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せいかつの軌跡(41)

哲が天然のなめこを発見した。

トモシがお昼寝から起き出した頃、裏山にいた哲が早足で帰ってきた。

哲「天然のなめこ、見つけた!しかも、大量に!採りに行こう!!」

哲とトモシはチェーンソー(トモシのはおもちゃ)、私はナイフとボウルを持って、なめこ採りに出動。

ほとんど手入れされていない裏山はあちこちから木の枝が飛び出している。先頭の哲が切り開いてくれた道を、カサカサ落ち葉を踏みながら進む。一度も抱っこをせがまず、父の背中を追いかけるトモシの姿は何だか頼もしい。
途中で哲の切った枝が倒れて来て、私の頭を直撃した。かなり痛くて、ちょっと泣いた。

それからすぐの場所に、なめこの群生地はあった。倒れた木の幹に、なめこたちがぎゅうぎゅうに身を寄せていた。

ボウルいっぱいに自然の恵みを頂いて、ネギと豆腐を入れたなめこ汁を作った。天然のなめこは肉厚で、旨味がぎゅっと詰まってる。他におかずがいらないくらい、美味しいご馳走。

その夜、哲と口論になった。
落ち着いて後から彼の話を思い出すと、どうやら彼は「夜飲みに行きたい、もっと自分の時間が欲しい」、という欲求を素直に表現・相談出来ず、拗らせているらしかった。そこまで気持ちを汲み取って、「いいよ」と言う余裕が、看病明けの私には無かった。疲れているし、喧嘩は更に疲れる。時間をおいてから、また話そう。


けもの道父の背中を追いかけて
晩秋の影踏みしめる君

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