ペーパーバックを作ってみた
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みなさまこんにちは。
みらっちです。
『駐妻記』を電子書籍で発売してから約2週間。
なんと!
これまで7冊もお買い上げいただき、unlimitedのほうでも少しずつ読まれているというレポートが届いております。
買っていただいたかた、読んでいただいたかた、今まさに読んでくださっているかた、本当にありがとうございます!
そして、kindleを読めないご事情があり、noteのマガジンを読んでくださっている方も、ありがとうございます‼
電子書籍をたくさん出版されている方からしてみれば、「7冊なんて」と思われるかと思いますが、私にとっては大変なことです。
ひとりひとりにお会いしてお礼を申し上げたいくらいですが、それはかないませんので、改めてここで、お礼を申し上げます。
先月、偶然ネットでこんな記事を見つけました。
「デビュー作のサイン会に2人しか来なかった」米作家のお話。
アメリカの新人作家さん。
大人向けのファンタジー小説を出版して、サイン会を開いたものの、来たのはたった2人。
それをTwitterに投稿したところ、他の作家さんから「あなただけじゃない。私の時は」というリプライが押し寄せ、しまいにはなんと、あのスティーブン・キングからお返事が!
すごいことです。大御所からのリプライもすごいですが、ちゃんとした経路で出版にこぎつけても、あのスティーブン・キングでさえ、デビューのときは関係のない子供が1人しか立ち寄らなかったとは 。
電子書籍を出版しようと決心して準備していたときだったので、このネットニュースにはとても励まされました。
そりゃあ、そうだよね。
無名の人の本が、突然バカ売れするはずがない(たまにいますけどね、ハリポタのJ・K・ローリングさんみたいに)。
さて、「電子書籍出版」という目標をひとつ果たし、ミッションコンプリートとなったわけですが、実はまだ、目指すべき目標が残っていました。
実家の両親は、「電子書籍を出したんだ」と言っても、そもそも、なんのことかわかりません。
妹のセイラ(仮名)がふたりに上手く説明してくれましたが、
「へえ。すごいねぇ。でもどうやって見るの?私らには読めないねぇ。本にならないの?やっぱり出版と言ったら、”本”だよねぇ」
もちろん、予想はしていました。
両親の時代の人々にとって、「本」と言ったら書店に並ぶような「紙の本」。電子など、実感は皆無です。
それはそうだ。
この反応も人それぞれです。
以前「竹の春」に登場していただいた80代のSさんからは、これを機にkindleに挑戦し、電子書籍で読みましたと連絡をいただきました。
さすが、Sさん。
改めてありがとうございます!
そういうわけで、とにかくなんとしても、私は両親の求める「紙の本」の代わりとして(というか紙の本なんだけど)、Amazonの「ペーパーバック」に挑戦する必要があったのでした。
最初の関門「PDF化」
なんらかの形で紙の本を作りたい場合、原稿のファイル形式は「PDF」であることがほとんどです。
電子書籍を作る時は、「doxc」などのファイルを電子書籍用の「EPUB」にする必要があるとお話しましたが、ペーパーバックを作る時は、「EPUB」を「PDF」に変換する必要があります。
そうなると、「Romancer」は困ったことになるのです。
「Word」をもとに電子書籍を作っている場合は、「Word」に変換機能があるので「PDF」にするのは簡単です。
しかし、「Romancer」を「PDF」化することは簡単にはできません。
ノンノン。
なんと「Romancer」にはコピペ機能そのものがないのです。
確かに、「Word」文書と「Romancer」の文書の内容が同じならば、わざわざ「Word」にコピペしなくても元の「Word」文書があるので大丈夫です。
しかし、校正の最終段階で英数表記などを「Romancer」のエディター画面で整えて文書を作成している場合は、「Word」の元文書とは内容や仕様が変わってしまっています。そうなると、「Word」の元文書をそのままPDF化して使うというわけにはいかなくなります。
でも安心してください。
ファイルの互換ソフトがあれば大丈夫。無料の互換ソフトがネット上にありますので、それを使って互換できます。
ファイル互換ソフトを探す
ネットで検索すると、いくつかの互換ソフトが出てきます。
こだわった点は「完全無料」。笑
もうここまでくると、「みらっちさんはケチ」が定着しそうな勢いですが、そんなことないんですよ。ケースバイケースです。「Romancer」は有料でしかできないことが多いし、EPUB化以外の機能も魅力的だったので、即、有料登録しています。
PDFというとAdobe Acrobat Reader(通称アドビ)が思い浮かびます。
が、これは読み取り以外だとなにかにつけ有料。
フリーソフトでも、Convertio、PDF Converter、PDFCandyなどいろいろあります。
いくつか検討した結果、互換ソフトとしては「老舗」と思われる「Calibre(カリバー)」を使ってみることにしました。
オープンソースの電子書籍管理ツール「Calibre」
「Calibre」は、米国のKovid Goyalさんが開発したソフトだそうです。「200か国以上で使用されており、ボランティアによって12の異なる言語に翻訳されています」という説明がある通り、人々の力で育ってきた感じのフリーソフト。いかにも外国モノといった感じの趣で、最初は使いづらく感じたのですが、だんだん、「Calibre」ができることの凄さがわかってくると、これはいい!と思うようになりました。そうなってくると、「えっ!こんな技術が基本ボランティアでなりたってるの?」と驚きます。
