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before還暦diary 川越日帰り旅の巻    その5 最終章!

私の推理によれば、中院の歴史についての流暢な説明や、台本があるかのようなトークっぷりから鑑みて、金蔵は毎日のように中院近辺に出没し、これはと狙いをつけた女性観光客に声をかけ、中院の庭先に連れ込んでいるに違いないのだ。(言い方言い方・・)                  

金蔵めっ!許さでおくべきか!!不届き者め成敗いたす!!!           そんな私の心の雄たけびには一切気づかないピュアマサ子は、嬉々として金蔵の観光案内に耳を澄ませ、質問なんかもしちゃったりしているのであった。 

う~む、こうなったら何としても金蔵のしっぽをつかみ、遠山の金さんっぽく、市中引き回しの上打ち首獄門に処してやるのだ!今後中院を訪れる多くの女人に、安寧をもたらそうではないか!と武者震いしかけたその時・・・

なんと金蔵はあっさりと我々を解放した。(え??)

おそらく、もうこれ以上還暦おばペアに付き合うのがいやになったか、スナイパーさとみほの、身も凍るような殺気に怖気づいたのであろう。

そんなこんなで(雑にまとめすぎ)、金蔵の毒牙から逃れ、無事に平和を取り戻した我々は、本来の目的に立ち返り、蔵造りの街並みを徘徊しながら、アツアツのいも恋まんじゅうやら、かつお節を纏った焼きおにぎりやらで空腹を満たし、旅の仕上げにと、観光会館にある日本酒飲み比べ自販機で、ひとり5種類の酒をゴクゴクウマウマしたのであった。

帰路の途中で立ち寄った池袋のディープな中華屋で、クミンの効いた羊肉串を片手にハイボールを空ける頃には、私もマサ子先生も、金蔵とのアバンチュールはすっかり過去のおもひでとなってしまっていた。

ところが後日、マサ子先生から、「金蔵さんが自分の写真おくってほしいって、メールアドレス(金蔵の手書きメモ。まじ引く。)を渡されていたんだけど、どうしよう」と相談してきた。                 私は、金蔵とのことは旅の気まぐれ、ひと春の甘酸っぱい思い出として、忘却の彼方に葬り去ってもよいのでは・・と考えたのだが、ピュアオバマサ子はきっと、金蔵の要望に応えたいんだろうなあと思い、「じゃ、送ってみるべし」と、マサ子の背中を押したのである。              ところが数秒たたないうちに、マサ子先生からラインが届いた。           

「いや無視だね。やっぱり」と。                   そう・・鮮やかなる手のひら返し。                  手のひら返しは、マサ子先生の繰り出す得意技で、その理由は、いつも誰にもわからない。我が友人ながら惚れ惚れする荒技なのである。                         今回も、マサ子先生独自の観点から導き出した、何らかの合理的理由により、金蔵は容赦なくきっぱり切り捨てられたらしい。ああ無常。

そんなこともあり、確かマサ子先生から送られてきた、川越旅の写真があったなあと思い出した私は、iPhoneを立ち上げてみた。          マサ子先生編「川越旅行」のアルバム、そこで見つけたのは・・・・

手を地面から160度で天に伸ばし、足をクロスして左右のつま先をきっかり直角になるようにカメラに向け、これでもかと口角をあげた、一粒300メートルもどきの金蔵の姿であった。(マサ子先生・・私が知らぬ間にこんなものを撮影していたとは・・・ピュアってこわい)

完璧なるポージングと、満面の笑みで、春の柔らかい光に包まれるグリコ金蔵は、もはやこの世の者とは思えない神々しさを放っていた。      金蔵は、カメラにおさまるべきポーズのお手本を、身をもって我々に示してくれたに違いないのだ。(感涙)                        (はっ??と思われた皆様、ぜひ、川越日帰り旅の巻 その3をご一読下さいませ。併せて、勇気のあおりになる方は、冒頭写真の下部にご注目ください。この世ならざるもの(うそ)が写っております。ブルブル)                                 

「ひゃひゃひゃひゃ~」                       腹を抱えて、ひとり大爆笑したそののち、私の心の中には、何やらしみじみとした、得も言われぬ感情があふれてきた。あえて言うならば、微妙なうしろめたさと、捨て犬に見つめられた時のような根拠なき自責の念・・・。 笑い飛ばしたいのに、なんとなく半笑いになる的な・・・。                  

しばし黙考の後、iPhoneを胸に抱いた私は、金蔵、実はいい人だった認定を静かに下したのであった。

金蔵さんのおかげで、春のビフォア還暦旅、とっても素敵な思い出になりました。なにより、小江戸川越、とってもとってもいいところでした。                            皆様もぜひとも、お出かけください。                           私たちも秋に再訪の予定です。                   (優し気にまとめて疑心暗鬼・罵詈雑言の帳消しを狙う。あざとい)                                                 


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