
子どもの肥満の治し方 -7- 〜お手伝いと運動療法〜
運動療法には、単にエネルギー(カロリー)を消費するだけでなく、健康や心理面にもさまざまな良い効果をもたらすことは、以前(第4回)述べました。今回は、運動療法のひとつとして「お手伝い」にスポットを当てます。
お手伝いが運動療法になる?
肥満改善における運動療法の効果は、多くの研究で明らかにされています。有酸素運動やレジスタンス運動(筋力トレーニング)が肥満改善に役立つことは確かです。ただし、これらの研究で効果があったのは、「決められた運動をしっかりと続けた人たち」です。現実問題として、すべての子どもが指導された通りに運動を続けられるわけではありません。診察室で現実に肥満のお子さんたちと向き合っている立場では、もう一工夫が必要になります。
これは肥満だけでなく、生活習慣病全般に関わる共通の課題でもあります。
日常の活動量を増やす「お手伝い」のススメ
私たちの病院では、外来で小児肥満症の子どもたちに理学療法士が運動指導を行っていました(この取り組みは残念ながらコロナ禍で中断されましたが...)。運動だけでなく、日常生活で活動量を増やす方法として「家事のお手伝い」を積極的に勧めていました。
その結果、1年後には家事手伝いを続けていた子どもが53%。逆に運動もお手伝いもしなかった子どもはわずか17%でした。
お手伝いで期待できる効果
「お手伝い」といっても、ただの軽作業と侮れません。以下のように、意外とエネルギーを消費します。
掃除機かけ:全身運動になり、10分間で約30kcal消費(体重50kgの場合)
雑巾がけ:特に全身の筋肉を使い、10分間で35〜50kcal消費(体重50kgの場合)
お風呂掃除:雑巾がけと同じく、10分間で35〜50kcal消費(体重50kgの場合)
たかが10分かもしれませんが、続けることで効果は積み重なります。
お手伝いのメリット
家事のお手伝いには、単なる運動以上のメリットがあります。
家族の協力が得られやすい
活動的な生活習慣が身につく
家族から褒められ、自己肯定感が高まる
天候に左右されず続けられる
家がきれいになり、気分が良くなる
特に「褒められる」という経験は、子どもにとって大きなモチベーションになります。
参考図書:

最後に
診察室で保護者の方とお話ししていると、「うちの子は家でゴロゴロしてばかりで...」という声をよく耳にします。もちろん、肥満の原因はそれだけではありませんが、「お手伝いができる子」は、カロリーを消費するだけでなく、よく褒められて幸せな子に育つように思います。
次回は、「子どもの肥満で現れやすい検査の異常」について書き留めます。
著者について
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。
「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。