“これなら食べられる”という、きっかけをみつける
抗がん剤の治療の副作用はいくつかありますが
その中でもかなりしんどいと言われるのが
食欲不振ではないでしょうか。
食べたくない
たべられない
・その理由(原因)はなにか
・どのような物なら食べられるのか
それを紐解くのが私の役目です。
食べることが辛い
S子さん 50代女性
主病名 乳がん
既往 糖尿病
今回二度目の抗がん剤治療で入院のS子さん。
一度目も食欲不振で食べられず辛かった様子。
そして、今回はさらに辛い状況に。
私がS子さんのもとを訪れると、素敵な笑顔で
迎えてくれた。
そして、S子さんはすぐに話し出す。
「とにかく食べられないの。
口の中が口内炎で痛くて。。。
固形物がつぶせないの。
胃もね、何か入ってくると痛いの。
吐きたくても、吐けないし。
料理のお出汁も甘みのあるものはダメになっちゃった。
プリンやアイスクリームも食べられない。
あと、炊き上がったごはんの匂いもダメね。
本当に食事の時間が辛いわ。。。
家ではね、ジュースや牛乳を薄めて飲んでるんだけど
ここ(病院)じゃあできないでしょう。。。
とにかくもう、家に帰りたい。。。
。。。。。。。
アセスメント
S子さんの食欲不振の原因は『痛み』や『味覚』の
変化、『香り』でした。
『痛み』を感じるところは
・口の中(口内炎)
・胃(食べ物が入ったとき)
『味覚』の変化は
・甘さを感じる物
砂糖の甘さだけではなく、素材の甘みも受けつけなくなっていました。
嫌な『香り』は
・ごはん
この3点が原因で全く食事がとれなくなってしまったのです。
くわえて、S子さんは薬で血糖のコントロールをしなければなりません。
今の時点で血糖が安定していますが,
食べられていない状況下ではコントロールできていると言えないのです。
さぁ、どうする
食べるときに痛いのは本当に辛いです。
痛みのコントロールのために固形物は避けることにしました。
口の中で押しつぶすのも辛いのでゼリーもNG。
味覚の変化には過度に甘いのは避けます。
汁物も、醤油や塩味のスープで対応します
そして香り
香りが発しにくいように、すべて冷製にします。
そして重湯は避けます。
苦痛のもとの三つを軽減し、口から食べることをなんとか
維持します。
そして、この栄養プランを主治医に提案。OKが出ると
先生は不足分を静脈栄養(点滴)で補えるように設計するのです。
安心こそ美味しさのもと
痛み、味覚、香りに配慮した食事を召し上がったS子さんの
感想は
「体にしみわたった・・・」
痛くて食べられない
やっとの思いで飲み込んだのに
胃が痛い・・・
そんな感覚から
体にしみわたる感覚へ。
一見すると、バランスが良いとは言えない食事内容だとしても
この先に、患者さんにとってのより良い食事バランスになることが
大切なのです。
そのためには
今この瞬間の患者さんに目を向けて未来を見据えながら
栄養を設計すること。
それを病院では栄養療法をチームで行っています。