とくに
①縦書きが綺麗にPDF化できる
②表紙(書誌)を付けたり外したり、替えたりできる
③あらゆるファイルに対応していて、編集の自由度が高い
という点が、素晴らしかったです。
Amazonで出版するということ
さて、Amazonのペーパーバックというのは、「オンデマンド印刷」です。もうひとつ、「オフセット印刷」というものがあり、オフセット印刷の出来栄えはまさに書店で売っている本そのもの。
「オフセット印刷」は、ご想像の通り、相当にお金がかかります。そのうえ、1冊だけ、なんてわけにはやっぱり行かない。
「Romancer」でもオフセット印刷があります。念のため「Romancer」さんに問い合わせたところ、こちらでは申し込みは300冊からだそうです。
300冊・・・
「Romancer」さんにも「オンデマンド印刷」サービスがあり、こちらは1冊から可能ということなんですが、やっぱり「オフセット印刷」に比べて「本」感が薄いのです。
また、どちらにしてもデータ制作費用(5~10万円)と印刷製本費用(部数による)がかかるそう。
その点、アマゾンのペーパーバックは、ページ数にもよりますが大変お安くできます。
1冊当たりのコストが安いというよりは、冊数を絞ることでコストを抑える、という作戦なんだと思います(1冊当たりで言ったら、安くはないと思います。私の場合は、約220ページほどで600円ほどでした)。
1冊から印刷でき、注文してから印刷するので、在庫を抱えることがありません。
無駄がないシステムです。
装丁も、「洋書」っぽい仕様。
いちばん驚いたのは、校正刷りを申し込むと、翌日~翌々日には刷り上がったペーパーバックが手元に届くこと(有料です)。
なに、この速さ・・・ゴクリ
でも、私は一度、サイズを間違えて失敗しています。
印刷すると、大きさもフォントもそのままが反映されるので、PDF化するときに、きちんとサイズや形式を整えないといけません。
「Calibre」は、一応日本語対応になっていて、簡単なマニュアルやフォーマットなどはついているものの、私にとっては難しいことも多々ありました。実際は、闇雲に操作しつつやり方を体得していった感じです。
それでもがんばって「これなら!」という原稿を満を持して校正刷りしたのですが・・・
・・・原稿サイズがそもそも間違ってました。
しかし巨大企業は懐が深い。
「お金さえ払ってくれれば校正刷りは何度でも」。
そしてついに、2度目の正直で「ペーパーバック」が完成しました。
さて、まずは自分に1冊、両親に1冊買うので、2冊は(自分に)売れること確定!
「売れる」にカウントすれば、ですが。
私の手元には、校正刷りの失敗作1冊、2度目の校正刷り1冊。
そして通常販売の1冊。
自費出版で、十万、百万単位のお金をかけて何百、何十冊も残るより、マシ、と考えています。ポジティブシンキング。
ペーパーバックにするにあたってのこだわりと後悔
今回こだわってみたのは、「エッセイ」なので小説のようには文字を詰め込まず、上下に空間をもってきて読みやすい紙面にした点です。
それでも実際に校正刷りが来てみないと、うまく配置されているかどうかがわからず、賭けのような感じでした。
最後に、後悔がひとつ。
「Calibre」ではうまくページ番号が打てなかったことです。
やり方があるのだと思いますが、自分の好きなフォントで、好きなサイズでのページ番号に出来ませんでした。
「Word」からそのままPDFにするならページ番号が打てるので、次は「Romancer」を経由せず、「Word」から紙の本を作れるように工夫したいと思います。
その後、アドビだとPDF化後も編集して番号を打つことができるとわかったのですが、残念ながら今回は時間切れ。
そして自分の気力が尽きました・・・
思い切ってページ番号をつけないという選択をしましたが、こればかりは悔しかったです。
次の時は、ぜひともしっかりつけたい、ページ番号。
ペーパーバックの『駐妻記』には、どうぞ栞をご準備くださいね。
とにかくこれで、紙の本も完成!です。
価格問題
最後の問題は価格、でした。
いろいろ研究した結果、悩んだ末に¥1320(税込)にしました。
なんか、ペーパーバックでどうなの、高すぎない?と思いましたが、ロイヤリティ(全体に対して自分の利益)が60%で、そこから印刷コストが引かれ、利益はほとんど残りません。
すでに出版されているかたの本も、ある程度のページ数がある方のものはやはりそんな価格帯になっていました。
高いのか、安いのか。
それは読んでくださった方が感じること、なのかもしれません。
迷走しましたが、いろいろなウェブツールを知ることができて、とても勉強になりました。本当に良い時代になりましたね。
初めて作ったので、いろいろと行き届かなかったこともありますが、「本」という紙という形式になって、やっぱり嬉しかったです。
そして断然、読みやすいです。
なによりも、両親に喜んでもらえるといいなと願いつつ、ペーパーバック、本日発売です。
長々とてんやわんやにつきあっていただき、ありがとうございました。
『駐妻記』の電子とペーパーバック、今後ともよろしくお願いいたします。
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