【短編小説】やがて世は知る完全なるを
白い壁とガラスで構成された無機質な建物の、長い庇の下に置かれたテラス席。腰掛けた一人の女が庭の緑を眺めながら頬杖をついている。
土曜日の午後の美術館はそれなりに混み合っていて、併設カフェもテラス席まで人で埋まっていた。
にぎやかな周囲に溶け込みながら、彼女は夫を待っている。もう長いこと会っていなかった。
『最後に会ったのはいつ?』
端末から声が聞こえてくる。待ち人が来るまでの間、友人が話し相手になってくれているのだ。友人の優しさに感謝しながら、女はイヤホンを引き