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子どもの肥満の治し方 -6- 〜子どもの肥満・何が問題?〜
「子どもがよく食べ、少々太ったからって何が悪いのか?」
ときどき、お祖父さんやお祖母さんからこんなお声を聞くことがあります。
たしかに、小児期の肥満が健康上の問題として注目されるようになったのは1990年頃からなので、ご高齢の保護者の方には、医者が大袈裟に言っているだけのように感じられるのかもしれません。
ただ、今と数十年前では、小児肥満の程度や頻度も、子どもを取り巻く生活環境もまったく様変わりしていますし、放っておくわけに行かない理由がいくつかあるのです。今回は、子どもの肥満がなぜ問題なのかを、少し掘り下げてみたいと思います。
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日本小児内分泌学会HPから
子どもの肥満がもたらすリスク
子どもの肥満には、以下のような問題があります。
成人肥満に移行する確率が高い
小学校低学年で肥満の子どもの約40%、思春期の肥満児の約70〜80%が、成人期にも肥満を持ち越します【小児内分泌学会HP】。
→ http://jspe.umin.jp/public/himan.html寿命に影響を与える可能性がある
肥満小児504人を40年間追跡したストックホルムの研究では、1割を超える55人が平均41歳で亡くなっていました。
→ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7812410/子どものうちから肥満合併症が始まっている
子どもでも、高インスリン血症、脂質異常症、肝機能障害、高尿酸血症、2型糖尿病、高血圧などが無症状のまま進行していることがあります。薬が使えないケースが多い
小児の肥満合併症に対応する薬は限られており、「薬で治せば良い」という選択肢は少ないのが現状です。外科手術も基本的に選択肢にはならない
成人では肥満治療のために胃腸の手術が行われることもありますが、小児に対しては海外でも一般的ではありません。体への負担や痛みが生じることがある
肥満の子どもは、膝や足首に負担がかかりやすく、関節の痛みや歩き方への悪影響が出ることがあります。心の負担が大きい
周囲から体型について指摘され、自信を失う子どもも少なくありません。服装の選択肢が限られることがストレスになる場合もあります。楽しみが少ないことも
運動が苦手だったり、発達特性によって食べること以外の楽しみを見つけにくい子どもの健康を害している場合もあります。
肥満の子どもを見守る大人の皆さんへ
小児肥満は、一見すると、ただの「体格の違い」に見えるかもしれません。ですが、その裏には上記のような多くのリスクが隠れています。子どもが健やかに成長するためには、家族や大人の理解と協力が欠かせません。どうか、子どもの肥満が単なる「体格の違い」ではないことをご理解いただければと思います。
次回は「お手伝いと運動療法」について、書き留めます。子どもの肥満解消に役立つ日常のちょっとした工夫を一緒に考えていきましょう。
著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。