(育休)第7話:パワーワード「義務化」
男性育休の法改正までのヒストリーを語るマガジン。前回、第6話では、育休を取りたいけど取れない状況と、その原因の多くが職場にあることをお話ししました。
今回の第7話では、その職場を変えるために、そして、世論や議論を喚起するために、あえて使った「義務化」というパワーワードについてお話しします。
(1)「義務化」でロケットスタート!
「男性の育児が当たり前の社会」を目指す戦略については、第4話で紹介しましたが、実は、最初の一里塚(ピーク)に「10/31イベント」と書いたものの、どんなイベントにするのかのイメージを全く持っていませんでした…
しかし、最初のイベントで導火線に火がつかなければ、その後は尻すぼみになってしまうという危機感だけはありました。
そこで、導火線に火をつけロケットスタートを決められるワード、簡単にスルーできないざわつくワードを考えて、イベントのタイトルにつけよう!とメンバーみんなで知恵を絞り出すことに。
それまでイベントやSNSでは、分断を招かないように慎重に言葉選びをしてきたので、「おとなしすぎる」「行儀が良すぎる」と言われることも。そんなmiracoにとっては思い切った決断でしたが、パワーワード「義務化」を投入することに。あとになって振り返ると、この「義務化」は大成功で、後には自民党の議連名にも用いられる等、大きな波を起こしていくことになります。その話は次回に!
(2)#男の産休、義務化されたらどうなる?
2018年10月31日、参議院議員会館で開催したイベント『男の産休、義務化されたらどうなる?~議員&専門家と一緒に考えよう~』は、開催前からSNSで「義務化しないと取れない」「義務化はやりすぎ」と議論が巻き起こります。
企業か?個人か?「義務化」といっても、誰に負わせるのかによって考え方が大きく変わるのですが、SNSでは誰に対する義務化なんてお構いなしに、ああでもない、こうでもない、と様々な意見が噴出。狙って「義務化」を投下したとは言え、想定以上の反響に驚いたものです。
反響渦巻く中で開催したイベントには、平日昼間にも関わらず、50名超の参加者、12名の議員が集まりました。イベントの様子は以下の動画(約1分)、詳細報告は、こちらのmiracoのHPをご覧ください。グラフィックレコーディングなどもご覧いただけます。
(3)議員会館でのイベントの意味
miracoでイベントを開く時、戦略ミーティングで「何を目的に開くのか?」を必ず話し合います。戦略に適っているか?ターゲットとする参加者は?会場は?と。
先述のイベントの狙いは以下の2つ。
1)政治と市民をつなぐ
待機児童問題の取り組みの中で感じたのは、すごく遠い存在だと思っていた国会議員は、案外近くにいて、当事者の話を聴いてくれて、響けば動いてくれる、相手も人間なんだ、ということでした。
政治と市民をつなぎたい。その感覚を参加者にも感じていただきたい。そしてその先に、政治や世の中を変えられるんだと感じた「仲間」を増やしたい。それが1つ目の狙いです。
2)賛同者・協力者を発掘する
コミュニティ・オーガナイジングの手法(第3話参照)では、大きなゴールに到達するための道筋を立て、そのために必要な賛同者や協力者を(抵抗勢力も)具体化して考えていきます。
法律を変えるには、立法府である国会を動かしている国会議員からの賛同が欠かせません。また、行政や政治を動かしていくための世論を盛り上げていくためには、1人でも多くの仲間が必要です。
イベントを通じて活動に共感し、賛同・協力してくれる人を見つけたい。これが2つ目の狙いでした。
この2つの狙いにバッチリの場所として、「議員会館」を会場に選んだわけです。
(4)社会的合意をつくっていく
ロケットスタートを狙ったイベントでは、パワーワード「義務化」を着火剤に、政治家と市民それぞれから絶え間なく意見が飛び出しました。
このイベントで、個人的に最も印象に残ったのは、労働政策の専門家、池田心豪さんの「育休取得率などの数字の話の前に、出産後に母親が動けない時に、ここが父親の出番だという社会的合意をつくっていくことが必要だ」という問題提起でした。
社会的合意をつくってから法律を変えるのか、法律を変えることで社会的合意がつくられていくのか…正解のない問題ですが、ずっと横たわってきた「ジェンダーの壁」や「男性育休の壁」、「ファーストペンギンの屍」を目撃してきた私は、壁や屍を無くすために「まず法律を変えたい!」と思ったのでした。
次回:男性育休義務化議連、発足
今回は、あえて「義務化」というパワーワードを使った狙い、議員会館でイベントを開く狙い、の2つの狙いを中心にお話ししました。
次回、第8話では、この「義務化」が自民党に深く刺さり、法改正へと一気に流れが進むきっかけとなった「男性育休義務化議連」について話します。ぜひお楽しみに。
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(文責:りょうたっち)
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