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誰が為に女性活躍推進はある(前編)
女性活躍推進とは、女性がその個性や能力を十分に発揮できる社会を実現するための一連の施策をいいます。
具体的には、企業や組織が、女性が働きやすい環境の整備、男女間の不平等の解消を目指すことです。
女性活躍推進の取り組みは、労働力人口の減少や経済のグローバル化に対応するためにも重要です。女性が活躍できる職場は、結果的に誰もが働きやすい職場となり、企業の持続的な成長にも寄与します。
しかし、一定の成果がある一方で、課題も多くあります。課題を解決し、真に女性が活躍できる社会を実現するためにはどうすればよいのかについて考えていきます。
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1 女性活躍推進のためのこれまでの施策
(1)女性活躍推進法
2016年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が施行されました。
この法律は、企業に対して女性の活躍状況を把握し、行動計画を策定・公表することを義務付けています。
また、優れた取り組みを行っている企業には「えるぼし認定」が与えられます。
(2)すべての女性が輝く社会づくり本部
2014年に設置された「すべての女性が輝く社会づくり本部」は、女性がその希望を実現し、社会で活躍できる環境を整えるための政策を推進しています。
(3)ポジティブ・アクション
企業や組織が自主的に女性の採用や昇進を促進するための取り組みを行う「ポジティブ・アクション」が推奨されています。
これにより、女性の管理職や専門職への進出が促進されています。
(4)ワーク・ライフ・バランスの推進
働き方改革の一環として、ワーク・ライフ・バランスの推進が行われています。
たとえば、育児休業制度の充実や、テレワークの導入が進められています。
(5)男女共同参画基本計画
政府は5年ごとに「男女共同参画基本計画」を策定し、女性の社会進出を支援するための具体的な目標と施策を定めています。
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2 女性活躍推進法の内容
(1)概要
女性活躍推進法は、企業や公共機関に対して、女性が職業生活で活躍できる環境を整えることを義務付けています。
(2)企業の義務
企業にはつぎのような義務があります。
①女性の活躍状況の把握と課題分析
企業は自社の女性の活躍状況を把握し、課題を分析する必要があります。
②行動計画の策定と公表
企業は女性の活躍を推進するための行動計画を策定し、公表することが求められます。
③情報の公表
企業は女性の活躍に関する情報を公表する義務があります。
たとえば、男女の賃金差異などが含まれます。
(3)認定制度
優れた取り組みを行っている企業には「えるぼし」認定が与えられます。
この認定は、女性の活躍推進に関する取り組みが一定の基準を満たしている企業に対して与えられるものです。
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3 「えるぼし認定」の内容
「えるぼし認定」は、女性の活躍推進に向けた取り組みが優れている企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
(1)認定基準
「えるぼし認定」を受けるためには、つぎの5つの評価項目のうち1つ以上の基準を達成する必要があります。
①採用
男女の採用における競争倍率が同程度であること
②継続就業
女性が長期間働き続けられる環境が整っていること
③労働時間等の働き方
柔軟な働き方が可能であること
④管理職比率
管理職に占める女性の割合が一定以上であること
⑤多様なキャリアコース
女性が多様なキャリアパスを選択できること
(2)認定のグレード
「えるぼし認定」には3つのグレードがあり、基準を満たす項目数に応じて星の数が増えます。
さらに、より高い基準を満たす企業には「プラチナえるぼし」認定が与えられます。
(3)メリット
「えるぼし認定」を受けることで、つぎのようなメリットがあります。
①企業イメージの向上
女性が働きやすい企業としてアピールできる。
②人材獲得
優秀な人材を引きつけやすくなる。
③公共調達での優遇
公共調達において優遇措置が受けられる。
④融資の優遇
日本政策金融公庫による低金利融資を利用できる。
(4)申請方法
「えるぼし認定」を受ける手順はつぎのとおりです。
①一般事業主行動計画を策定する。
②行動計画を社内外に公表する。
③行動計画を実行し、女性の活躍に関する情報を公表する。
④えるぼし認定の申請を行う。
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4 女性活躍推進のこれまでの成果
以上の施策により、日本でも徐々に女性の社会進出が進み、いくつかの改善がみられます。
(1)女性の就業率の向上
女性の就業率は着実に向上しています。2022年には、女性の就業率が約70%に達し、過去最高を記録しました。
育児休業制度の充実やテレワークの導入は、女性の就業継続に結びついています。
(2)女性管理職の割合
女性管理職の割合も増加傾向にあります。2022年には、企業の管理職に占める女性の割合が約13%に達しました。
ポジティブ・アクションや女性活躍推進法の影響が大きいと考えられます。
(3)企業の取り組みの増加
多くの企業が女性活躍推進のための行動計画を策定し実施しています。
(4)「えるぼし認定」企業の増加
「えるぼし認定」を受ける企業の数も増加しています。
2022年には、約1,000社が認定を受けており、女性の働きやすい環境づくりが進んでいます。
(5)男女共同参画基本計画の進捗
政府の「男女共同参画基本計画」に基づく施策も進展しています。
たとえば、育児休業の取得率が向上し、男性の育児参加も増加しています。
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5 女性活躍推進の課題
一方で、依然として課題も残っており、さらなる取り組みによる改善が求められます。
(1)ジェンダーギャップ指数
世界経済フォーラム(WEF)が発表する「ジェンダーギャップ指数」では、日本は2021年に156か国中120位と低い順位に位置しています。主要先進国(G7)の中では最下位です。
(2)女性の就業率
日本の女性の就業率は約70%で、OECD諸国の中では中位に位置しています。
(3)非正規雇用の割合
女性の就業率は上がっているものの、非正規雇用の割合が依然として高いです。
正規雇用への転換が進んでいないことが課題となっています。
(4)賃金格差
男女間の賃金格差も依然として大きな課題です。
日本では、同じ職務に就いている場合でも、女性の賃金は男性よりも低い傾向があります。
アイスランドなどの国では、賃金格差を解消するための法律が施行されており、日本も同様の取り組みが必要です。
(5)管理職の割合
女性管理職の割合は増加しているものの、日本の管理職に占める女性の割合は約13%で、他の先進国と比較して低い水準です。
スウェーデンやノルウェーではこの割合が30%以上に達しています。
男性中心の企業文化や育児とキャリアの両立の難しさが障壁となっています。
(6)女性役員の割合
上場企業の女性役員の割合も低く、2021年時点で約10.7%です。ほかの先進国と比較して低い水準です。
(7)育児支援制度
育児休暇制度や柔軟な働き方の導入が進んでいるものの、まだ十分とはいえません。
ドイツやスウェーデンでは、育児休暇の取得が奨励されており、男女ともに育児に参加しやすい環境が整っています。
(8)女性の政治参加
日本の政治分野における女性の参加も低い水準にあります。
ルワンダでは、国会議員の61.3%が女性であるのに対し、日本ではこの割合が非常に低いです。
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後編につづきます。
後編は、つぎのようなことについてお話しします。
6 女性活躍推進の海外の成功事例
7 「えるぼし認定」を受けた企業の成功事例
8 女性活躍推進の取り組みが失敗する要因
9 女性活躍推進が真に効果をもたらすには