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最近の葬儀の実情と事前準備の必要性

経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」長期データから引用します。

2023年の葬儀業の売上高は約5,944億円(前年比6.0%増)、取扱件数は約50万件(前年比6.0%増)となりました。
売上高と取扱件数は、2020年にコロナ禍で落ち込んで以降は、いずれも微増傾向にあります。

一方、1件当たりの葬儀費用は微減傾向です。2006年の約152万円をピークに、2020年以降は120万円を割り込んでいます。 
新型コロナの影響により葬儀の規模を縮小する傾向がみられるようになり、アフターコロナでもそのまま続いているようです。
 
コロナ禍で変化した葬儀の実情と、必要な事前準備などについてお話しします。


1 葬儀の種類の多様化


鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」から引用します。
葬儀の種類は、家族葬が50.0%で最多となり、一般葬30.1%、一日葬10.2%、直葬・火葬式9.6%とつづきます。
家族葬は、前回調査(2022年)ではコロナ禍を経て主流になりましたが、前回比で▲5.7%と減少に転じています。
一方、一般葬は前回比+4.2%で、アフターコロナによる若干の持ち直しがみられる結果となりました。
 
本調査結果により、葬儀の多様化が進んでいることがわかります。
ここで葬儀の種類とそれぞれの特徴を整理しておきましょう。
 

(1)一般葬
故人と生前お付き合いのあった人々を広く招待する、伝統的なお葬式です。
規模が大きく、通夜から葬儀式・告別式、火葬まで行われます。
参列者が多く、費用は高額になることが多くなります。

(2)家族葬
家族や親族のみで行う小規模なお葬式です。
内容は一般葬と同一です。
参列者が少なく、費用は少額に抑えられることが多くなります。
 
(3)一日葬
通夜をせずに告別式と火葬を1日で行う葬儀です。
参列者の負担を減らすことができ、費用も安く済みます。
 
(4)直葬・火葬式
通夜と告別式を省いて火葬のみ行うシンプルな葬儀です。
参列者はごく少数で、費用や時間を節約できます。
 
種類別の規模や費用については、つぎの表が参考になります。

(出所)鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」をもとに作成


(5)葬儀のオンライン化(リモート葬儀)
最近は、インターネットを活用して遠隔地から参列できる新しい葬儀形態もあります。コロナ禍で感染リスクを回避する手段として広がりました。
 
①特徴
・実際の葬儀会場からライブ配信される映像を通じて、遠く離れた場所からでも参列できる
・インターネットを使って、葬儀の様子をリアルタイムで視聴できる
・香典や供花、供物などもオンラインで手配・決済できる
 
②メリット
・遠方にいる家族や親戚、高齢者でも負担なく参列できる
・規模の小さい葬儀でも多くの人に見送ってもらえる
・メッセージ機能を使って弔意を伝えることができる
・感染症リスクがない
 
③デメリット
・参列者がインターネットに不慣れだと利用が難しい場合がある
・葬儀会場にカメラを設置することに抵抗がある人もいる
・システムや回線障害が起こる可能性がある

2 葬儀費用の抑制方法と準備


前述のように葬儀費用は、最近の葬儀の小規模化の影響で減少傾向にあります。
とはいえ、数十万円~百数十万円と高額であることに変わりはありません。どのようにして費用を抑えるか、また、どのように準備するのかを考えておくことが大事です。
 
(1)葬儀費用の抑制方法
葬儀費用を抑えるには、つぎのような方法があります。
 
①葬儀の規模を小さくする
葬儀の規模を小さくすればコストを抑えられます。
小さい会場にしたり料理をシンプルにしたりといったことが考えられます。
 
②相見積りを取って比較する
複数の葬儀社から見積りをしてもらい、価格やサービスを比較検討します。
相場感を把握できるとともに、サービスの取捨選択のポイントを見極められます。
 
③葬儀プランを精査して必要最小限にする
葬儀費用の内訳をチェックして、不必要なサービスがないか、数量やグレードが希望に合っているかなどを確認し、取捨選択します。
 
④市民葬・区民葬を利用する
自治体と葬儀社が提携して公営の施設を利用して行う葬儀で、比較的安価に済みます。
ただし、必要最小限の質素なものであり、追加費用が高額になったり、葬儀社を選べなかったりといったデメリットがあります。
 
