"みんなで創る工芸のおんがくワークショップ"ご参加ありがとうございました!
みんなで創る工芸のおんがくワークショップ
八戸市美術館主催、コレクションラボ005「奏でる工芸」関連企画ワークショップへのご参加、ありがとうございました。
ライフワークのひとつとして行っている、即興おんがく創り。
今回は、八戸市美術館に所蔵されている工芸作品に音楽作品を、と学芸員さんからの依頼を受けました。
なかなかの珍テーマでしたが、やってみたら工芸の世界も奥が深くて、いろいろ勉強になったし、その世界と音やおんがく(音楽)の世界を紐付けた手応えを感じています。
ちなみにですが、今回のワークショップで「音楽」ではなく平仮名で「おんがく」としているのはちょっとしたこだわりがあります。
詳しくは、企画段階で執筆した以前の記事でお読みくださいね。
今回の、私の役割について考えた。
開始前、参加者のお一人が「今日の、先生でいらっしゃる?何をやるのですか?」と話しかけてくださりました。
(心の声:、、むむ、「先生」と呼ばれた。そして、何をやるのか、実は私もあまり決めてない。さあ、どう答えようか)
表現の場では「指導」するのではなく、表現を引き出すための「進行」に役割を留めておきたい。
何をやるのかは、参加者の方々の様子を見ながら決めることにしています。
つまりは、「指し」示して「導く」のではなく、その人や集団の表現を「引き出し」「伸ばす」ための、環境と関係を創る立ち位置でいたい、ということです。
さらに言い換えれば、2つの目標をもってワークショップをしています。
①一緒にいる私を含むすべての表現者が対等に影響し合う場を創る
②そこにいるお互いが創作作業を通じて繋がりや連帯感を感じ合う
だから、ワークショップの企画や運営に行った先で「講師の先生」と時折呼ばれるたび、ちょっとした違和感を感じています。
先生って「指導」するじゃないですか、元教員ですけど、実は苦手だったんだなぁと最近になって気づきました。
当たり前のことだけど、ひとや表現の育て方は、「指導」だけじゃない。
その人らしい表現を引き出すために、介入しすぎず環境づくりと関係づくりに徹することを心がけて進行役を努めます。
スタートから、ワクワクの予感。
アイスブレイク①GOOD and NEW
自己紹介を兼ねて、GOOD and NEWからスタート。その時から24時間以内に起こった良いこと(GOOD)や、新しい発見(NEW)を紹介し合う、コミュニケーション活性のためのワークです。
大切なのは、そこにいる全員が、最近感じたポジティブな感情を思い出すこと。
(あとで気づいたんですが、学芸員さんと撮影スタッフさんに聞くの忘れてました。うっかりうっかり。)
新発売のドリンクが美味しかったお姉さん。
お気に入りの音楽を聴いて、しみじみした方。
深夜までゲームをした達成感を感じたお父さん。
(を、「えっ」と二度見するお母さん。)
穴を探すのが楽しかった2歳児。
などなど。
戸惑いながらも、お互いに遠慮や忖度することなく、ポジティブな感情を表現していました。
多様な趣向が見えて、「これは、いろんな音が出てきそうだぞ」と、期待が高まりました。
アイスブレイク②手拍子&moreリレー。
次に、これも自己紹介がわりに、手拍子リレー。
輪の中に手拍子をまわすゲームです。
私が最初の手拍子をうつと、それを受けて右側の人が手拍子をうちます。
次にその右側の人が手拍子をうつ、、、といった具合に、リレーをまわしていくんですが、はじめからすごくいい質問が出ました。
「手拍子は、1回?」むちゃくちゃいい問い。
「あまり決めないでおきましょう、思う通りにやってください。」
とお伝えしたところ、いろんな手拍子が出てきました。
やがて「手拍子じゃなくてもいいです」と伝えると、
カホンのように、椅子を叩き出す子どもが表れた!すごいアイデアじゃない?
