みらっちセレクション⑤ わりと人生を狂わせがち
今回は中学校編です。
中学時代は、以前書いたことがありますが、私の中では少女小説全盛時代。
そのうえ、どちらかというとアニメに夢中でした。
当時のアニメは、勢いがあったんですよね。
『アニメージュ』という雑誌もありました。
『風の谷のナウシカ』が連載されていた気がします。
特に『超時空要塞マクロス』『北斗の拳』『うる星やつら』はかなりハマっていました。「小白龍~」と一緒に歌ったり、「あたたたたた!」といって遊ぶ人が誰もいませんでしたね。孤独でした。笑
いまでいう、オタクですね……
本来、こういう告白はヤバいですね……
忘れてください。
そういえば、このところ話題の漫画『AKIRA』が中1ごろ書店に並んでいたんですよ。まとめて読んだのは映画版アニメになったころなので、もっとずっと後ですが。あの当時にまさか2021年オリンピックに対して「中止だ中止」なんてコマがあったとは全く知りませんでした。びっくりです。
それと『日出処の天子』も当時の漫画なのですが、私は高校生~大学生のあたりにこの漫画を読んだので、こちらは今回入っていません。
中学生当時、読んでいたのは、前回もご紹介した『あさきゆめみし』『ときめきトゥナイト』『月の夜星の朝』『小麦畑の三等星』『なみだの陸上部』『有閑俱楽部』『キャッツ♥アイ』『うる星やつら』『ハイスクール(3年)奇面組』『伊賀のカバ丸』『エイリアン通り』『荒野の天使ども』『翔んだカップル』『タッチ』などなど。数え上げればきりがないです。
当然、自分で買った本ばかりではなく、友達と貸し借りをしていたんですね。
たぶん『北斗の拳』『キャッツ♥アイ』『3年奇面組』『うる星やつら』のほうがハマリ度は高かったと思うのですが、少女漫画という括りであげるとすればこちら。
『小麦畑の三等星』萩岩睦美
萩岩先生は、絵柄がすごくファンタジックなんですよね。小人とか、妖精とか、ちっちゃな存在を描いたらピカイチだと思います。たぶん『銀曜日のおとぎばなし』のほうが有名だと思うのですが、こちらの『小麦畑の三等星』はSFです。SFというか、設定はSFだけどやっぱりファンタジーなのかな。
主人公の碧穂(あお)は小麦畑で拾われた、おへそのない14歳の少女。頭には奇妙な図形のあざがあり、髪の毛が逆立つといつも小麦の声が聞こえていました。絵にかいたような(いやほんとに絵に描かれているんだけど)典型的エスパー少女。とはいえ14歳までは物覚えが悪いことと発達が遅いこと以外は特別なこともなく暮らしていました。ある時、幼馴染で同級生の康太郎とふざけていて、学校の窓から落ちたときに、不思議な力に護られてかすり傷ひとつ負わなかったのをきっかけに、超能力に目覚めていきます。そんな中、康太郎に成績をからかわれて「あんたなんか死んじゃえばいいのに」と言ってしまいます。まさかそんなことがあるわけがないと(読者も)思うのですが、まさかまさか、本当に康太郎が死んでしまい……
平然とネタバレしてしまうのもなんですので、あらすじはこのあたりまでで。ストーリーはそこまで複雑と言うわけではなく、彼女を利用しようとする組織の人もふわふわした感じに描かれていて、SFとしてはガチとは言えないのですが、とにかくなにがすごいと言って「少女の心理描写」がべらぼうに上手かったのです。衝撃のラストまでぐいぐい惹きこまれた物語の展開も最高に面白かったです。
『有閑俱楽部』一条ゆかり
これはやはり「爽快」の一言に尽きます。富裕層に属し、有名政治家の子息や財閥令嬢などが通う高校の、暇と金を持て余した生徒会が舞台の物語です。主人公は6人で全員美男美女。金と地位にモノを言わせたやりたい放題の豪遊。バッタバッタと悪党を懲らしめつつ、からんだ事件を軒並み解決。優雅な少年少女版水戸黄門です。1986年度、第10回講談社漫画賞少女部門受賞(ずっと集英社で描かれているのになぜ講談社から賞をもらっているのでしょうか…かすかな疑問が。どなたかご存じの方はいらっしゃいませんか~)。
とにかく、ひとりひとりバラエティに富む家庭環境&超個性的なキャラクターが魅力です。一種の群像劇でもあり、時には誰かひとりに焦点があたり主人公となりながら、サザエさん方式で年も取らず、永遠に豪遊し続ける高校生たち(あれ?途中から進学しましたっけ??)。巻き込まれる事件は恋愛・政治・裏社会の抗争・各国政府がらみ・スパイ組織がらみ・オカルト関連と多岐にわたり、それぞれの得意分野を活かして解決していくのが見どころです。特に特筆すべきはオカルト関連。結構多くて、案外普通に怖いので、そのへんの(?)ホラーものよりずっと読みごたえがあります。
