個人向け国債の特徴と留意点を理解する
国債とは、国が発行する債券、いわば国の借入金です。国を運営するために必要な資金を調達する手段です。
購入して保有している間は定期的に利子を受け取り、満期時つまり償還時に元本が返ってくるという仕組みになっています。
国債にはさまざまな種類があります。
個人向け国債は、個人でも気軽に購入できるよう、小口化して工夫された投資商品です。比較的リスクが低く安定したリターンが得られるので、安心して投資できる商品として根強い人気があります。低金利時代が長く続きましたが、最近は利率が上昇してきて魅力が増してきています。
個人向け国債とはどのようなものかについてお話しします。
1 個人向け国債とは
(1)種類
個人向け国債は、つぎの3種類があります。
①変動金利型10年満期「変動10」
半年ごとに利率が変動します。満期は10年です。
2024年7月募集分(第172回)の年率は0.72%です。
②固定金利型5年満期「固定5」
満期まで利率が変わりません。満期は5年です。
2024年7月募集分(第160回)の年率は0.61%です。
③固定金利型3年満期「固定3」
満期まで利率が変わりません。満期は3年です。
2024年7月募集分(第170回)の年率は0.38%です。
(2)特徴
個人向け国債にはつぎのような特徴があります。
①元本割れなし
通常の債券と違って、満期になると元本が確実に返済されるため、安心して投資できます。
②国が発行
国が発行しているため信頼性が高いです。
③0.05%(年率)の最低利率保証
経済環境などにより実勢金利が下落した場合でも、年率0.05%の最低利率が保証され、定期的に利子が支払われます。
④1万円から購入可能
小額から投資できます。証券会社、銀行などの金融機関や郵便局に口座を開いて申込むだけで購入できます。また、個人間での譲渡や相続も可能です。
⑤年12回(毎月)発行
毎月発行されるので、購入時期を柔軟に選択できます。
⑥中途換金が1万円から可能
発行後1年を経過した時点から、額面1万円単位での中途換金がいつでも可能です。
(3)購入者の特性
「令和5年度国債広告の効果測定に関する調査報告書」(財務省委託調査)によるとつぎのとおりとなっています。
①年齢層
60代以上が約50%、50代が約22%、40代が約14%で、比較的高い年齢層が多いです。
②商品別の購入比率
変動10年が約75%、固定5年が約17%、固定3年が約8%で、変動10年が人気です。
③購入理由
「国が発行しているので安心だから」が約57%、「身近な金融機関で購入できるから」が約35%となっています。
2 個人向け国債を購入するには
(1)取扱金融機関を調べる
初めて個人向け国債を購入する場合は、証券会社、銀行、郵便局などの金融機関で国債専用の口座を開設します。インターネットで購入できる金融機関もあります。
個人向け国債の取扱金融機関は財務省のホームページで確認できます。
(2)必要書類等を準備する
口座開設にはつぎのようなものが必要です。
①本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
②マイナンバーが確認できる書類
③印鑑
④購入代金
⑤普通預金口座がある場合は、預金通帳、届出印
(3)専用口座を開設して購入
金融機関の窓口またはインターネットで個人向け国債の専用口座を開設し、購入手続きを行います。
国債の購入手数料は無料で、金融機関の担当者が丁寧に説明してくれます。
詳細は各取扱金融機関に問い合わせるとよいでしょう。
3 個人向け国債を購入する際に留意すべきポイント
(1)購入期間の注意
個人向け国債は、購入できる期間(募集期間)が決まっています。たとえば、2024年7月の場合は、7月6日~31日です。この期間内に購入する必要があります。
購入したい場合は、まずは金融機関の窓口で相談してみましょう。財務省や各金融機関のホームページなどで確認することもできます。
(2)金利タイプの選択
変動金利型または固定金利型のいずれかを選択する必要があります。
利率が上昇局面にあるときには変動金利型が有利、下降局面にあるときは固定金利型が有利です。
保有期間の利率変動を予想してどちらが有利か選択することになります。
(3)目的や期間で選ぶ
今後5年以内にお金を使う予定がある場合は、短期である固定金利型のほうがよいでしょう。
当面お金を使う予定がない場合は満期10年を選択してもよいです。ただし、変動金利である点と、次項で述べる中途換金の可能性がある場合には注意が必要です。
(4)中途換金のペナルティ
個人向け国債は発行後1年経過しないと中途換金できません。
中途換金の際には、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれることに注意してください。
つまり、中途換金には、元本割れはないが、直前2回分(1年分)の利子を戻さなければならないというペナルティがあるのです。
4 個人向け国債にも投資リスクがある
(1)利率変動リスク
①変動金利型
半年ごとに利率が見直されます。市場金利が下がると受け取れる利子も減少します。最悪の場合、下限利率の0.05%にまで下がる可能性もあるのです。購入後も利率の動きを常に注視していく必要があります。
②固定金利型
購入時の利率が満期まで適用されます。購入後に市場金利が上がっても、上昇分の利子を受け取ることはできません。
(2)信用リスク (デフォルトリスク)
国債は国が発行しています。発行体である国の財政が滞り、破綻した場合には、元本が返ってこない可能性もゼロではありません。
ただし、日本国債のデフォルトリスクは高くはないとされています。執筆時点では、ムーディーズで「A1」、S&Pで「A+」とされています。
個人向け国債は、一般的にリスクが低い投資とされており、資産運用初心者におすすめといえます。
購入にあたっては、特徴やメリットだけでなく、リスクもよく理解することが大切です。