「食糧主権(Food Sovereignty)という言葉を知っていますか?」といって話してくれたことが今も心に残っています。共有の許可を得たので、お伝えしたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

今回ご紹介したいのは、ある国の食糧システムの大きな変化についてです。そして、この変化は、この国が食糧主権を失うという結果に終わりました。

これは、セネガルの話です。セネガルでは、独立前夜(1960年)まで、キビ、トウモロコシ、キャッサバなどが、都市部でも農村部でも、人々の食糧の基礎でした。キビ(クスクス)、トウモロコシ、キャッサバは主食として、国内で生産されていました。

ところが、植民地時代のことです。セネガルに鉄道が敷かれることになりました。鉄道を敷設するには多数の労働者が必要になります。働く人たちに食べ物を供給しなくてはなりません。もともとの主食であったキビを食べるためには、3~4工程が必要で、それぞれに時間がかかります。

そんなに時間をかけてはいられないと、植民地を支配していた人たちは、「より簡単に調理できて、素早く食べられるものを」ということで、コメを使うことにしました。お米なら、炊けばすぐに食べられますから。でもセネガルではコメは作っていません。そこで、アジアの他の植民地から輸入することにしたのです。

この結果、セネガルは輸入米に頼る構造となっていき、コメに加えて、小麦粉のパンなども主食として入ってくるようになりました。セネガルは徐々に食糧主権を失ってしまったのです。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~

「食糧主権」・・・考えさせられますね。

幸せ経済社会研究所のキーワードでも紹介しています。
https://www.ishes.org/keywords/2016/kwd_id001982.html

「自分たちが食べるものの生産・流通に関わることは、他人・他国に牛耳られるのではなく、自分たちで決め、コントロールできるようになっているべき!」 ということですね。

通常、この言葉は「国」などの単位で使われることが多いですが、「自分が食べるものは、自分で決め、コントロールする」という意味では、個人のレベルでも「食糧主権」を考えることができますね。そして、権利だけでなく、「自分が食べるものの生産・流通その他社会全体への影響は、自分の責任として考える」という側面も考えられます。

先週、訳者の小野寺愛さんをお迎えして開催した読書会では、『スローフード宣言』を取り上げ、「どういう食べ物を食べるかは、栄養だけでなく、食べる人の価値観や人となりを形作っていく」という著者のメッセージに耳を傾けました。少しだけ本書から引用します。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

ファストフード店で、またはファストフード的な方法で食事をすれば、栄養バランスを欠いた食事だけでなく、無意識のうちにファストフード文化の価値観をも飲み込むことになります。食べ物がそうであるように、価値観もまた自分の一部になります。

そして、ひとたび価値観が自分のものとなれば、自分自身が変わりはじめます。物の見方や嗜好、倫理観、考えかたもすべて変わっていきます。ファストフード文化によってある種の欲求と渇望が自分に組み込まれても、潜在意識の中で起こることだから気がつきません。気づかなくても、自分の世界は摂取した価値観を反映するようになり、そのうち、その価値観が真実だと思うようになります。

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

私たちには1日2回も3回も選ぶチャンスがある!ということですよね。次の食事のとき、「この素材はどこから来たのだろう? この料理はどうやって作られたのだろう? これは自分にどういう価値観をもたらすものなのだろう?」と、ちらと考えてみませんか。

今回の読書会、参加できなくても、音声ファイルとスライド資料で内容を知り、考えてみることができます。よろしければぜひ! 小野寺さんの素敵なメッセージもぜひ。

【音声受講受付中】幸せと経済と社会について考えるオンライン読書会 『スローフード宣言』を読む
https://www.ishes.org/news/2024/inws_id003575.html

また、こちらも関連情報です。ぜひご覧ください。
【データを読む】私達の食べ物はどこで生産されているのか
https://www.es-inc.jp/graphs/2024/grh_id012917.html

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