(狙い通り、天才性を発揮してくれた!と心の中でガッツポーズ。
意図的に、いい音がする椅子をさりげなく配置していたのでした)
その子に影響されるように、椅子を蹴るお兄さんも。
手拍子と椅子叩きを組み合わせてリズム群を創ったりする人も現れて、もう、はじめの手拍子回しの枠を超えて、リズム遊びのお祭り状態。
椅子だって、床だって、身体の一部だって、叩けば、踏み鳴らせば楽器になる。
子どもの自由な表現を見た大人が、それをきっかけに、表現を広げていく。
これはいける、と思って、輪の中の、誰にリレーしてもいいというルールを追加。
お互いの音を真似してみたり、あえて違うことをしてみたり、と、交錯しながら音を重ねました。
アイスブレイクで大切なのは、「表現や感じ方を、お互いが認めあっている」という安心感。
普通、椅子叩いたら叱られるでしょ、でも、ここではそれが良いこととして認められる。
はじめは「これでいいのかな」と、親の顔を見ながら表現していた子が、のびのびし始めたところで、「よし、温まった!」と区切りをつけて次のフェーズへ進むことにしました。
作品と出会う。出会った感触を、音で表現する。
楽器に触ってみる。いろいろな音色に出会う。
私の持っている楽器は、教育やレクリエーションにも使いやすい(=丈夫で、本格的な楽器に劣らない良い音が鳴る楽器)ものが多いです。
(いま、八戸市美術館の展示室内にも私の楽器をお貸ししています。作品を観ながら、鳴らしてみてくださいね。)
今回、小林源治さんのご協力を得て、世界の民族楽器を始めとする珍しい楽器も、ワークショップに取り入れることができました。
初めて触る楽器に、みなさん興味津々。
壺のもようから、何を感じる?
展示されている作品のもようを、音の形に見立ててみました。
壺に描かれた、不思議な形に、音をつけるとしたらどんな音?と問いかけて、いろいろな音を出してもらいました。
鋭い形に見える、曲がっている、等説明を加えながら、楽器や声で表現が集まりました。
もようの意味を、深く紐解いてみる。
展示室で、もう一つの作品を対話型で感じ方を深めます。
じっくり対面した作品はこちら。
棚田、というくらいですから、これは稲穂を表しているのでは?
どうして緑色なのかな、では橙色は何を表しているのかな。
幾何学模様が美しいね。
この棚田はどういう場所から眺められている図なのかな。
専門の学芸員さんを中心に、作品を観た気づきが共有されていきました。
ここに描かれた棚田の世界から、どんな音が聞こえてくるかを想像しました。
緑色は、春から夏にかけての色。カエルが鳴いたりしていそうだ。
橙色は、秋の実りの色。虫の音が聞こえてきそうだ。
水が流れる音も聞こえてきそう。
幾何学模様の繰り返しは、とてもきれいだなと思う。
そんな気づきをもとに、グループ分け(①春→夏グループ②秋→冬グループ③幾何学模様グループ)をして、作品づくりに取り掛かることにしました。
さあ、おんがく創りだ。
ここからは大忙し。時計見てびっくり!残り時間と戦いながら、進行していきます。
グループワークで、作戦会議
数人ずつのグループで、作戦会議をしました。
虫やカエルの声をあらわす楽器を探したり、どういう順番で、誰が鳴らすのかを話し合う。
ときにはカードをメモ代わりにして、楽譜的な?役割を果たしてもらう。
田んぼにいる虫や動物を描いたり、太陽を描いたり。
着物に描かれた世界を書き留めつつ、音を探しました。
幾何学グループの鳴らす、規則的なリズムの組み合わせ。
波の雰囲気、四角の感じ、曲がった形。青い線の、まっすぐな感じ。
そして、ずーっと田んぼの上を走る、空気や風の流れ。
これらが繰り返されていることを、楽器のリズムや声で表現しました。
春→夏のグループが描くのは、昼のきらめく太陽、夜のカエル。
昼と夜が目まぐるしく繰り返される、熱い夏。
その間、稲穂がぐんぐん育っていく。
秋→冬のグループが描くのは、虫の声、実りから稲刈り、その後の静かな田んぼ。
風が強い日も、静かな日も、刈り取られるまで、揺れ続ける稲穂。
そこで鳴く、無数の鈴虫。
立体的に、着物に描かれた時空を構成していく。
ひとつの作品に、たくさんの時空と、動植物の存在がいることに気づいたわたしたち。
幾何学模様の美しさを土台に、季節の移り変わりを載せるイメージで、約7分の作品を創りました。
鑑賞と、表現はつながっている。
今回、鑑賞した作品を音で表すという試みを通して、改めて、鑑賞と表現はつながっていることを認識しました。
このテーマは、書き始めると長くなっちゃうので、またの機会にじっくり書こうと思います。でも大事なことなので見出しで書いておく。
八戸市美術館に、会いに来てね。
このワークショップを行ったもようは、動画が公開されています。
もしよかったら、ご覧いただけるとうれしいです。
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