俳優陣の演技が「すばらしき」世界 #映画感想
予告を見てから、ずーっと気になっていた作品「すばらしき世界」。
でも、重めな内容の感じがしたので、見るのを躊躇っておりました(ダーク系邦画好きのいつもの思考回路)。
見ている最中、「なにが善で悪か」「なにが正しくて間違っているのか」が頭の中でループ。見終わって2日経った今も、その余韻をぐわーんと味わっている。
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主人公は裏社会で生きてきた、社会的には「悪」に見える人。だけど、その世界に足を踏み入れた理由は、親から愛された感覚がない幼少時代の記憶、そして短絡的で素直、正義感が強すぎる故。
そんな彼を見せ物にしようとするメディアも、また「悪」に思えるが、ただ面白がってるだけではなく、それぞれが社会の中で生きるためには仕方なかったりもする。
主人公のような、すぐカッとなる人、クレーム付けてくる人って私も人生で何度か出会っていて、すごく苦手意識がある。きっと、その方々の心理がわからん、と思っているから。
でも、この映画を見ながら、その方々がそうなるまでには、子どもの頃の影響とか、生活環境とか、現在に至るまでの理由や原因はひと言では表せないんだよなぁー。と複雑さを改めて感じた。
こんなに思考がグルグル、モヤモヤ、心がザワザワするのは、俳優陣の演技のリアリティがあるからだと思う。
暴力で解決しようとしたり、じぶんの内側に想いを馳せることなどない単純思考。だけど素直な中学生のままのような二面性を持ち合わせる、主人公を演じる、役所広司。
チョイ役なのにイヤ〜な胸糞メディアの人を演じる、長澤まさみ。
はじめは胸糞メディアかと思いきや、主人公とのふれあいの中で自分と向き合う、その心境の変化を見事に演じている、仲野太賀。
裏社会の人と知りながら、恐れずに主人公にダメなことはダメと伝え、就職できた時には一緒に満面の笑みで喜んであげる。その愛を表現して、私を泣かせてくれた、六角精児。
他にも名俳優人でガッチガチに固めているにも関わらず、それぞれが出過ぎず、絶妙なバランスで映画の中で調和を取っていた。それがすんばらしかった。
※長澤まさみだけは、存在感が大きすぎた感じはしたけど、本人がそれを抑制しようとしていて、たぶんアレが存在感を抑える限界に見えた😂ゆえに長澤まさみの偉大さを見せつけられた(笑)。
わたしが、主人公の近くで住んでいたとして、彼らの周囲の人たちのように積極的に関われるだろうか?いや、きっと「関わらない方がマシ」って距離をしっかり取る。
だから、主人公は、そんな人たちに出会えたことは「すばらしき世界」だったんだと思う。
出所してからの彼の日々は、やるせないこともたくさん経験した。社会での生きづらさ。正直なだけでは生きにくいんだ。
ラスト30分くらいは、映画のクライマックスとしての濃度がすごかった。凝縮。
最後、花を握りしめながら、彼はどんなことを思っただろうか。
いじめている人に、暴力を持ってでも制裁を加えた方が自分らしい人生だった、と思ったのだろうか。救ってあげられなかった彼に、申し訳ない、と思っただろうか。
この世は「すばらしき世界」だ、と思って最期を迎えられたのだろうか。
きっと、やるせないこともたくさんあるけど、救いもあるから。その両面があってこその「すばらしき世界」なんだ。
と、一旦じぶんの中で答えを出した。
はぁー、久しぶりにすっごい美しいバランスの映画を見たー!という満足感!!
俳優陣が最高すぎる。演技がよすぎて。かんぺき!!!
役所さんがすごすぎ。ヴィヴァン以来だけど、何を演じてもナチュラル。かっこよ。色気。
(語彙力不足の心の声、終了)
うーん、パーフェクトデイズも見たいなぁー!