知らないと損する!介護保険
こんにちは。
ミライ・イノベーションnote編集部です。
これまで、日本の社会保障制度、とりわけ社会保険の概要や公的医療保険についてお話しました。
また、介護にかかるお金についてはこちらの記事で紹介しています。
今回は、社会保険の1つである介護保険についてお話していきます。
1.介護保険とは
昨今の高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者が増え、介護期間の長期化が問題となっています。さらに少子化・核家族化も相まって親族による介護が難しい状況をふまえ、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みが2000年に創設されました。この制度が、公的介護保険です。
公的介護保険制度は、介護や支援が必要な度合いに応じた様々なサービスが設けられています。また、介護が必要な高齢者の身の回りの世話だけでなく、高齢者の自立を支援することを理念としています。
◆公的介護保険と民間介護保険の違い
介護保険には公的保険とは別に、任意で加入する民間の介護保険もあります。それぞれの違いについても確認しておきましょう。
公的介護保険は、上述のとおり、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みで、40歳以上のすべての人に保険料の支払いが義務付けられています。
一方で、民間の介護保険は、公的介護保険を補う位置づけで、加入するかどうかは任意となります。
公的介護保険は、「介護サービス」を提供するのに対して、民間介護保険は「現金」が直接支給されることが大きな違いです。
2.介護保険の仕組み
介護保険制度は、介護が必要となった高齢者とその家族を社会全体で支えていく仕組みです。公的医療保険と同様に、保険料の支払いが大きな財源となっています。
(1)介護保険料の支払い
介護保険は、40歳から支払い義務が発生します。
年齢や加入先の健康保険によって、支払い方法や介護サービスを利用できる条件が異なります。
40歳~64歳(第2号被保険者)は、健康保険の一部として支払います。
そして、年金支給年齢である65歳(第1号被保険者)からは、健康保険とは切り離されて、「介護保険料」として支払っていくことになります。
保険料の支払いは一生涯続きます。
介護保険料を納付することで、被保険者の資格を得ることができるため、脱退することはできません。
なお、協会けんぽに加入している場合、被保険者本人は介護保険料を支払いますが、40歳以上65歳未満の扶養家族は、介護保険料の支払い義務がありません。これは被保険者本人の介護保険料に、扶養家族の分が含まれて徴収されるためです。
ただし、健康保険組合には特定被保険者という制度があり、被保険者と被扶養者の年齢によっては介護保険料の支払いが必要となります。
(2)介護保険料の計算方法
介護保険料は、年齢や加入先の健康保険により計算方法が異なります。それぞれの場合についてみてみましょう。
①40歳~64歳の場合(第2号被保険者)
第2号被保険者は、加入先の健康保険により計算方法が異なります。
◆個人事業主の場合
所得や世帯の被保険者の数、資産などに応じて、各市区町村が介護保険料を決めます。
◆会社員・公務員の場合
「標準報酬月額」によって介護保険料が決まり、次の計算式により算出されます(介護保険料率は、加入先の健康保険組合により異なる)。
②65歳以上の場合(第1号被保険者)
第1号被保険者の介護保険料は、市区町村によって異なります。
介護保険料は、前年度の所得をもとに算出され、その金額は3年ごとに見直されます。また、各市区町村の条例で決められた基準額をもとに、介護保険料は本人や世帯の所得によって段階的に設定されています。所得が多くなるほど、保険料を多く支払う仕組みになっています。
所得段階の設定は、市区町村によって決めることができ、6段階から15段階と様々ありますが、9段階が標準となっています。
介護保険料は3年に1度改定されていますが、年々値上がり傾向にあります。
第1号被保険者の2018年での介護保険料の全国平均は月額5,869円でしたが、2021年の全国平均は月額6,014円となりました(厚生労働省発表)。
なお、第1号被保険者の介護保険料は、地域格差も拡大しています。下は3,000円台、上は9,000円を超える地域もあり、6,000円以上の差があります。
3.要介護認定と受けられるサービス
さて、本章からは、介護保険で受けられるサービスについて見てみましょう。
介護サービスは誰でも受けられるわけではありません。介護サービスを受けるには、「介護や支援が必要である」と認定を受ける必要があります。
本人あるいはその家族が居住地の市区町村窓口へ申請し、主治医の意見書や認定調査員の調査等を経て、要介護認定が出されるのです。
(1)要介護認定
要支援・要介護の状態の目安
要介護認定は、心身の状態の目安をもとに「要支援1〜2」と「要介護1〜5」の7段階および「自立(非該当)」の項目で分けられています。
「自立」は、日常生活は自分で行うことができる状態で、支援・介護の必要はないと判断されます。
「要支援」は、1~2の2段階で区分します。基本的な日常生活は自分で行えますが一部動作への支援が必要な場合を指します。
「要介護」は、1~5の5段階で区分します。日常生活での部分的もしくは全面的な介助が必要な場合を指します。
要支援や要介護の認定を受けると、介護保険が適用されます。
認定ごとに受けられる介護サービスが異なり、要支援であれば介護予防サービス、要介護であれば介護サービスを利用できます。
このとき、7段階の要介護認定ごとに、1か月あたりの支給限度額が設けられており、限度額内の利用であれば、自己負担額1割(一定以上の所得がある人は2割)で利用ができます。ただし、支給限度額を超えた利用分の費用は、全額自己負担となります。
(2)介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられる支援は、自宅で受けられるものと、施設で受けられるものがあります。
上図のように、自宅や施設を利用して受けるサービスの利用料などは、公的介護保険の適用対象です。
しかし、介護保険はあくまでも、介護費用の負担を軽減するためのものです。そのため、食費や生活費、日用品やおむつ代といった日用雑貨費、通所介護における交通費などは介護保険でまかなうことはできず、全額自己負担となります。
4.仕事と介護を両立するための支援制度
仕事と介護の両立は体力的にも精神的にも大きな負担がかかります。
本章では、仕事と介護を両立するための制度を紹介します。
(1)介護休暇制度
(2)介護休業制度
(3)介護休業給付金
(4)家族介護慰労金
この他にも、企業によっては独自の制度を導入している場合もあります。
なお、会社員や公務員には介護休業制度がありますが、フリーランスや自営業の人は雇用保険の対象外のため、受給できないことに注意が必要です。
5.介護費用負担を軽減させる制度
自己負担割合が1~3割と言っても、年金収入のみで生活する方の場合、数年にわたって必要となる介護費用は大きな出費となることでしょう。
本章では、介護費用負担を軽減させる制度を紹介します。
(1)高額介護サービス費
(2)高額医療・高額介護合算療養費制度
(3)医療費控除
医療費控除については、こちらの記事でくわしく解説しています。
6.さいごに
いかがでしたか?
公的介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みでした。
介護保険料の支払いは、40歳から一生涯続くことに加え、保険料も年々値上がりしています。要介護認定されると公的介護保険を利用できますが、それでも1~3割程度の自己負担が必須です。また、介護費用総額は平均約500万円という試算もあり、それ以上かかることもあり得ます。自身や家族に介護が必要かどうかは予測できないことです。備えあれば憂いなし、必要なお金について介護状態になってから慌てることがないよう、事前に備えをしておくことが大切ですね。
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