⑤給付金などを活用する
会社の福利厚生として支給される給付金、自治体や健康保険などから受けられる葬祭料や埋葬費などは忘れずに申請しましょう。
 


(2)葬儀費用の準備
葬儀費用はつぎのような方法であらかじめ準備しておくとよいでしょう。
 
①預貯金、生命保険(死亡保険)など
預貯金を蓄えておいたり、生命保険に加入して死亡保険金を受けられるようにしたりしておくと安心です。
 
②葬儀保険
少額短期保険(ミニ保険)で葬儀費用を積み立てる方法です。
高齢でも加入しやすく、保険料が割安で、医師の診察が不要なケースが多くあります。最大300万円の保険金を受け取れます。
ただし、掛け捨てであり解約返戻金がない点や、生命保険控除の対象外となる点に注意が必要です。
 
③冠婚葬祭互助会
会員となって毎月一定額の掛金を積み立てます。積み立てたお金は葬儀費用に充てることができ、費用も割引となります。互助会に葬儀の相談ができるメリットもあります。
ただし、葬儀社や葬儀場は互助会の提携先に限定され、葬儀のプランが自分の希望に合わない場合もあります。事前に内容を確認してから加入を検討する必要があります。

3 葬儀社の事前選定の必要性


前述したように葬儀費用を抑えるべく相見積りを取ったり葬儀プランを精査したりすると相応の時間が必要になります。
しかし、互助会会員になっていなければ、実際には亡くなってから急いで葬儀社を探すケースが多いのではないでしょうか。
私も病院で看取ってもらった後、ただちに遺体の引き取りを求められてあわてて葬儀社を探した経験があります。
 
また、葬儀社をじっくり検討して選定しなかったためにトラブルになるケースが散見されます。
高額な追加料金を請求されたり、契約内容と違ったサービスを提供されたり、スタッフとの相性が悪かったりといったケースです。
 
 
そこで、事前に葬儀社の目星をつけておけば、つぎのようなメリットがあり安心できます。
 
①安心感と余裕ができ落ち着いて行動できる
事前に目星をつけておくことで、故人が亡くなった際に慌てずに済みます。
落ち着いて葬儀社を選ぶことができ、トラブル回避にもつながります。
 
②複数社の比較が可能になる
複数の葬儀社から相見積りを取り比較することで、料金やサービス内容、対応の質などを検討できます。
信頼できる葬儀社を選ぶためには、複数の選択肢の検討が重要です。
 
③希望に合ったプランを探せる
ご自身や家族の希望に合った葬儀プランを探す時間を十分に確保できます。予算やライフスタイル、価値観などに合った葬儀社を選ぶことができます。
 


 
葬儀社を選ぶ際にはいくつかのポイントがあります。信頼できる葬儀社を選ぶことが重要です。
 
①葬儀の種類とスタイルを決める
まずは一般葬、家族葬、一日葬、直葬など、どのような葬儀を行いたいかを明確にしましょう。
 
②料金の明瞭さと見積りの対応
葬儀費用の明細が記載された見積りを提示してくれる葬儀社を選びましょう。
質問に丁寧に回答してくれることも大事です。
 
③担当者の対応と信頼性
遺族の希望を丁寧に聞いてくれる担当者がいるかを確認しましょう。
家族葬など、利益が少なくてもきちんと対応してくれる葬儀社は安心です。
希望を聞かずに一方的な提案をしたり、契約をせかしたりする葬儀社は避けましょう。
 
④支払い方法、支払期日
支払い方法や支払期日に余裕をもって対応できる葬儀社を選びましょう。
 
葬儀社の評判を調べるには、ホームページを参考にしたり、口コミサイトを利用したりする方法もあります。
 

 
家族や親族とは、事前に葬儀の種類、参列者、予算、葬儀社の見積り内容などについて共有しておくことも必要です。
トラブルなどを避け、慌てることもなく、見送る側も見送られる側も満足できる葬儀ができるために、事前準備は重要なのです。

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