戦友ラウラ
また、ウクライナのニュースを
こちらでよく、聞くようになりました。
今の職場で働き始めた時、
私よりも1年早く働き始めた、
ウクライナ出身のラウラが、
いました。
180センチほどの高身長で、
小さな顔に長い手足。
モデルのようなスタイル。
愛想が良くなくて、
ツンとしたタイプ。
英語がロシア訛りっぽくて、
多少聞きにくい部分もありましたが、
とにかく、積極的に喋る、喋る。
現地スタッフの話しの中にも
堂々と入っていく姿には、
いつも感心させられました。
威圧的な態度をしたり、
時に、空気を読まず、
人の話しに割り込んだり、
自分の意見を遠慮なく言う彼女を
煙たがる人も多くいました。
彼女と一緒に働くようになり、
仕事を教わるのですが、
ダメ出しばかりされて、
私はどんどん自信をなくしていきました。
小さな失敗をここぞとばかり、
おおごとにして、上の人に言いつけたり、
なんで、いつも私に意地悪をするのだろう?と
悶々とした日々を過ごしたこともありました。
ある日、事件が起きました。
彼女が、一緒に働く仲間たちを
次から次へと上司に告発し、
その仲間たちが上司に呼ばれ、
一人ずつ
面談を受けました。
上司から呼び出された仲間たちは、
ショックで動揺を隠しきれません。
彼女は、上司に告発した日から数週間、
不調を理由に、仕事を休みました。
彼女が仕事に戻った時、
他の部署に配置されていました。
職場では、彼女の悪口ばかりが聞こえて、
雰囲気が悪くなりました。
彼女が任されていた難しい仕事を
他の仲間たちによって、
不当に扱われていたことは、
事実であり、
それでも、
彼女のやり方は極端だと思いつつ、
私はどっちもどっちだと
思いました。
その後、どの部署に行っても、
彼女の評判は悪く、
私は、彼女から嫌なことをされたものの、
同じ外国人として、
立場的には弱い共通点が
あることを感じていました。
彼女に対して、
この職場の中で共に戦う、
戦友のような気持ちが生まれました。
お互いに正規雇用を目指して、
励まし合い、
彼女が3回目の面接で、
正規雇用となった時、
私は、自分のことのように
とても嬉しかったです。
そして、私が1年契約の雇用が取れた時、
彼女も同じく、とても喜んでくれました。
お互いに故郷の話しをしては、
故郷を懐しむ気持ちを、
シェアするようになりました。
彼女には、同じウクライナ人の旦那さんと
娘二人がいて、
こちらに住んで10年が過ぎた頃、
ウクライナに家族で本帰国することを
決めました。
仕事を辞めることは、
数人しか知らせていなかったものの、
私にこっそり、教えてくれました。
10年ぶりに本帰国する彼女は、
不安な気持ちを私に話してくれたことがありました。
きっと、大丈夫よ。
自分の国だもん。
すぐに慣れるって。
私は、そう彼女を励ましました。
それを彼女に伝えた時、
まさか自分までも、本帰国するとは、
思いもよりませんでした。
彼女の仕事の最終日、
仕事が終わると、
周りの目を気にして、
ちょっとためらいましたが、
彼女の部署に行って、
彼女にハグしました。
彼女から、嗚咽が聞こえてきて、
私もじ〜んときてしまいました。
彼女も私のことを、
戦友だと思っていてくれたのかな?
お互いに支え合っていたのかな?
最後に、そんなことに
気がつきました。
ウクライナのニュースを聞くたびに、
彼女のことを思い出しては、
無事を祈ります。
世界平和を祈ります。
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