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相続した空き家の売却時に節税できる特例がある
総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」から引用します。
二次的利用、賃貸用または売却用の住宅を除く長期にわたり不在の住宅などの「その他空き家」がこの30年で約2.6倍に増加しました。
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また、国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」から引用します。
空き家の取得経緯について、「相続」が54.6%ともっとも多くなっています。
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増え続ける空き家に対してはさまざまな政策が講じられています。
そのひとつに、空き家とその敷地を相続などで取得した場合、売却の際に所得税・個人住民税における特例措置があります。
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
どのような内容なのか、どのように活用できるのかについてお話しします。
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1 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」とは
相続または遺贈により取得した被相続人の居住用財産(注1)を売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。
この特例を活用することで、相続した空き家の売却に伴う税負担を軽減できます。
空き家の発生を抑制し、適切な管理を促進するために設けられました。
(注1)「被相続人居住用家屋」または「被相続人居住用家屋の敷地等」
(1)適用期間
2016年4月1日から2027年12月31日までの間に行われた譲渡に適用されます。
(2)活用できるケース
つぎの要件を満たす場合に、この特例を活用できます。
①「被相続人居住用家屋」であること
つぎの要件すべてに該当する必要があります。
・相続の開始の直前まで被相続人が居住していた家屋であること
・1981年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)でないこと
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
なお、被相続人が要介護認定等を受けて死亡する直前まで老人ホームに入所していた場合などは、一定の要件を満たせば該当します。
②「被相続人居住用家屋の敷地等」であること
つぎのいずれかに該当する必要があります。
・相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地であること
・その土地のうえに存する権利であること(たとえば借地権など)
※相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある複数の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合
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【控除の対象となる被相続人居住用家屋】
・主たる被相続人居住用家屋(母屋)のみ
【控除の対象となる被相続人居住用家屋の敷地】
・一団の土地のうち、その土地の面積に母屋の床面積割合を乗じた部分のみ
③譲渡した人が、相続や遺贈(注2)により被相続人居住用家屋とその敷地等の両方を取得した相続人(注3)であること
(注2)死因贈与を含む
(注3)包括受遺者を含む
④つぎの㋐、㋑、㋒のいずれかの譲渡売却をしたこと
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㋐【被相続人居住用家屋を取壊さないで譲渡する場合】
相続や遺贈により取得した被相続人居住用家屋を単独で譲渡すること、
または、
被相続人居住用家屋とともにその敷地等を譲渡すること
ただし、つぎの要件に該当する必要があります。
・相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
・被相続人居住用家屋は、譲渡時において一定の耐震基準を満たすこと
㋑【被相続人居住用家屋の全部を取壊したあとに譲渡する場合】
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊したあとにその敷地等を売ること
ただし、つぎの要件に該当する必要があります。
・被相続人居住用家屋は、相続時から取壊し等のときまで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
・被相続人居住用家屋の敷地等は、
相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと、
かつ、
取壊し等のときから譲渡時まで建物や構築物の敷地の用に供されていないこと
㋒【譲渡後に居住用家屋の取壊しまたは耐震改修を行う場合】
<2024年1月1日以後の譲渡が対象>
相続や遺贈により取得した被相続人居住用家屋を単独で譲渡するか、
または、
被相続人居住用家屋とともにその敷地等を譲渡する場合で、
つぎの要件に該当すること(上記㋐に掲げる譲渡に該当するものを除く)
・相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと
・譲渡時からその譲渡日の属する年の翌年2月15日までの間に、
一定の耐震基準を満たしたこと、
または、
被相続人居住用家屋の全部の取壊し等を行ったこと
従来この特例を適用できなかった、買主が取壊したり耐震基準を満たしたりする場合にも改正により適用できるようになりました。
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⑤相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
⑥譲渡価格が1億円以下であること
譲渡価格の計算には、合算対象期間に行われたつぎのものも含めます。
・この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して譲渡した場合
・その部分をほかの相続人が売却した場合
※1億円の判定における合算対象の範囲
・起算日:相続時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋またはその敷地等を譲渡した日
・最終日:起算日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間
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⑦同一の被相続人から相続や遺贈により取得した被相続人居住用家屋やその敷地等について、この特例の適用を受けていないこと
⑧親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
特別の関係がある人には、つぎのような場合も含まれます。
・生計を一にする親族
・家屋を売ったあとその売った家屋で同居する親族
・内縁関係にある人
・特殊な関係のある法人 など
(3)特例を適用した場合の譲渡所得の計算
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費(譲渡価額 × 5%(注4))- 譲渡費用(除却費用等)- 特別控除3,000万円(注5)
(注4)取得費が不明の場合、譲渡価額の5%で計算
(注5)2024年1月1日以降の譲渡については、3人以上の相続の場合は特別控除の額が2,000万円に引き下げられています。
【具体例】相続した家屋を取壊して、取壊し後の土地を500万円で譲渡した場合
<前提条件>
・1980年建築
・除却費200万円
・被相続人が20年間所有
・取得価額不明
・相続人は1名
①本特例を適用する場合の所得税・個人住民税額
( 500万円 -(500万円 × 5%)- 200万円 - 3,000万円)× 20%= 0円
②本特例がない場合の所得税・個人住民税額
( 500万円 -(500万円 × 5%)- 200万円)× 20% = 55万円
(出所)国土交通省のウェブページを加工
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2 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と併用できる他の特例
この特例は、つぎのいずれかとの併用が可能です。
・「自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」
・「自己居住用財産の買換え等に係る特例措置」
また、この特例は、「相続財産譲渡時の取得費加算特例」と選択適用となります。
さらに、「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」と併用が可能です。
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特例を活用したり併用したりする際には、詳細な条件や要件があります。
具体的な状況に応じて税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。