子どもの肥満の治し方(3)
第3回 食事療法の工夫 ~無理なく、親子で楽しく取り組む方法~
肥満解消の食事療法は、「減らすこと」だけを考えると続けるのが難しくなります。特に子どもの場合は大事な成長期でもあり、やたらと減らせば良いものではありません。ここでは、子どもの健やかな成長を支えながら、無理なく実践できる食事療法の工夫をご紹介します。
1. 食事の「質」を整える
食事療法の基本は、カロリーだけでなく「何を食べるか」を見直すことです。栄養バランスを考えた食事を準備するだけで、子どもの健康に大きな違いが生まれます。(カロリーについては下に公的資料を付けておきます。)
おすすめの食品
野菜:ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、先に食べると満腹感が増す(例:キャベツ、ブロッコリー、人参)
良質なたんぱく質:骨や筋肉をつくる(例:鶏むね肉、豆腐、卵)•••肉や魚は片手の平サイズが適量です。
炭水化物:運動や勉強のための大切なエネルギー源(例:ごはん、パン、パスタ)
避けたい食品
清涼飲料水やジュース:果汁100%ジュースでさえ角砂糖12〜15個分の砂糖が含まれているので要注意
お菓子類:ポテトチップスやチョコレートは同じグラム数の比較で、ご飯の3倍以上のカロリーがあります。
油もの:エビフライは同じグラム数のエビより約3倍のカロリーがあります。
2. 食事の「時間」と「ペース」を意識する
小児肥満では早食いの子が多いことが分かっています。「ゆっくり噛んで食べる」ことを習慣づけることで、満腹中枢が刺激され、自然に食べ過ぎを防ぐことができます。
ゆっくり食べるための工夫
一口ごとに20回(または30回)噛んでから飲み込みこむ。
口の中で噛んでいる間は、箸やスプーンを置く。
家族全員で「ゆっくり食べる競争」をするなど、ゲーム感覚で楽しむ。
食事の時間を決める
1回の食事に20~30分以上をかけるよう意識しましょう。急いで食べると、満腹感を感じる前に必要以上に食べてしまうことがあります。
3. 食卓を「楽しい場所」に
食事療法を成功させるには、食卓を家族みんなが楽しめる場所にすることが大切です。
食卓を一家だんらんの場所にする
食事中はテレビやデバイスのスイッチを切り、家族で「おいしいね」と味わって食べる方が、食べ過ぎになりません。ルールはポジティブに伝える
「これを食べてはいけない」ではなく、「これを食べると元気になれるよ」という言葉かけを心がけましょう。家族全員で同じメニューを食べる
子どもだけが制限を受けていると感じると、モチベーションが下がります。家族全員で健康的な食事を楽しむことで、無理なく続けられる環境が作れます。
4. 成功を祝う
小さな目標を設定し、それを達成したら一緒に喜びましょう。
「今日は野菜をたくさん食べられたね!すごいよ!」
「1週間ジュースを我慢できたから、今度公園で特別なピクニックをしよう!」
最後に
食事療法は、決して子どもに負担を強いるものではなく、家族みんなで健康的な食生活を楽しむ方法です。「ゆっくり食べる」などの小さな工夫を取り入れることで、やがて大きな変化が生まれます。親の工夫とサポート次第で、子どもも自然に健康的な選択をするようになります。
次回は、「運動療法」について書き留めます。
著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。現在は、介護老人保健施設リハビリサポートひうみの医師として、また佐世保中央病院小児科の非常勤医師として勤務しています。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました