続 貴族と、強迫性障害
娘、たえこ
ビリーアイリッシュみたいに髪を染めたいらしいけど、今は黒髪。
長い髪を結んで学校に行く。
しかし、大雑把なので
大抵、サイドの髪が緩く垂れ下がって、
そこはかとなく和風なスタイルに。
無造作と言えば通りはいいけれど。
計算した後れ毛とか、いわゆる触覚でもないのだもの。
まるで、夕鶴のおつう(私のイメージで)、
または疲れたおばさんみたいではないか。
私はとても気になっている。
娘はそれをあまり気にしていない。
今朝は、
よく見ると眉毛がうっすら光っている。
メイク?
しかも金色。
聞いてみると、
昨日、家に来ていた友達と、
絵の具を塗って遊んだようだ。
まだ手入れしていない眉が、妙にペタッと整っていて、
眉マスカラかとも思った。
夕鶴の次は、平安貴族に。
まず、顔洗おうよ!
面白い、雑だよね、みおさんに似て
お父さんが細かいから、似ないで良かったじゃない
ある友人は、笑って言っていた。
もちろん、娘本人には聞こえないところで。
こんな物言いをするけれど、
私達母子に、
何度も手を差し伸べてくれた人だ。
元夫のことも、案じてくれた。
小学校に入り立ての時、
新品のランドセルを見せびらかした娘。
同い年の幼馴染のものは、お姉ちゃんのお下がりだった。
幼馴染は、たえちゃんの見せて、と
おっとり言った。
お母さんが優しい人だからか、
優しい柔らかい雰囲気をまとっている。
蓋を開けると出てきたのは、
私に渡していないだいぶ前のプリント、
少し潰れたお菓子の散らばった欠片、
そして水筒の水が漏れてしわくちゃになった教科書だった。
友達は、それらを一つ一つ収納し直し、
たえちゃんっぽい、と笑った。
父親の影響は、さほど心配しなくて良さそうだった。
それから数年。
娘は、その点、あまり変わらずに成長した。
よきかな、大雑把。
そのうち、本当にメイクをし始めたりもするのかな。
幼なさは、今のうちだけかもしれない。