最初は『りぼん』で連載していましたが、その後『マーガレット』『コーラス』と掲載紙を移し、数話完結型で、不定期連載で長期連載なので、どこから読んでもOK。『こち亀』のように、いつまでも続けることができる漫画なので、これはある意味、漫画家の夢の漫画、でもあるかもしれません。
私の「推し」は本人若干地味めでご両親が目立ちすぎる(?)松竹梅魅録(しょうちくばいみろく)くん。お父さんは松竹梅時宗(ときむね)さん。警視総監です。最初は拳法の使い手でもある菊正宗清四郎(きくまさむねせいしろう)くんが「推し」だったのですが、なんとなく途中から魅録くん推しに……たぶん、メンバーのひとりである剣菱悠理(けんびしゆうり)さんと婚約したときに(婚約には何か事情があったのですが忘れました)、なんか計算高すぎて意地悪だったからかもしれません。
ちなみに彼ら有閑倶楽部のメンバーの名前はほとんどがお酒の銘柄から取られていることが多いです。
『伊賀野カバ丸』亜月裕
私は、さきほど『奇面組』『うる星やつら』が好きだったということからもお分かりのように、コメディが好きです。無類に好きです。もちろん『こち亀』も好きです。
でもコメディなら全部というわけではなくて、好き嫌いが滅法別れるのも、コメディなのです。ハチャメチャでも下ネタでもいいのですが、どっちかというとパロディ好き(だから『銀魂』が好きなのかも)。
なかでも『伊賀野カバ丸』はドツボでした。大好きだったので、大人になってから大人買いしたのですが、なんと…!
大人になってからは笑えなかった。
ギャグが古くなりすぎていました。ということは、当時は鮮度が高かったのかもしれません。とにかく野球ネタが多かったですね。鮮度が高すぎるものは年月に勝てない……それは残念ながら事実ではないかと思います。
忍者の修行をしているので身体能力はべらぼうに高いけれど、思慮と教養に欠け己の生理的欲望にのみ忠実な主人公、伊賀野カバ丸。いつもなんか食べてます。大好物は焼きそば。幼少期、忍者の末裔であった祖父に食べ物に関して厳しくしつけられたせいで(というか今から考えるとほぼ虐待)、食べる、と言うことに対しての執着が並外れているのです。焼きそばを食べさせてくれるなら何でもします。
その伊賀野カバ丸の巻き起こす騒動の数々と、彼に恋をする学園長の娘・舞とのラブロマンス&コメディ。2000年頃には、彼らの子供の世代の『伊賀野こカバ丸』も連載されていたそうです。私は後から文庫化した時に読みました。ううむ、やはり昔に比べると勢いが……きっと私の少女時代の「笑いの沸点」と年齢を重ねてしまった今の「笑の沸点」の温度が違い過ぎるのでしょう。悲しいかな。
その昔、昨年亡くなられた千葉真一さん率いるジャパンアクションクラブ全盛期に映画化されたことがありますね……観ていないのですが。
どうでもいい情報ですが、亜月裕先生は東大卒です。ごく最近、それを知りました。
ちなみに、大人になってから笑えなかったのは、あんなにハマった『うる星やつら』もでした。結構、悲しいんですよね、せっかく大人買いしたときに笑えないと……
反対に昔は全然だったけれど思わず笑ってしまうのが『パタリロ』です。
番外編 『妖鬼妃伝』美内すずえ
いやもう、これはもう、怖いのなんのって!
トラウマ物のホラーです。
『ガラスの仮面』で有名な美内すずえ先生ですが、短編も、ものすごく上手いんですよね。身内すずえ先生の漫画は、私はだいたいにおいて、よそで大急ぎで立ち読みしたりしているのですが(笑)、本当に大急ぎで読んでるので、当時はまさか、四半世紀以上経っても鮮明に内容を覚えている漫画になるとは思いもしませんでした。
ちょっとだけネタバレしますと…
ある日、主人公が友達とデパートに行くんです。帰ろうとしたら、友達が忘れ物をしたとデパートに戻るのですが、待てど暮らせど帰ってこない。その後、彼女は変わり果ててた姿で発見されます。その謎を解こうと、ふたたびデパートに行く主人公。すると、乗ったエレベータに、あるはずのない地下階が存在していたのです。そこで彼女が見たものは……
怖い。夢に出ます。
絵柄が突拍子もなくグロテスクとか、今の漫画にはそういうのが多いですけど、そういう怖さではないのです。絵柄は少女漫画ですし、別に何とも怖くない。
でも怖いんです。ぞぞぞぞーっと怖いんです。
夜思い出したらトイレに行けない系です。というか、私はいまでもデパートのエレベータにひとりで乗ったときは階のボタンを確認してしまいます。
美内先生の作品は、他にも『女王アレキサンドラ』が印象深いです。盲目だが美しい心を持つ王女アレキサンドラ。こちらも、従姉妹の家で読ませてもらっただけなのに、未だに内容を鮮明に思い出せます。
最後に、『エイリアン通り』のことは、こちらで書いたことがあるので、ご興味のある方はよかったら。