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お金持ちの患者様と、越し方行く末
昨日は、面会時間より45分も早く病院に着いた。
帰省中の姉が、リモートワークをするため。
車内で会議、終わり次第面会に合流するという。
私は車を明け渡し、
外来待合室で時間を潰した。
家族で感染症にかかって、私は治ったばかり。
念の為、入り口近くの換気の良い場所に座った。
午後の待合室は空いていて、
受付にいる職員の数の方が多く見えた。
私はエッセンシャルワーカーと呼ばれる職業に就いて来た。
患者の立場で来ていると時間の流れは全く違うものだと、
当たり前だが思う。
車内にスマホを忘れたことに気づいた。
読みかけの本、両親に持って来た本も。
私には珍しくないことだけど、
姉の邪魔になるので取りには行けない。
院内の中庭、コンビニを見て歩いて
また待合室へ。
事務の人達、製薬会社の営業と思われる人達とすれ違う。
こういう仕事は、お給料はどのくらいなのだろう。
暇で、品がよくない私は考える。
カウンター近くのモニターには、受付番号が表示される。
その上に、お金持ちの患者様、という説明書きが見えた。
おかねもち…
会計の待ち時間が違ったり、するのだろうか。
空港のラウンジのような別室があったり?
お母さんと小さい子の二人連れが現れた。
子どもさんは2歳くらいだろうか。
娘があのくらいの頃は、
ただ可愛い可愛い存在で、私はもう少し若くて、
娘はまだ人のひどく醜い姿を見ることはなかった。
私と娘の父親との離婚訴訟が起こる、その前。
きっと私の最期には、あの頃の娘や、
幸せな記憶だけを思い出すのじゃないかな。
だといいな。
急にそう思った。
相次いで入院した両親は、10日ぶりに互いに対面することができた。
母は、か細くなった声で
お父さん、ほらこっちに来てと、
椅子を引き寄せようとした。
車椅子に乗せられた母は心配ばかり。
父は病棟内を気ままに歩き回っているそうで。
お揃いの病衣で並んでいる姿には、笑ってしまった。
私には一緒に老いていく伴侶はいない。
一人で死んで行くかもしれないし、
別の人が送ってくれるかもしれないし
娘に見送られるのかもしれない
一人っ子の娘には申し訳ないような気もする。
いずれにせよ、どん底は見尽くした。
その後も
労りあって老いを見せてくれるこの人達と、
尊敬できて大好きな友達に、
大好きな仕事があって、
娘がいてくれて。
そうか、
恵まれた半生だったのじゃないか。
帰りに、受付で面会者のネームプレートを返す。
両親は病棟が別々なので、私は首から2枚もプレートをぶら下げていた。
姉もポケットから紐を引っ張り出す。
この前返すのを忘れてた、とやはり2枚も。
長女様と次女様、などと呼ばれること、
大量のネームプレートも、なんだか滑稽で笑う。
“お待ちの患者様”の案内は、終わりかけていた。
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