青い通学路
吹き付ける風、流れる夏の匂い
海岸線沿いの通学路を歩く学生達
その中のひとり、雪代ともき は海岸を眺めながらいつものようにホケーっと歩いていた。
ドンッと背中に強い衝撃とやわらかな感触……感触は置いといて、やわらかな匂いに包まれた。
「おっはよー!ともき」
後ろからともきにおぶさるように衝突してきたのは、梨沙(りさ)先輩だった。
「り、梨沙先輩!? びっくりしたぁ~。てか重いです」
「重いとは、乙女に失礼な」
いや乙女って、というか本当に重い
「重いのは、先輩じゃなくてアンプですよ。ア・ン・プ ! 」
ともきにおぶさった梨沙先輩の腕には、ギターアンプがなぜか握られていた。
「いいでしょ、このアンプ。FENDERだよ。ふぇんだー」
なんでアンプ持ってきてるんだこの人は?
「重いですし、暑いから離れてください」
「えーいいじゃん。女の子に抱きつかれてうれしくないの?」
嬉しい。じゃなくて、このままでは重くて進めない
「いいから離れてください。てか、なんでアンプ持ってきてるんですか?」
「このアンプ昨日届いたんだけど、音いいから学校でもつかいたくてさ
持ってきちゃった。」
「いいから早く学校に行かないと遅刻しますよ」
やっと離れたと思ったら、なぜか僕の手にはアンプが握られていた。
「持って。重いから」
えーーっ、確かに重い。これを持って歩くのは大変だ。
嫌です、と言おうとしたら手を掴まれ
「このままだと遅刻しちゃうから走るよ」
「うぇぇええ!!」
梨沙先輩が自分の手を握り、学校へと走り出す。
「あぶないですよ、梨沙先輩」
「いいから走る。行くよ!!」
夏の風に、まじるやわらかな匂い。
先輩に手をひかれ僕は学校へと走る。
重いアンプを持ちながら……重いなぁ
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