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子どもの肥満の治し方(5)

子ども特有の注意点〜子どもは小さな大人ではない〜

子どもがやせるために食事療法、運動療法、行動療法を実践する上で、大人と同様にはしてはいけない事がいくつかあります。今回は、子ども特有の注意点について解説します。


子どもは自立していない

当たり前ですが、子どもは能力的にも社会的、経済的にも自立していません。親や他の保護者の養育を受けて生活していますから、一人暮らしの独身青年がやるような気ままなダイエットはできませんし、するべきでもありません。食事療法を行うための食材の準備や調理、運動療法をするための運動靴などの準備、行動療法を始めるための筆記用具に至るまで、親や他の保護者の協力なしには何も始まりません。また、兄弟がいる場合に、肥満の子どもだけが不満をためないように、反対に甘やかされないようにもしなければなりません。「この子は太ってて困っているのに、下の子は食べなくてやせっぽちで心配」などという事もよくあります。子どもの肥満解消の成功は、言いにくいのですが、親御さん次第だったりするのです。


時代が違う

これも当たり前ですが、親が育った頃とは時代が違います。お父さん、お母さんが子どもの頃、今みたいにどこにでもコンビニがあって、いつでも美味しいもの(スナック菓子どころかドーナツやフライドチキンまで!)が手軽に手に入ったでしょうか? ジュースやアイスクリームのサイズは今みたいに大きかったですか? 小学生がインターネットを使っていましたか? 今の子どもたちに比べたら、外で遊ぶ時間が長かったのではありませんか? 昔と違うのは食事や運動の環境だけではありません。今の子どもたちは忙しいです。学校が終わったら部活動かスポーツクラブ、それが終わったら学習塾、なんて子はたくさんいます。その結果、夕食の時間が遅く、早食いが習慣化し、寝る時間が遅くなって朝に弱く、朝ごはんが食べられず、太りやすい体が作られていきます。


子どもは成長する

成長することは子どもの最大の特徴です。大人にとって「やせる」=「体重をが減る」ことですが、子どもにとってはそうではありません。下の図は、肥満度判定曲線と言って、横軸の身長と縦軸の体重の組み合わせで肥満度がおよそ何%になるのかがわかるグラフです(学校検診で見ている肥満度はもっと詳しくて、年齢も
含めて判定します)。矢印を見てください。身長140cm、体重50kgの男の子は肥満度50%の高度肥満であることがわかります(矢印の始点)。この子の場合、体重を減らさなくても身長が152cmになるまで今の体重を増えないように維持したら、肥満度が20%を割り込んで(矢印の終点)肥満ではなくなることが分かります。特に身長が伸びきっていない年齢の子どもに強い食事制限をやると、身長の伸びまで悪くなりますから、「体重を減らす」やり方では、健康的とは言えない場合があるわけです。

「学童用肥満度判定曲線(男子用)」日本小児内分泌学会ホームページから

最後に

今回は、肥満を治す上での子ども特有の注意点について解説しました。親子で取り組む上での参考にしていただけたら嬉しいです。次回は、子どもの肥満の何が問題なのか? について書き留めます。


著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。現在は、長崎県佐世保市にある、介護老人保健施設リハビリサポートひうみの医師として、また佐世保中央病院小児科の非常勤医師として勤務しています。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。

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