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29.#タツヤを漢に

チームつくばタイトル

2018年、年の瀬。
箱根駅伝の歴史において、後世まで語り継がれるであろう、伝説の動画がyoutubeにアップロードされた。

「第95回箱根駅伝 学生連合チームモチベーションムービー」

制作者は、関東学生連合チームを率いることになった、麗澤(れいたく)大学の山川達也監督である。
2回目の合宿の最終日、山川さんはミーティングでこの動画を選手たちに披露した。

縁あって集った、16人の選手たち。
「箱根を走ることが叶わなかった」他のチームメイト、そして他のたくさんの大学の学生さんたち。
そうした人々の想いの結晶として「関東学生連合チーム」が存在することを、34歳の若き指導者は、映像という「かたち」にして彼らに伝えたのである。

この動画はSNS上で瞬く間に拡散され、全国の駅伝ファンを号泣の渦に巻き込んだ。

うっかり寿司屋で動画を見た方の「悲劇」に至っては、もう私も泣き笑いである。

一人一人がここまで歩んできた道を、全員が共有することではじめて、本当の「チーム」になる。
山川さんが作ったモチベーションムービーには「Our dream(私たちの夢)」が雄弁に語られていた。

このムービーへの感動コメントは数多く寄せられていたが、その中に「どうして筑波大の相馬くんだけ2回紹介されてるのかしら」という素朴な疑問を見つけた時、私はふと思った。
もしかしたら、チーム内でもそんなツッコミが出たのではなかろうか。

「えー、山川さん、なんで相馬だけもう1回なんですかぁ!?」
「1回目の合宿参加してなくて相馬の画像が少ないんだから、これくらいいいだろ!」

そんなたわいもないやり取りが、ムービーの向こうから聞こえてくる気がした。(本当にそんな会話があったどうかは、当時のチームメイトのみ知る…いつか誰か教えてほしい…( ̄▽ ̄;))

山川さんは恐るべき人だ。
このムービーを、きちんとチームの「鎹(かすがい)」として機能するように作っている。
山川さんへの尊敬と畏怖は、翌日にチームのメンバーがSNS上にあげた集合写真を見てさらに強くなった。

私は、山川さん率いるこの「関東学生連合チーム」を応援したい。

読売さんが配るいつもの旗を振って応援するんじゃなく、ちゃんと「関東学生連合チーム」の応援者だとわかるように応援したい。
他の出場大学は、公式グッズとして大学名の入ったタオルなどを販売している。しかし、関東学生連合チームには「チーム」としての応援グッズはない。
突然ひらめいた。

なければ作っちゃえばいいんじゃない?

この年、バーフバリをきっかけに私が飛び込んだ映画ファン界隈は、プロのクリエイターさんをはじめ、モノづくりの好きな人が多かった。
イベント上映の度に応援グッズを自作しては、映画館で出会ったフォロワーさんにあいさつ代わりに配ってくれていた。

中には、コンビニのネットプリントに原稿を登録し、全国のファンが実費で印刷できるようにしてくださっている方もいる。

映画ファンのフォロワさんが作ってる旗をマネして「関東学生連合」の旗を作ろう!
自分が振りたいだけだけど、ネットプリントに登録したら、もしかしたら、筑波大学関係者さんや、そのほかの「関東学生連合チーム」を応援したい人にも届くかもしれない。
モチベーションムービーで盛り上がってる今がチャンスだ!

虚仮(こけ)の一念岩をも通す。
絵心もないのに、パワーポイントと1日格闘。ネットプリントに登録して、コンビニでテストプリントを繰り返すこと数回。突貫ながら、何とかそれらしきモノが完成した。

旗に掲載したハッシュタグ「#タツヤを漢に」は、関東学生連合チームのメンバーが自分たちで考えたスローガンである。
タツヤは今でも十分漢だ。私はそんなことを思いながら、旗を着々と作った。

*****

2019年が明けた。
私の運命を大きく揺るがす、第95回東京箱根間往復大学駅伝競走が始まろうとしている。


>>30.「もう少しの夢」の先へ

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