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子どもの肥満の治し方 -8- 〜子どもの肥満で現れやすい検査の異常〜

「小児肥満って放っておいても大丈夫?」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は、肥満の子どもたちの中には、すでに血液検査に異常が現れているケースも少なくありません。今回は、肥満の子どもに起こりやすい「検査でわかる異常」についてお話しします。


小児科外来でよく検査される内容

肥満の中でも、医学的に治療が必要と判断される肥満は「小児肥満症」と呼ばれます。小児肥満症の診断基準は、日本肥満学会が作成したガイドラインに基づいていて、診断のために次のような検査が行われることが多いです。

  • 肥満度(年齢・性別・身長・体重から計算)

  • 血圧

  • ウエスト周囲長

  • 自覚症状や身体症状(黒色表皮症など)

  • 血液検査(糖尿病関連・脂質異常・肝機能など)

血液検査でチェックされる項目

  • 血糖値・ヘモグロビンA1c・尿糖(糖尿病の有無)

  • AST・ALT(肝機能)

  • 空腹時インスリン値

  • 総コレステロール・non HDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪

  • 尿酸値

肥満度だけでなく、合併症のリスクを幅広く調べることがポイントです。


小児肥満に伴う健康障害の頻度

では、実際にどれくらいの頻度で異常が見つかるのでしょうか?

日本肥満学会のガイドラインや各種論文によると、以下のようなデータがあります。

  • 高血圧

    • 小学校高学年の一般児童:1%

    • 小学校高学年の肥満児童:3%

    • 中学生の肥満児:5%

  • 2型糖尿病

    • 小学生:年間10万人に0.75〜1.62人

    • 中学生:年間10万人に5.05〜8.32人

    • 発症者の約70〜80%が肥満

  • 脂質異常

    • 東京都小児生活習慣病予防健診受診者の小学4〜5年生の男子:14.42%

    • 同じく小学4〜5年生の女子:17.47%

  • 肝機能障害

    • ALT異常のある肥満小児:約25%

私の外来でのデータ

少しイメージしやすいように、私の外来でのデータも紹介します(図)。

小学4年生から中学3年生までの中等度以上の肥満の子ども72人(男子47人・女子25人)の初診時データです。

  • 高血圧:15%

  • 耐糖能異常(糖尿病予備群):11%

  • 肝機能障害(脂肪肝が多い):56%

  • 高インスリン血症:78%

  • 脂質異常:50%

  • 高尿酸血症:25%

これは、肥満度30%以上の子どもたちを対象にしているため、一般的なデータより頻度が高くなっています。(佐世保市では、学校健診で肥満度30%以上の子どもに精密検査を勧めています。)

小学4年生から中学3年生までの、中等度肥満以上の肥満小児72人(男子47人、女子25人)の初診時の検査データです。2022年のデータなので少し古いかも。

検査の異常は「サイン」

肥満の子どもに現れる検査異常は、体からの「そろそろ生活を見直そうよ」というサインです。一見、元気に見える子どもでも、内側ではすでに健康リスクが始まっていることも少なくありません。ただし、早期に気づいて対処することで、将来の健康を守ることができます。


最後に

今回は、小児肥満症で現れる合併症についての話でした。少し数字が多くなりましたが、肥満が単なる体型の問題ではないことを知っていただければ嬉しいです。

次回は、「現代社会と小児肥満」について、外来で感じたことを書き留めたいと思います。


著者について

山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。


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